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フランス教育における食育

こんにちは!池田です。
今回は、フランス教育における「食育」について、日本語の文献を読んでまとめてみました。

少し古い文献ですが、基本的なことが学べたのでシェアしたいです:)

フランスの食育の基本

フランスは、食文化についての国民の意識を高めるための「食育」を毎年全国規模で行っています。2001年に打ち出された「栄養健康国家計画」(Le Programme Nationale Nutrition Sante) は食育の方針を定めており、その軸は「栄養教育」と「味覚教育」です。

①栄養教育
基本的な食行動を自分で行えるようになることに目的とした教育
②味覚教育
食べるという行為が社会的行為であるという側面を学ぶことを目的とした教育

食育な具体的な内容は各学校ごとに異なりますが、基本的にはJaques Puisaisさんという方の考案したピュイゼ・メソッドと呼ばれる方法が取られているそうです。

Jaques Puisais (ジャック・ピュイゼ)氏は、フランスでは有名なワインの研究者です。関連して、味覚や哲学も専門としていたそうです。

フランスの食育の授業は全12回で構成され,1授業には1時間30分とることが推奨されています。第 6 回目の授業までは,五感について詳細に分析し,自分自身を知ることを教えます。これは、感じ取ったことを言葉で表現できるようになると、食品に関する発見がさらに楽しくなると考えられているためです。

授業の参加者は生徒と教師およびレストランのシェフなど地元の料理の専門家で構成されます。全授業終了後,これまでに理解したことをまとめ、また新しい語彙を列挙させることが薦められているそうです。

授業題目
1. 食物を口に入れた際の五感
2. 味覚
3. 視覚
4. 嗅覚
5. 触覚/聴覚
6. 風味(aroma:口の中で感じる味わい)
7. 食事の準備
8. 自分の好み
9. 地方特産物
10. 食品の保存
11. 食品に関する情報
12. お祝い事の食事

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La semaine du goût

フランスには、食育に特化した1週間があります。それが「味覚週間」です。味覚週間は毎年10月の第3週目の1週間に開催されます。

1990年にジャーナリストで料理評論家のジャン=リュック・プティルノー氏と砂糖業者団体が中心となり、350人のシェフがパリの小学生に「味覚の日」としてレッスンを行ったのが始まりだそうです、

1992年に、味覚の日は現在の味覚週間となります。フランス国立食文化評議会も活動に加わり、3000人のシェフが小学校でレッスンをするようになりました。これが、今日の味覚週間の土台となっています。

今日、「味覚週間」の目的として,以下の5項目が挙げられています。
1. 消費者,特に若者への食の教育と実習
2. 消費者への味や風味の提供
3. 質の高い食品の生産
4. 食品の起源,品質などの情報の提供
5. バランスのとれた食事の促進

また、「味覚週間」の期間の取り組みは4つに分類されます。
味覚のレッスン⇒職人たち(料理人、肉屋、チーズ製造者パン屋、農家など)が実際に小学校に出向き、児童を対象に授業を行います。あるいは、レストランや農場に子ども達を招いて授業を行う場合もあります。
味覚週間の食卓⇒料理専門家などの推薦によって選ばれたレストランが、普段飲食することができないような料理を割引価格で提供し、味の再発見をしてもらいます。対象は家族連れ。
味覚のアトリエ⇒臨時の市、一般公開の日、商業イベント、祭り、味覚ラリー、シンポジウム、討論会、見学などのイベントが実施されます。対象は子どもを含む一般市民。
味覚の才人⇒有名シェフで構成される審査委員会によって、カテゴリーごとに6人の「味覚の才人」が国中の料理人の中から選ばれます。

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食育政策のコンセプト

食育のコンセプトは以下のようになっているそうです。

①栄養学的観点から正しい栄養摂取行動を身につける。
→健康面への配慮、生活スタイルの変化による肥満の増加へ対応するための教育。

②食に接する機会を多様化させ、味覚を育てる。
→自分たちの持つ五感を総動員させるとともに、食は地理、歴史、科学などにまで渡る広いテーマを持っていることを理解させ、好奇心を持ちながら食と向き合う姿勢を学ばせる。最終的には自発的に味をコントロールし料理をする行動にまで駆り立てることが目的。

★①と②が同時に行われることで、食が単なる栄養のために数値的に図られることを避け、食文化の発展につなげることが重要だそうです。

食に関する教育を媒介とした社会的な統合を実現させる。
→フランスは多民族国家で、家庭によって言語習得のレベルや食の文化や環境が異なるが、食育を通じて食べるという行為がどの民族にも共通した行為であること、しかしながら食に関する知覚を表現する言葉は常に同一ではないことを学びます。個々の表現の差異から、味覚には真偽や良し悪しはなく、個人で違うことを理解させる。


食育と言語教育

フランスの食育は言語教育と並行した教育となっているのだそうです。その目的は大きく3つあります。

①味覚を言語化することによって味覚が鋭敏になり、その鋭敏となった味覚が言語表現をより豊かにするという、感覚と言語との相互作用効果
②言語によって、互いに他者との相違を理解し、自分の感覚を相手に正しく伝える相互的コミュニケーション能力の向上
③見た目では味覚が想像のしにくい未知の食べ物について、言語表現を介した想像力によって、否定的・拒否的な先入観を取り払い、それを受け入れる経験を通じて、未知なるものへと心を開く

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今回は完璧に私自身のためのまとめノートです…

興味のある方に届いたらうれしいです!

池田

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引用
戸川律子 
フランスの小学校教育における食育 ─味覚教育と栄養教育の取り組み─ 
中村 みなみ 他
フランスの味覚教育の現状と課題―文献調査からー

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