グラナージ~機械仕掛けのメモリー~#13
第13話「猫耳族の村」
文字数 2,097文字
「で?メルはどうやって探す?」
アキトが言った。
「メル様、でしょ。そうねえ。気配とか探れない?アカリちゃんの嗅覚とかで。」
「それは…無理だよ。メルちゃんにあったわけでもないし。」
ナツキが言った。
「そっかあ…。」
四人は早くも行き詰まった。
「おい!俺を忘れてないか?」
テントウが飛んできた。
「お前たちだけでメル様を探せるわけがない。何しろ、会ったこともないんだからな。」
「そういえば、そうね。」
ハルカは笑った。
「他の機械虫によると、メル様の気配は、森の中で途切れていたそうだ。そこで、猫耳族の毛が落ちているのを発見した。つまり、メル様は、猫耳族の者と行動している可能性が高い。あるいは、猫耳族と何か関係があるのかもしれない。まずは、気配の途切れた所の近くの、猫耳族の村に行ってみよう。もう一度、何か手掛かりがないか探すんだ。」
テントウの導きで、四人は猫耳族の村に向かった。
猫耳族は、グラナージとは違い、機械生命体ではなく、有機生命体である。彼らは現世の動物に近いあり方をしていて、彼らもまた、マナの影響を受けている。
彼らの中には、体内でマナをわずかながら自己生成出来る能力を持つ者がいて、ミラのように、マナを体内に保持することも出来る。
また、マナを自己生成出来るのは、現世においても、メル・マナにおいても、植物の能力である。
そして、現世の人間や、メル・マナのグラナージは、その想像、行動によって、マナを作り出せるのだ。
メル・マナの存在は、徐々に、少数の人間に知られるようになっていた。勿論、機械虫に連れて来られて、ハルカたちのように、現世と行き来しながら、メル・マナでグラナージとして暮らしている者たちだ。
そのため、わずかだが、現世にプラスマナが増えてきていた。しかし、それを上回る速さで、マイナスマナも増えていた。一体、その原因は何なのか…。
猫耳族の村に着いた。
森の中に作られた村で、いかにもファンタジーゲームに出てきそうな、木をくりぬいて作った家や、大きなキノコの家、木で出来た道やつり橋などがあり、ハルカは目を輝かせた。
「可愛いわね。」
「俺たちは観光に来たんじゃないんだ。それを忘れるなよ。」
テントウが言った。
「あの。」
ハルカは早速、木のベンチに座っていた猫耳族の者に話しかけた。
「なんだ。グラナージか。何か用か?」
灰色の猫耳族の者が顔を上げた。
「この村で、最近いなくなった人とかいませんか?」
「別に…。そういや、前にも機械虫がそんなことを聞きにきたな。」
「そうですか。ありがとうございます。では…。」
「ああ、待ちなさい。他の者に聞いても多分無駄だぞ。グラナージの行方不明は知っているが、この村で行方不明になった者などいないし、グラナージとも関係がない。他を当たった方がいい。」
一応、他の猫耳族にも同じ質問をしたが、何も手掛かりは得られなかった。
「ここで機械虫は行き詰まったんだな…。何かないか…。」
四人とテントウたちは、村を出て、しばらく当てもなく歩いた。
「待って!」
そこへ、猫耳族の少年が追いかけて来た。
「なんだ?」
テントウが聞くと、息を切らした少年は、しばらく立ち止まって呼吸を整えていたが、
「僕はソラっていうんだ。姉さんを…知りませんか?」
「姉さん?」
「ミラっていうんです。僕と同じ猫耳族で…。僕と同じ黄色の目で、オレンジ色の長い髪で、獣の服を着ていて…。もしかしたら、悪魔にさらわれたかもしれないんです。」
「悪魔に?それは大変だ。すぐに他の機械虫たちに探させよう。」
「それはいけません。僕は…そいつに脅されてて…。勝手なマネをしたら姉さんに何をするか分からないと…。」
「うーん…それは困ったな…。」
「どうか、ここだけの秘密で、姉さんを探してくれませんか?お願いします。」
ソラは頭を下げた。
「実は、俺たちは他にも人を探していてな…。」
テントウが断ろうとしていたので、それをさえぎってハルカが言った。
「ソラ君。私たちに任せて!ミラさんね。探してみるわ。」
「ありがとうございます!」
ソラは目に涙を浮かべていた。
「安請け合いしやがって。」
テントウはぐずぐず文句を言っていた。
「だって…。もしかしたら、メル様と一緒に猫耳族がいるかもしれないんでしょ。その子かもしれないわ。そして、その背後に悪魔が…。十分あり得ると思うわ。」
「でも、何だって猫耳族が絡んでるんだ?悪魔がメル様を直接さらえばいいことじゃないか?」
トウマが言った。
「メル様はこのメル・マナの王も同じだ。だから、悪魔といえども、容易に手出しは出来ない。だから、確かにハルカの言うように、悪魔が猫耳族を使って、メル様をどこかへ連れて行く、ということは考えられる。」
「どこに連れて行くんだろう?魔界とか?」
アキトが言った。
「…とにかく、もしそうなら、急がないとな。何故急に悪魔がメル様を狙ったのかは分からないが…。」
「メル様って、戦えないの?」
「アル様はとてもお強いのだが、メル様は…。」
テントウは言葉を濁した。
「分かったわ。とにかく、急ぎましょう。」
ハルカは決意した目で言った。
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