見出し画像

くだらない愛が私にオムライスを作らせる

先日、夫が「普通のカレーが食べたい」と言い出した。
これは難題だ。

昭和の食卓的な、給食的な、あのカレー。
玉ねぎ・人参・じゃがいもがゴロゴロと入っている、あのカレー。

完全に個人の嗜好として受け止めて欲しいが、私はあのカレーが好きではない。

まず人参が苦手だし、玉ねぎも食感がある大きさだと食べられないのだ。
じゃがいもの存在意義もよく分からない。
煮込んでルーに溶け出ていくと味がボヤけるし、別添えにするか、副菜としてポテトサラダを出せば良いじゃないの。

こういうクソ面倒な女を嫁に貰ってしまった夫は、だからいつも「キーマカレー」とか「バターチキンカレー」を家で食すことになる。

「私では美味しく作る自信が無いから、普通のカレーは外で食べて」
「う、うん…」

夫婦の会話

しかし私は葛藤した。
仮にも給金を貰っている身なのだから夫のリクエストには可能な限り応えたい。
さりとて「普通のカレー」を作ったところで私は食べないし、じゃがいもが入っているので冷凍保存は不可能。

そこで妥協案として「欧風カレー」を作ることにした。

材料は牛肉・玉ねぎ・マッシュルーム・ニンニクのみ。
これに基本のカレールーを加えて煮込んだ後、味見をしてスパイス類を加えていく。

その日の夕方、私はスーパーに買い出しへ行った。
本当は肩かスネのブロック肉が欲しかったのだけれど、精肉担当の広瀬さん(いつもお世話になってます)から「今日はご用意が無くて…」と言われてしまう。
代わりに北海道産の薄切り肉で手を打つ。

帰ってきてから下拵えに取り掛かると、夫からLINEが来た。

「急で申し訳無いんだけど飲んできます」

オーケー。
まだ具材を切っただけなので大丈夫。

カレーは寝かせた方が美味しいとも言うが、夏場はウェルシュ菌が心配だ。
カレー鍋は冷蔵庫に入らないし、作るのは翌日に回そう。

さて、急にひとりご飯の機会を得た。
どこか飲みに行っても良いけれど、折角エプロンを着けてキッチンに立っているのだから何か作って食べよう。

そういえば今日はまだ何も食べていなかったことに気付く。
ここはワンパク飯を食そう。
何が食べたいか自分に聞いてみると、オムライスが浮かんだ。

自分の為だけに作るワンパクオムライス。
なんと良い響きだろう。

玉ねぎをみじん切りにしてバターで炒め、解凍して1cm角に切った鶏ささ身を加えて塩コショウする。
肉に火が通ったらケチャップを入れ、水分を飛ばすように炒めてコンソメを投入。
冷凍ご飯を解凍して炒め合わせればチキンライスが完成するのでお皿に盛り付ける。

別のフライパンでバターを熱し、牛乳と塩コショウを加えた卵液を流し入れる。
半熟になったらチキンライスの上へ。

同じフライパンにケチャップ・ウスターソース・赤ワイン・醤油・砂糖を入れて煮立たせたら簡易デミグラスソースの完成。

一口食べる。
はい優勝。
ご飯が多めだったので食べ切れるかどうか心配していたのに、美味しすぎてあっという間に完食してしまった。

食べ終わってから気付いた事がある。
私は多分、ひとりになりたいのだ。
離婚したいとかそういう話ではなく。

このところ自分の時間をあまり取れていない。
理由は色々あるのだが、今年に入ってすでに2回ひとり旅をキャンセルする羽目になった。

悪意が無いので責めるわけにもいかず、そうした小さなストレスが降り積もっている。
自分のために使える時間が減る毎に、心がゆっくり摩耗していく。

今日のオムライスは、私が私だけの為に作った。
こういう自愛がもっと必要なのだろう。

ひとりでふらりと旅をしたい。
絵画や美術品に浸りたい。
美味しいお酒と食事を楽しんで、よく知らない男と寝るのも良い。

何だかバタバタして落ち着かないまま、もう秋になろうとしている。
とにかくやらなければいけないこと・やったほうが良いことに取り組んでいくしかない。

自分の気持ちを整理するために書いていたら、取り留めのないnoteになってしまった。
たまにはそんな日もあります。

あ、カレーは翌日作りました。

夫から「1,800円取れる」と言われた欧風カレー


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?