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本の紹介39 『貞観政要の教え』……リーダーは決して「偉い」存在ではない

大河ドラマで『鎌倉殿の13人』が放送されていたとき、
この人物と『貞観政要』の組み合わせは、
何度か紹介しました。

北条家・3代目執権の北条泰時、
日本で初めて武士の存在を法制化し、
その役割を定義した人物。

その法令こそ、
『御成敗式目』と呼ばれるもので、
叔母の北条政子の勧めもあり、
彼がバイブルにしていた中国の古典に
影響を受けたもの。
その古典こそ私が現代語訳した
『貞観政要』だったんですね。

(夏川賀央の公式ブログ:https://www.kenjabook.com/

8月27日は、
その『御成敗式目』が制定された日。
今から800年近く前、
1232年のことになります。

北条泰時といえば、
『鎌倉殿の13人』の主人公で、
小栗旬さんが演じていた2代目執権
北条義時の実子。
抗争や陰謀に明け暮れていた父親を見ながら、
世の中を安定させる秩序を
法によって実現しようとしたわけです。

そんな考えのもとに出来上がった
『御成敗式目』ですが、
この始まり、第1条は、
どういうものだったのでしょう?

意外なことに、
「地元の神様」へのリスペクトでした。

「神様を敬いなさい。そして霊験を新たにしなさい」
「神社を修理して、お祭りを盛んにしなさい」
「そうすることによって民衆は幸せになる」
「国を支配する武士たちは、
このことを理解しなければならない」

そんな内容ですね。

つまり、ときに武力で民衆を抑えつけた武士よりも、
地元の神様のほうが、
ずっと偉い存在なんだと確認させた。
そして
「お前たちは、民衆を幸せにする存在なんだ」と、
武士を社会の奉仕者に定義づけしたわけです。

むろん、これがいつも忠実に
実行されたわけではないでしょうが、
「武士=民衆の幸福のために仕事をする存在」
なのだと、ハッキリ言っています。

ひるがえって『貞観政要』を読めば、
皇帝・太宗は、自分の役割を
「民衆の幸福を守る存在なんだ」と
明確に認識していました。

だから私欲を捨て、決して驕り高ぶることなく、
常に民の声を聞こうとした。
名も知らぬ民から
皇帝が教えをこうむるエピソードもあれば、
民衆に見限られ、破滅した先代の皇帝たちの話も
本の中にはたくさん出てきます。
世界のリーダーがお手本にした本は、
そんな戒めの本でもあったんですね。

こうしたリーダーのありようは、
何百年目も経った現代でも、
変わることはないのでしょう。
総裁選や党首選の話題が尽きない今ですが、
日本を背負うリーダーも
決して忘れないでほしいですね。

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