TPOを知らない男と付き合うのは難しいという話
一応(?)彼氏という立場にいるジーノ君。
あんまり熱量が高まらないものの、付き合っている内に好きになることもあるだろうと考え、先日デートしてきました。
ところが。
姉さん、またも事件です。
お鮨デート
私が通っている鮨屋の話をしたところ「行ってみたい」と言うので予約することに。
「早めに行きたいから夕方でもいい?」と打診され、ちょっと早い時間帯にしておいた。
さて当日、美味しいお鮨をしっかり味わうために私は朝も昼も抜いた状態で待ち合わせ場所へ。
タイミング良く落ち合い、店へ向かうまでの道すがらのことだった。
「ちゃんとお腹空かせて来た?」
「オレ全然w だってまだ夕方だよ?」
はぁ?
お前が夕方を指定してきたんだろーが。
こいつナメてんのか?
と、ややイラつきながら店へ向かう。
推奨の食べ方をスルーする男
入店して挨拶をすると、いつものように大将とスタッフが笑顔で出迎えてくれる。
このお店は一品ごとの説明が丁寧で、たとえば「まず雲丹の濃厚さを充分に感じて頂いてから、こちらの日本酒を一口召し上がってください」といった具合に。
しかしジーノ君はそうした説明を一切無視した食べ方をする。
「え、説明聞いてた…?」
「いや、食べ方なんて個人の自由でしょw」
あー、うん。
私この人ダメかもしれない。
勿論好きに食べたら良いけど、それはお店のオススメをまず試してから「なんか違うな」と思ったら変えれば良いこと。
なんでプロの言う事を素直に聞けないんだよ貴様ド素人だろ。
途中でタバコを吸いに行く男
当たり前の話だが、一定レベル以上の鮨屋は禁煙だし喫煙ルームも灰皿も用意していない。
鮨と酒を美味しく味わうことに特化している場所だから。
入店から1時間が経った頃。
ジーノ君がソワソワし始めた。
「タバコ吸ってきていい?」
「えっ…。この近所に喫煙所無いよ?」
「いや、その辺で吸ってくる」
「…携帯灰皿持ってるの?」
「無いけど、排水溝が灰皿みたいなもんじゃんw」
私は喫煙者だが、いや喫煙者だからこそ、マナーやルールを絶対遵守している。
堂々と路上喫煙をし、あまつさえ吸い殻を排水溝に捨てるような人間のことを心底軽蔑しているのだ。
死ねばいいのに。
大将のやさしさが身に沁みる
タバコを吸いに彼が店を出た後、大将に謝罪した。
「ごめんなさい。10分ぐらいで戻って来ると思うんですけど…」
「いえいえ、コースは一旦止めておきますね。こちらアテにどうぞ。ホッキ貝の煮付けです」
サービスの小鉢と、さらにスタッフの方から「今日入った日本酒なんですけど良かったら試飲しませんか?」と1杯頂いてしまった。
お店から全力の愛を感じる。
あんなクソみてぇな男を連れて来てしまった申し訳無さと、私へのさり気ない気遣いにちょっと泣きそうになってしまった。
あの男許さない。
金銭の暴力
彼が店に戻って来て以降は鮨を楽しむことだけに集中した。
途中で「あれ?なんか怒ってる?」と聞かれたけれどやんわり微笑んでおく。
最終盤になって彼がドリンクメニューをパラパラと捲っていた。
「何か飲むの?」
「いや、日本酒多いな〜と思って」
「そりゃあお鮨屋さんだから」
「前から思ってたんだけど、鮨と一緒に日本酒ってヤバくね?米摂りすぎじゃんw」
お前もう船降りろ。
鮨と日本酒の組み合わせに対してどんな感想を持とうとお前の自由だが少なくとも鮨屋でする発言ではないし目の前で鮨と日本酒を楽しんでいる私に対してよく言えるなこのボンクラが。
完全にブチギレた私は、彼がトイレに行っている間に支払いを済ませておいた。
ちょうどサインをしているところへ戻って来て、驚いたように言う。
「え、なんで…」
「もう会えない女に金払うのってイライラするでしょ?だから払ってあげたの」
さすがの彼も黙りこくっていた。
「支払いさえこっちが持てば抱ける」と思ったら大間違いだぞ。
「ケンカしちゃったから今日は割り勘で」なんてヌルイ手も使わせねぇよ。
立場を弁えろガキが。
さようなら
帰り際、大将とスタッフの方がわざわざ外まで見送りに来てくれた。
「ありがとうございました。どうぞまたいつでも。お待ちしています」
その言葉の中には「今日のことは気に病まないでくださいね」という意味が込められていると感じた。
ありがとうございます。
また絶対に来ます。
今度はちゃんとした人を連れて来ますから。
帰り道、ふたりとも無言で駅まで歩いた。
「あの、今日はご馳走様でした…」
「じゃあ元気でね、さよなら」
マナーやルールを軽んじる男だということが早めに知れて良かった。
もしもこういうお店に来ていなかったら、発覚がもっと後になっていたかもしれない。
やはり一度は高級店に一緒に行って振る舞いを観察することが大事だな、と勉強になりました。
というわけでまた振り出しに戻った私ですが、もちろん恋を探す旅はまだまだ続きます。
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