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希望、あるいは連鎖の物語。

目の前には扉があった。
無色透明、ノブさえ付いていないのに、それはどうしてか扉にしか思えなかった。

透けて見える向こう側には空が広がっている。
柔らかな風が肌を撫でる。
その心地よさにゆっくりと目を閉じた。


生まれてから今まで、どれだけの優しさをもらって、どれだけの優しさを渡せただろう。

一番返したい人は決まってる。
誰より愛して、信じて、そばにいてくれた人。
それなのに、「いつか」と交わした約束を破ってしまったのは私のほうで、それを謝ることすらできなかった。
せめて代わりに、と決めたことがある。
そうして今、ここに立っている。

一歩、二歩と前に出て、空を見下ろす。
背筋を伝う寒気を振り払って、見えない扉に額を当てた。
大丈夫、怖くない。
呪文のように呟いて笑ってみる。

あなたに会いたい。
笑った顔が見たい。
そのためなら、少しくらいの恐怖は乗り越えられる。

気付いてもらえないかもしれない。
笑いかけることも手を握ることもできないかもしれない。
それでも、この約束だけは守りたいんだ。
扉を抜けて、あなたの元へ行こう。

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(2015/08/29公開分 再掲)

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