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【エッセイ】 気分転換

話が全くと言っていいほど、まとまらない。
どうしたものか、と不思議に思って、逆立ちしてみたが何も変わらなかった。
普通の6畳ワンルームで逆立ちをする私が鏡に映った時に気づいたことは腹が出てること。変化といえば、それくらい。他には..
二の腕が前より大きくなっただとか、髪が伸びてきただとか。
あら、意外とあるじゃない変化が。
悪い方ばかりに目が入ってしまうけれども。それでも..
「中身」は相変わらず、中学生の時と変わらない。だからこそ、話がまとまらないのだが。
逆立ちしても変わらなかったので、ペンを持って紙に向き直す。
書きたいことがあるはずなのに、ない。カチカチとシャー芯を出しては戻す作業を紙の上で繰り返す。または頭に浮かんだ単語だけを書き出していく。
「雨が降りそうな曇り空 子供が外で遊ぶ声 休日の過ごし方 買った香りで変えるテンション 気持ち 心 モチベーション」
つらつらと徒然なるままに書いたとて、何も変わらなかった。
在庫切れですの札がずっと、脳内で点滅する。もう少し、引き上げを早くしておけば無意識の海に沈まずに済んだかもしれないのに。
あの時、紙とペンさえ持っていればという後悔が、押し寄せては引く。
「あー出てこなーい」
思わず口にした独り言が、誰もいない部屋に響いて消えた。
車が大きな音を立てて通り過ぎたかと思えば、救急車がサイレンを鳴らして去っていく。音が小さく消えていく。
無音になった瞬間、部屋の窓を開けた。
初夏らしい風が勢いよく吹いたかと思えば、机の上の紙を巻き上げてはらはらと落とす。きっかけはいつも自分次第なので、行き詰まってしまった私は外へ出ることにした。
何かと、気分転換も悪くないかもしれない。

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