暗夜行路日記
本当はアダルト記事を書く予定だったんですけど、ちょっとそういう気分になれなかったので日記を書きます。
暗いんで「今は明るい話読みたいんだけどな~!」って方はスルーしてください。
2月2日
久しぶりにビデオ通話ができる日。
朝から気合い入れてメイクしたけど、髪を巻くのはやりすぎかなと思ったからやめといた。
最近楽器を始めたらしく、生演奏で聴かせてくれるという。
オリジナル曲だったらどうしよう、一応泣くフリとかしといたほうが良いのかな、などと考えていたけど知ってる曲だったので安心。
演奏は「よくこれを人前で演ろうと思ったな」というレベルだけど、心意気だけは称えたい。
なんか楽器弾いてる姿ってカッコ良く見えるから満足。
2月4日
子どもたちが喧嘩してその内のひとりが割りと大きな怪我をしたらしい。
「普通になりたい」とLINEが来た。
彼にとって普通になるのはきっと難しいことなのだろう。
それは環境というよりも、精神面の問題が大きいように感じる。
あなたに必要なのは嫌われる勇気だね、と返信しておいた。
2月7日
「マッチングアプリ始めてみた」とLINEが来る。
こいつホンマ…。
「なんかもっと良いマッチングアプリない?」と聞いてくる神経が分からない。
何が悲しくて恋人が他の女と会うためのマッチングアプリ探さないといけないんだよ。
東京湾に沈めるぞ。
理由を訊くと「凛ちゃんが浮気しそうだから俺もしようと思って」。
小学生か。
何故男性会員が有料なのか、何故レディースデーがあるのか、といった経済の仕組みを講義して終了。
2月8日
マッチングアプリは諦めたらしい。
くだらない下ネタを延々と交わし、好きだの会いたいだのでも会えないもんね、みたいな不毛な会話をして寝る。
2月12日
夕方。
突然「もうこの恋終わりにしようか」とLINEが来た。
理由を訊いたら「ちゃんと生きたい」と。
そりゃ私なんかと付き合ってたら、ちゃんとは生きられないよね。
納得して了承した。
休日だったので、夫と一緒にバラエティ番組を見て過ごす。
夫が笑うタイミングに合わせて私も「アハハ」と笑った。
でも頭の中では全く別のことを考えていた。
みるみる内に目に涙が溜まって溢れそうになったので、さり気なくトイレに行く。
私たち夫婦は契約結婚なので、外での恋愛は自由だ。
しかし、それを「家の中に持ち込まない」という鉄の掟がある。
一緒にいる相手を最優先に考えなければ、家庭という枠組みが崩れるからだ。
家は、どんな時も安心して帰れる場所でなければならない。
お互いにそう考えているので、絶対的に守るルールである。
トイレでひとり声を殺して泣いている内に、ふつふつと別の感情が沸いてきた。
LINEでお別れって、Z世代かよ。
昭和生まれのくせに生意気だ。
やっぱり電話で話すべき。
深夜に電話。
家族間のトラブルで錯乱していた、本当は別れたくない、と謝られる。
メンヘラか。
次に別れ話をされたら連絡手段すべてをブロックするから、もう二度と会えないという覚悟ができている時に話すように、と釘を差して寝る。
2月13日
飲み過ぎ&寝不足で頭痛。
能天気な声で電話がかかってきて殺意を覚える。
頭が痛いから、と言って電話を切った。
結局すべての問題は「会えないから」に帰結する。
「会えない時間が愛を育てる」って言ったやつ、先生怒らないから正直に出て来なさい。
2月14日
付き合っている以上、贈らないのもな…と思ったのでバレンタインギフトをオンラインチケットで送付。
しかし反応が鈍い。
これはやはり、本意では別れたいのかなと思って気持ちがスンッとなった。
が、「あれ?今日もしかしてバレンタイン!?」と、今更イベントに気付いたようだ。
そこから怒涛の感謝&愛のシュプレヒコールが始まったが、一度スンッとなった気持ちは中々立て直せない。
そうして私は今ガトーショコラを焼いている。
お菓子作りは無心になれるのが良い。
そしてお菓子は料理と違って道筋が明らかだ。
料理は目分量が利くが、製菓は分量が命である。
しっかりと材料を計り、水分や汚れのない器材を揃え、レシピに沿って決められた通りに作らなければならない。
恋とは違い、きちんとレシピ通りに作れば必ず成功するのだ。
だから私は心を落ち着けたい時にお菓子を作る。
今日も夫のリクエストだったガトーショコラが綺麗に焼けた。
これを食べる資格があるのは夫だけだ。
何故なら夫は責務を果たしているから。
彼が私のガトーショコラを食べる日がいつか来るのだろうか。
それは分からない。
何しろ私たちは暗夜行路の真っ只中であるから。
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