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未経験でグラフィックデザイナーさんは厳しいよという話

人生いつも鈍行列車

私はいつも遠回り。
東京はすぐそこなのに、電車で30分なのに、何故か広島くらいまで新幹線で行き、観光しながら上京するみたいなことをしている。そして実家は千葉。周りの人たちからは「何してんの?」と思われていたようだ。
「東京なんて京葉線乗ったらすぐじゃん!」「てゆーかなんっで新幹線乗っちゃうかな~?」って。
みんな言わないでいてくれたなんて・・・相当な優しさで溢れている。
実際問題は「とりあえず広島行ってくるわ!!!」っていう私からの圧が強くて何も言えねぇ・・・となっていたらしい。
迫力は私の短所である。友人たちよ、すまん。
そして案の定、遠くへ行っては暫くして一旦実家に戻る。
次こそ東京に上京だね、おめでとう・・と言いかけたその時、え、ええええ?せ、仙台だと・・・!?となる始末。
周りを混乱させる日本代表である。

そしてあれよあれよとアラフォーだよバカチンが。
そこでようやく自分で気づく。今まで何度情緒不安定な旅をすりゃ気が済むんだ、と。
目の前の金より、その先にある充実だろうがと。

思い立ったら吉日である。
一念発起して私はあっさりフリーランスとなった。
色々遠回りしたが、今度こそは大丈夫だ!と。
しかし悪魔の手は私の前を塞いだ。
それは、1人という孤独。そして毎月入っていた給与というものがなくなる恐怖。占い師の「寝る間も惜しんで働け」という根性論の占い結果…恐ろしいぞフリーランス!
そして私は同じ手に引っかかる。
どうしても不幸を選択してしまいがちになるのだ。
せっかく時間が空いたのに、金欲しさに貴重な時間を経験職で埋めてしまった。

「いやいや、なんで会社員辞めたのさ?」
屍寸前の私のおぼろげな目に映ったのは、友人の困惑した瞳であった。
「あんたやりたいことがあったから会社辞めたんじゃなかったっけ?」
そう、友人は何の捻りもない言葉を放ったのだ。
その捻りもおかしみもないクスリとも笑えない言葉が、私の中にあった霧を完全に吹き飛ばした。
「そう・・でした・・・」なんだか恥ずかしくなり、モジモジしてしまった。
フリーランスになるぞぅ!と友人に報告したときのことを思い出すと本当に恥ずかしい。あんなに鼻息荒く話していたのになんだこの体たらくは。
「あたしゃあんたはてっきりデザインやると思っていたよ」
私の横にはまる子がいた。そうだ、子供の頃から何かとまる子には素朴な疑問を投げかけられて助けられていたんだ。
さくらももこ先生どうもありがとうございます。アラフォーになっても私は相変わらずです。

グラフィックデザイナーにまずなるというところが難関

グラフィックデザイナーに邁進してまいります!と宣言したところで、未経験は事実。
まずは経験はつけねばと未経験OKなバイトなどに応募してみるも、ポートフォリオがないとダメである。
今考えたら当たり前なのだが、当時は「だったら未経験って書くんじゃねーよ」と求人票に向かってメンチをきっていた。
そもそもデザイナー募集に未経験はいらない。冷静に考えてもそうだ。
一からillustratorやPhotoshopを仕込むなんて面倒なことをする企業はまずない。あるとすれば慈善事業団体か、窓際でアイス食って寝てるクソ暇な人材がいるボランティア団体くらいだ。
まず会社に世話になるのはむずい!と考えた私は、だったらコンペ出しまくるぜ!とひたすら募集されているコンペ案件に手をつけた。
ロゴデザインやチラシデザインを教えてくれる本は腐るほど出版されているし、YouTubeのチュートリアルもめちゃくちゃある。
しかも何か良さげのデザインできたんですけど!と華麗にデザイナーデビューを飾る・・予定だった。
しかし何の奇跡か因果か知らんが、何の気なしにグラフィックデザイナーのセミナーに参加したときだった。
なんちゃってデザイナーになるな」という太字パワーワードに華麗に一本背負いされ、圧巻の敗北を期す。完敗だった。

「闇雲」これがデザイナーにとって一番NGなことだ。
闇雲にデザインして、何かそれっぽいものが出来たぞ!はい、提案!としたところで、クライアントからの「これはなんでこうなの?」に果たして答えられるのか。答えはNOだ。
闇雲にやったところで説明できないだろう。
デザインは根拠がないとだめだった。

と、いうわけでクルリと踵を簡単に返し、「たのもーー!!!」と腹から声を出して塾の扉を叩いた。素人はプロの手を借りるのが一番の近道である。金はかかるが、自己投資をケチっては後の大金は遠ざかる一方だ!と自分に念仏のように言い聞かせる。滝汗をかきながら一心不乱に言い聞かせる。

素人は闇雲に動くな!黙って学べ!

誰かに言っているわけではない。己に言い聞かせた言葉だ。
もし私のプロフィールだけ見た人が読んでくれていたら、お前から得ることなんざ1つもねぇ!と唾を吐かれるかもしれない。
それでも仕方ない。感覚だけでやれる裏技などグラフィックデザイナーには皆無。素人ならプロの力を借りろ!これが最善なのだ。
素人が自分を信じたって、評価してくれるのは素人だけだ。
そこからトントン拍子で話が進んでVogueまで辿り着いたとしよう。絶対ないけど辿り着いたとしよう。「アナタ、プロ失格ね」とVogueの編集長に言われ「だって、素人ですから!」なんて口が裂けても言えないだろう。
しかし「知らない」「出来ない」が多いと、Vogueだろうが、町の商店街のチラシだろうが、デザインの仕事なんて来やしない。
まだ「素人です!」と認識しながらプロまでの道を一歩一歩駆け上がった方が生涯デザイナーを名乗れる。
(餅の論で、素人ですとクライアントには決して言ってはならぬ)
しかもその道は、コミットできた分だけ駆け上がれるスピードは変わっていく。2週間でデザイナーになる人もいれば、何年もかかる人もいる。
全ては自分次第で、ボルトなのか散歩なのかは決まるが、それは自分のペースということでオールOKである。
一番恐ろしいものは「なんちゃってデザイナー」なのだ。

私は日本一周するほどの遠回りをしながらグラフィックデザイナーとなったが、結果、遠回りしないとたどり着けない性格なのだと思っている。
きっとその遠回りがないと「あれ経験してないな」と自ら鈍行列車に乗り込まないと気が済まず、倍時間がかかっていたんじゃなかろうか。
逆にここまで遠回りして色んな観光地へ行ってくれた自分に感謝している。
そして今、ようやくど真ん中に辿り着けた。
生涯、このど真ん中でワチャワチャやるため、日々自分以上のプロの力を自分の右腕のように使いながら、この先の階段をビーサンで駆け上がっていく所存だ。

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