「じゃない方」のコスプレ
コスプレには2種類ある。
ひとつはアニメやゲームなどのキャラクターの衣装を身に着け、なりきってポーズを取ったり写真に収めることで、一般的に「コスプレ」といえばこちらを指す。
もうひとつは特定の職業の制服やコスチュームを身に着け、性的な遊戯を楽しむ行為のことで、一般的ではない。
今回は「じゃない方」のコスプレの話なので、間違って来てしまった良い子のみんなはホームへ戻ろう。
コスチューム・プレイは結構ハードルが高い
一般的なコスプレとの混同を避けるため、この記事では「コスチューム・プレイ」と呼称させていただく。
MENJOYという恋愛ハックメディアが「コスチューム・プレイに興味がありますか?」というアンケート調査を2021年2月に行った。
「興味がある」と答えた人の割合は、男性が49%、女性が28%。
まだ「興味がある」という段階での数字なので、実際の経験者はさらに少ないだろう。
ちなみに夏木調べではコスチューム・プレイを経験したことのある男性は10%程度で、女子となると更に低い数字になる。
コスチューム・プレイは「性的ロールプレイ」というジャンルに入るので、性嗜好としては、ややマニアックな部類だ。
当たり前だがお互いの同意が得られなければ成立しないし、毎回違う衣装を用意するとなると出費も馬鹿にならない。
何より衣装を保存しておいたとしても、新しい彼氏に前の彼氏との思い出が詰まったCA服で臨むのは忍びないのだ。
衣装貸し出しサービスを行っているラブホもあるが、クリーニングされたとはいえ「一度他人の分泌液が付着したセーラー服」に袖を通すことに躊躇する女子もいるであろう。
このような理由により、コスチューム・プレイのガチ勢の方には、なかなかお目にかかれない。
邪眼の力をなめるなよ
10代の頃、ミズキくんという年上の彼氏がいた。
彼は普段とてもシャイな人で、最初の頃は年下の私が誘わなければラブホにも行けないような人だった。
そんなミズキくんから、ある日真剣な眼差しでこんな提案をされた。
「体操着を着てほしい」
正直、少し引いた。
すでに高校を卒業していた私は、体操着を持っていなかった。
そもそも体操着って学校指定のお店や百貨店で買う物じゃん。
いきなり大人が訪れて「体操着ください」なんて言って売ってもらえる物では無いんじゃないか…。
当時はネット通販も現在ほど豊富では無かったので、私はとりあえずこんな風に答えた。
「体操着なんて手に入らないでしょw」
そんな会話も忘れていた頃だ。
いつものように待ち合わせをして渋谷駅で落ち合った後、ミズキくんは硬い表情で私の手を引き、道玄坂をぐんぐん登っていく。
そして円山町のラブホの一室に入るなり、彼は背負っていたリュックから茶色い紙袋を取り出した。
パン屋さんとかでもらえるような、取っ手の付いていない紙袋だ。
「俺の力をなめるなよ」
ミズキくんが紙袋を逆さにすると、ベッドの上に体操着の上下が躍り出た。
昭和世代には懐かしい、あの白い半袖とブルマのセットである。
彼が一体どうやって体操着を手に入れたのかは分からない。
だが私はその覚悟を受け取った。
だって、どうしても体操着でしたいんだもんね。
結果的に私は「ノーパンでブルマを履くとチクチクする」という今後の人生に一切役立たない知識を手に入れた。
本気のコスチューム・プレイヤーとの出会い
ミズキくんと別れてからは、割と平穏な性生活をしていたように思う。
そんなある日、ネトゲで知り合ったトモユキくんという人と付き合うことになったのだが、彼は生粋のコスチューム・プレイヤーだった。
「凛ちゃんのためにメイド服買ったよ」
元来私は奉仕精神の強い女だ。
東に「ストッキング破かせて」という男がいれば行って破かせてやり、西に「新しいパンツをプレゼントするから今日履いてたコレ貰ってもいい?」という男がいれば、行ってパンツをくれてやる。
ホクホクの笑顔でレース付きのニーハイソックスまで用意してくれたトモユキくんを、拒否することなど出来ようか。
そして彼はプロフェッショナルだった。
「凛ちゃんはメイドさんだよ」
「うん」
「ドジっ子メイドさんだから失敗が多いんだよ」
「…うん」
「俺はご主人様だから、言うことに逆らっちゃダメだよ」
「…はい」
「でも最初はちょっと抵抗してね」
「…がんばる」
トモユキくんは多分そんじょそこらのAV監督よりも演技に厳しかった。
いやAV出たこと無いから分かんないけど。
彼とのコスチューム・プレイ生活は、中毒性があった。
しかしだからこそ、このままではダメになるという理性によって、この関係は終焉を迎える。
コスチューム・プレイというレガシー
昨今のコスチューム・プレイ事情を調べたところ、かなり安価で衣装が手に入る。
数回使った後はサヨナラをしても心が痛まない値段だ。
コスチューム・プレイに興味がありながらも、一歩踏み出せない男子・女子に告げたい。
一回やってみたらいい。
演技力まで求めるようになると私のように底なし沼にハマっていくが、ちょっとしたアクセントとしては最高のアイテムだ。
来月はクリスマスですね。
ミニスカサンタの彼女がプレゼントを届けに現れたら、もう最高じゃないですか。
あ、だからといってトナカイのコスプレをして待ち構えたら、ドン引きされますからご注意を。
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