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本の紹介26 『戦争論』から「戦争の終わらせ方」を考えてみる

2月24日は、ロシアのウクライナ侵攻から
ちょうど2年……ということで、
ニュースでも大きく現在の状況が
取り上げられていました。

日本でも残念ながら関心が薄れている、この問題。
うんざりする方もいれば、
「どうでもいい」と考えている方も
大勢いるでしょうね。

2年前に戦争が始まり、
しばらくしてからエージェントさんと出版社さんから
依頼されたのが、
この『戦争論』の現代語訳でした。

今の平和ボケしている日本人が
「戦争」というものを理解する一助にしたい。
それから頑張って長い本を読み込み、
私は180ページで読める短縮版をつくったわけです。

残念ながら「皆さんがこぞって読んだ」とはいえませんが、
それでも戦争について深く考えた人の心には、
突き刺さったのではないか……?

そう、この本には戦争について理解する方法も、
その終わらせ方も、ちゃんと書いてある。
これはとても重要な理論です。

「戦争は決して激しい情熱に突き動かされて
行なわれるべきものでなく、
政治的な目的によって冷静に決断されるべきものだ。
戦争によって失われる犠牲の量も、
政治的な価値を秤にかけたうえで慎重に判断されねばならない」

「この政治的に価値判断されるべき犠牲には、
『失われるもの』だけでなく、
『失われる時間』も含まれる。戦力の消耗が
『失われるもの」や『失われる時間』に釣り合わなければ、
いかに戦闘において成果を出していたとしても、
現実の戦争では講和を考える必要が出てくる」

この「失われたもの」や「失う可能性もあるもの」は、
私たちが戦争を考えるときに
とても重要になります。

たとえばウクライナ側に立ってみれば、
「すでに失ったもの」には、たくさんの命があり、
奪われている国土があり、ロシアに連れていかれた人、
国外に避難せざるを得なくなっている人、
戦争で奪われた多くの資産があるわけです。

「それらを全部あきらめてくださいね」と言われ、
当然、納得できるわけがない。
だから仮に国が降伏したとしても、
大勢が交戦する意志を示している以上、
内戦が続く可能性もある。
だから大統領も各国に支援を求めながら、
戦争を継続せざるを得ない状況になるわけです。

一方でロシアは、今のところ経済が安定しています。
これが「負けた」となったら、
おそらく多額の賠償金が出てくるから、
それはヤバい。
大統領が自分の人気を維持するためには、
戦争継続が得策……となるわけです。
まあ、実質、兵士以外はほとんど
ロシアに犠牲は出てないわけですし。

こんなものを放っておけば、
やはり戦争が終わるわけがない。
周りの国々が失ったのは「大量の時間」であり、
それが世界の経済を圧迫している。
今のように無関心が蔓延し、
ウクライナをどんどん圧迫していることは、
「やむなし」ということになるわけです。

ただ、私たちがこれから
「失う可能性のあるもの」を考えたら、
傍観はできないと思います。

たとえばロシアが征服した地域を全部手に入れて
「それでOK」で、
戦争終結が認められたらどうなるか?

「なるほど、あのくらいの国土であれば、
世界的に奪って構わないわけね」なんてなれば、
どれほど世界で、これから侵略が起こるか?

国土をやばい超大国に囲まれている日本だって、
これ他人事じゃないですよね。
「アメリカが守ってくれる」という建前があったのは
ウクライナも同じですし、
ましてアメリカはこれから
「自国ファースト」の政権が出てくる可能性も大きいわけです。

そんなふうに私たちは、
もっと「いろんな未来」を想定して戦争を考える必要がある。
ただ、「終わらせる」ということは
決して不可能ではないと思います。

一人ひとりが勉強し、
世界の問題と向き合っていくことは、
絶対に無駄ではないと信じたいですね。

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