【高校野球】甲子園という聖地を捨てる勇気
第105回全国高等学校野球選手権大会、通称・夏の甲子園が今年も始まった。
第1試合からいきなり延長戦、第3試合はナイターでの打撃戦になるなど白熱した試合が続き、盛り上がりを見せている。
だが今日の試合中、選手が足をつる場面に何度も遭遇した。
その度に考えずにはいられない。
真夏の炎天下で野球をすることの是非について。
令和の日本の夏は殺人的な暑さ
まずこちらをご覧頂きたい。
今更こんなグラフを出さなくてもみなさんご存知だとは思うが、日本だけでなく世界の平均気温は年々上昇している。
特にここ数年は熱中症患者が増えており、様々な注意喚起を目にする機会も増えた。
NHKも甲子園の中継をしながら、左上に小さく「屋外での運動は避けてください」とテロップを入れる、という渾身のギャグをかましていた。
どうかしてるぜ。
さてこの暑さについて高野連(高校野球連盟)が何もしていないかというと、そんなことはない。
今年は高野連がとっておきの策を我々に披露してくれた。
甲子園での熱中症対策
高野連のおじいちゃん頭の良い人たちが一生懸命考えた熱中症対策をご紹介する。
1.クーリングタイム
5回終了時に10分間の休憩を取るというもの。
元々甲子園では5回終了時にグラウンド整備があるのだが、その間に選手はベンチ裏の休憩スペースに入り、球場が用意したアイスベストやネッククーラーで体を冷やす。
しかし私は知っている。
クーリングタイム終了直後にマウンドに上がったピッチャーが、投球練習中に足をつって結局交代したことを。
もちろんやらないよりはやったほうが良いが、もはや焼け石に水である。
2.ベンチ入り20人
甲子園にベンチ入り出来る人数は去年まで18人。
これを2人増やして20人とした。
足がつったり体調不良になった選手を交代できるよう、控え人数を増やしたのだ。
甲子園のベンチに入れる人数が増えたのだから、単純に球児は嬉しかっただろう。
が、あくまでも事後対策であり、予防とは言えない。
熱中症で死ぬ高校生もいる
日本気象協会がプロジェクト推進する「熱中症ゼロへ」というサイトがある。
その中で熱中症予防運動指針が示されているのだ。
表を見れば一目瞭然だが、炎天下の甲子園は子供を運動させるような場所ではない。
もっと言えば、本来は真夏に屋外で運動させること自体が死と隣り合わせなのだ。
熱中症で死ぬのは高齢者だけではない。
高校生だって死ぬのだ。
たったひとつの解決方法
文句ばっかり言って対案を出さないと、どっかの野党みたいになるので提言する。
夏の全国高校野球大会はドーム球場でやるべき。
冷房が効いていて直射日光も防げるドーム球場なら、選手だけでなく応援団や観客の健康も守られる。
大阪には「京セラドーム大阪」というドーム球場がある。
関西に拘らないなら名古屋の「バンテリンドーム」でも良いし「東京ドーム」もアリだろう。
ただし「ベルーナドーム」、お前はダメだ。
貴様は偽ドームだから。
さてこうした「甲子園移転議論」に関しては十数年前から議論になっているが、一向に前へ進まない。
強硬な反対派が存在するからだ。
そこで主な否定派意見を論破してみる。
甲子園信者を論破してみた
「夏の全国高校野球大会は甲子園じゃないとダメ!」という老害ジジイ方々の意見を検証していく。
1.暑い中で頑張っている球児の汗が青春だから!
熱中症の危険性があります。
死亡に至らずとも後遺症によって脳の中枢神経障害を起こす可能性も。
その責任をクーラーの効いた部屋で観戦している貴方が取れますか?
2.甲子園でやるのが伝統の継承なんだよ!
全国高等学校野球選手権大会の第1回は、1915年(大正4年)に大阪府の豊中球場で行われました。
兵庫県の甲子園で行われるようになったのは1924年(大正13年)の第10回大会からです。
すでに一度伝統を捨てているじゃありませんか。
2020年代に新しい伝統を作っても良いと思うのですが。
3.球児が「甲子園が目標」と言っている!
継続的な慣習で甲子園が「夏の全国大会」となっているだけです。
たとえば京セラドームが開催地となったら、球児は「京セラを目指す!」となります。
「球児の夢」を免罪符にしないで頂きたい。
高校野球はあくまでも部活の一環です。
教育者として「熱中症の危険性」を教え、より良い環境でスポーツをさせてあげるのが教育の正しい在り方ではないでしょうか。
高校野球は聖域
自分なりに色々書いてきたが、真夏の甲子園はこれからも何だかんだで開催されるだろう。
これが変わる時があるとすれば、ただひとつ。
甲子園で球児が熱中症で死亡すること。
SNSで世論が一斉蜂起し、有名人が高野連をバッシングし、謝罪会見に追い込まれるのだろう。
そうなって初めて「甲子園移転議論」が本格化するのだ。
そうなるまで、私達一般人に出来ることはない。
ひとりの生贄を待ち続けるしか無いのだ。
それはあなたのお子さんかもしれないし、知り合いの子供かもしれないし、全く知らない赤の他人かもしれない。
誰かが死ななければ高野連は変わらない、ということを言いたいのだ。
私は高校野球ファンであり、全選手の無事を祈っている。
だからこそ、最悪な結果で移転議論が起きてほしくないのだ。
どうか、今年の甲子園が無事に完走できますように。
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