いちばんすきな花
第9話 2023/12/7(木) 22:00~
第9話。え、もう9話?
終わりが見え始めて切ない気持ちになりつつも、かみしめた第9話でした。
公式サイトにあるメインヴィジュアルにも書かれているコピー。
"二人組を求める人生で出会った、4人のひとりたち"
これ、美鳥視点で出会った4人のことでもあるのですね…震える…
本記事では、ドラマ「いちばんすきな花」第8話のあらすじや台詞を、感想や考察を交えながらまとめています。
脚本や台詞が好きすぎて細かすぎるほどに残しているので、長いです!笑
※ネタバレを含みますので、これからご覧になる方はご注意ください。
●「いちばんすきな花」第9話
9-1. 初孫
もう、椿さん!
初孫の初表紙にニヤつき嬉しそうに大量の本を眺める様子、本当に嬉しそうで可愛かったですね(笑)
紅葉が表紙絵を描いた「パーティー」ですが、書店では恩田陸さんや直木賞作家の本と一緒に並べられていたので、それなりに名の通った作家さんの作品なのではないかなと思います。
これを機に、紅葉のイラストレーターとしての道がまたひとつ拓けていきそうですね。
「パーティー」の帯には、「また、いつか この街で逢えますか?」という文言が描かれていました。
紅葉のイラストは、"パーティー"という華やかなタイトルに対して、カップ麺やペットボトルが並んだ小さなテーブルを囲んだ二人のイラスト。
紅葉のどこかやさしいイラストがきっとマッチする内容の本なんだろうな。
帯の文言が、美鳥やこの物語の4人の今後を暗示しているようで気になりました。
書店でのゆくえの言葉、まだ間違い探しについてこだわっていますね。
何と比べて間違いなのか。どちらが間違いで正解なのか。間違いと正解は真逆のものなのか。
結構引っ張られているテーマなので、さらに深堀りされていくのか、気になります。
9-2. 逃げて正解だよ
回想シーンを通じて、現在のゆくえが、美鳥からの影響を大きく受けていることがわかりました。
ゆくえが希子や朔也にかけてあげる言葉なんて、ゆくえが美鳥からもらった言葉そのまんま。
単に受け売りで使っている言葉なのではなく、高校時代のゆくえがもやっとしながらうまく言語化出来なかった想いを、当時の美鳥はゆくえの心にすっと入る言葉にして解釈して伝えてくれた。
それがゆくえ自身の中にすとんと落ちて、自分の軸になっていて、今希子や朔也に与えているんだろうなと感じられます。
まさにこれも、"人から教わったものがまた他の人に繋がっていく"ですよね。
学校の先生や、塾の先生に教わるものって、勉強だけじゃない。
友人、恋人、どんな関係性の中でも、誰かから受け取ったものが、また他の誰かに贈られていって、そうやって循環していくものって、たくさんある。
椿が美鳥に教えた将棋が夜々に伝わったように。
そういう意味では、人って必ず誰かと繋がっていて、一人じゃない。
この物語の4人の主人公の、それぞれのその"繋がり"のどこかに、いつも美鳥がいたんですね。
美鳥が先生になった理由は、幼い夜々の些細な一言でした。
色々立派な理由を掲げてなったわけでも、大きな志を抱いてなったわけでもない。
ただひとつ、美鳥が初めて自分の存在意義を感じた時にかけてもらった言葉が、ずっと美鳥の胸の中にあり、彼女を支えていた。
この物語の視聴者がずっと気になっていたオレンジ色のガーベラ。
どうして美鳥はガーベラが好きなんだろう。
そんな視聴者の関心に対して、理由は特にないと言い放つ脚本。
好きなものや、なりたいもの、ほしいもの。
そこに、明確な理由がなくたっていいし、仮にあっても、別に声を大にして説明しなくたっていい。
理由がなくたって好きなものは好きでいいし、それが誰かに理解はされなくても、否定されるべきものではない。
人の価値観や生き方、性格、関心、趣味嗜好、それを他の誰かが決めつけたり、枠にはめようとしたり、否定するのは、暴力。
ぶん殴る暴力ではなくて、かすり傷をつける暴力。
そういうものに、ちくちくちくちくと傷つけられ、耐えながら生きてきた美鳥は、どこか現実を客観視していて、冷めていて、本質を捉えていて。
美鳥がそんな美鳥になっていった過程を思うと切なくて仕方ないけれど、今現在、少なくとも笑顔を見せながら生きている美鳥と再会出来たからこそ救われます。
最後のゆくえのモノローグの「逃げて正解だよ」の言葉がとても好きです。
そうやって暴力を向けてくる人たちがいる世界、自分の居場所ではない世界に、いつまでもこだわって居続ける必要なんてない。
居場所を選ぶために、居場所を見つけるために、その場から去ることは、ネガティブな意味の"逃げる"とはまったく違う。
美鳥がその場所を自ら去ったのか、去らざるを得なかったのかは分かりませんが、私もゆくえと同じように、美鳥を願ってしまいました。
語り過ぎました!まだオープニング!!(笑)
9-3. カラオケ
ゆくえの真っすぐな「正しい」は、この前のシーンでのゆくえのモノローグにある通り、美鳥ちゃんが美鳥ちゃんでいられる場所へ行くならすべて正しいという、変わらない想いが感じられる言葉でした。
「親だからって理由で好きでいる必要ない」の言葉も、好きや嫌いに理由はいらないというメッセージに繋がりますね。
昔美鳥から受け取った考え方や言葉が、今はゆくえの物になり、ゆくえが美鳥に渡して、美鳥が救われる。
巡り巡って自分にかえってくることも、あるんだな。
「美鳥」の「帰りたくなった」の言葉も、さらっと出ましたが、ずっと帰りたくなる場所がほしかった美鳥がこの言葉を言ったと思うと、愛おしいです。
ファミレスでの3人のシーンは、久々の再会のほんの一瞬のぎこちなさから、すぐにいつもの前みたいな雰囲気に変わって、私も一緒にカラオケ行きそうになるくらい嬉しかったです(笑)
ゆくえと赤田は二人きりでの密室カラオケがNGだからね。
美鳥がいれば、二人きりの密室を回避できるから。
久々にたくさんはしゃいだんだろうな。
山盛りポテト、3人で分けたんでしょ?カラオケシーンください!(笑)
赤田妻の峰子について、「なんでもかんでもダメって人じゃない」。
前回8話の感想で書いた部分ですが、この言葉を赤田の口から聞けてよかったです。
そういうのがわかってるから、赤田と峰子の二人組はちゃんとうまくいってるんだよね。
こういうところをちゃんと回収してくれる脚本やキャラ設定が好きです。
9-4. またおいで
高校教師時代の美鳥、ずっと眉間にシワが寄ってるんですよね。
本当にどこかずっと不機嫌そうで、怒った感じ。
今の美鳥とはまったく違う顔なのに、別の人間じゃなく、一人の人間の別の顔と思わせる説得力がある口調や間の取り方、言葉の温度。
田中麗奈さんのお芝居ってちゃんと見たことがなかったのですが、さすがな女優さんだなと思いました。
中学の時の椿のことを話す美鳥。
変なやつがいて~と話す美鳥の表情はとても穏やかで、椿と一緒に家で過ごした時間を"嬉しかった"と言った言葉に、椿に救われていたんだなということがわかってほっとしました。
桜のイラストは、今現在の美鳥が紅葉に電話をした時にも描いていましたね。
紅葉がテストの裏に描いていたのは、階段で男子生徒二人が座って談笑しているようなイラスト。
二人でいられる友達が欲しかった紅葉の心情が現れているようで、そこに描き足された満開の桜が、綺麗でした。
紅葉が美鳥先生を好きだったのは、モノローグにもあった通り、自分が嫌いだった自分をビシっと否定してくれたから。
ずっと引っ張られている"間違い探し"のテーマですが、"正解"が分かることではなく、"間違い"が間違いだと分かること、それだけで救われることも、あるんだよね。
自分がおかしいなと思うこと、どこか違和感を感じること、でも、多数派の価値観とは違うから、自分がズレているのかなと思って、黙っていようとしたこと。
"その自分が正しい"ということではなくて、”自分が違うと思っていたことを誰かも違うと肯定してくれること"。それだけで、救われる。
テストの採点だったら、満点がゴールなら、×より○の方が絶対良くて、○が正解で×が間違いだけれど。当たり前なんだけど。
でも、×印さえつけてもらえなかった答案が、採点してもらえて、×印をつけてもらえること。あ、これ間違いだったんだって、そうだよねこれやっぱり間違いだよねってわかること、間違いですよって言ってもらえること。
どうしたら○になるのかはわからなくても、×印のままでも、赤点のままでも、採点してもらえて、その答案を戻してもらえること。
それだけに救われることって、あるから。
紅葉はすごく救われたんだろうな。
間違い探しのテーマと、この紅葉のストーリー、ゆくえの塾まわりで度々出てくる採点の話と、このシーンでの美鳥と紅葉の採点のシーン。
繋がり方と回収が見事でした。
9-5. いつか
夜々の「帰る場所ない」の言い方が可愛すぎました。
うちに来ませんか?(怖)
たっくん!!!なんてひどい男なんだ!!!!
夜々って結構恋愛体質なんですね。でも見る目がないんだな。
ゆくえ、椿、夜々、紅葉。それぞれの口から語られたそれぞれにとっての美鳥はまるで別人のようでしたが、こうして美鳥を軸に描かれると、まるで別人のような美鳥も、美鳥のひとときの顔に過ぎなくて、ぜんぶ美鳥だったんだということがわかりますね。
人は人のことを、ほんの一部しか知らない。
ほんの一部でしかない知っている顔を記憶して、その人はそんな人だと語ってしまう。そんなことにも気付かされます。
4人が美鳥から影響を受けたように、美鳥も、4人から影響を受けていましたね。
夜々やゆくえがぽろっと言った言葉をきっかけに学校教師を志して、夜々の一言から学習塾開校を具体的な夢として描き始めた。
最初、夜々に夢を聞かれた時、「家が欲しかった」と過去形で答えた美鳥でしたが、夜々と話すうちに、今は無理だけどいつかならと、考えるようになった。
結果、家を買って学習塾を開いたわけですが、人が踏み出すきっかけって、ドラマチックな出来事とかでなくとも、誰かのささいな一言だったりするんですよね。
知らず知らずのうちに、みんな誰かに影響を与えて、影響を受けて、生きてる。
出来れば自分も、誰かにとって悪い記憶とならず、やさしい記憶の一部になれていたらいいなと考えさせられます。
9-6. おじゃましました
美鳥の人生って、キツイなぁ。
子どものころは親から暴力を受けて、親戚中の家をたらいまわしにされる。
塾講師のバイトを経て、新潟で高校教師になり、結婚するが離婚。
教師を辞めて、東京に出てきて、家を買い、個人で学習塾を開業。
しかしその矢先、親の介護のため、家を手放し、塾を閉め、北海道に戻る。
これだけの出来事があって、一時は感情をなくすほどに追い詰められたこともあって、それでも食いしばって生きてきた。
その道のりのすべてを知っているのは、美鳥本人以外にはいなくて。
その途中で出会ってきた人たちは、出会った時間の中での自分を記憶していて、久々に会っても、「相変わらずだね」と言う。
色々なことがあったけど、「変わらないね」って言ってもらえるくらい、今普通にいられることは、ある意味で救いだけれど。
でも、色々なことがあったのに、「変わらないね」って人は簡単に言うんだなって、ちょっとドライに受け止めるとひんやりするな。
紅葉だけは、高校時代の美鳥先生と今の美鳥との雰囲気にはギャップがあって、「なんか変わりましたね」って言っている。
なんか変わったけど、今の美鳥先生をすんなり紅葉が受け止めたのは、そして変わらず好きだなって思えたのは、高校時代の紅葉が変な先入観で"みんな"と同じように美鳥を決めつけずに接して、美鳥の"いつか"を願えた子だったからですよね。
変わった自分を、変わらず受け入れてくれる人がいるというのも、救われますね。
美鳥と接して、椿が、ゆくえが、夜々が、紅葉が願った"いつか"が、美鳥にちゃんと訪れた。
夜々の「いつか」の台詞もちゃんと回収されますね。
でも、その美鳥の夢だった、帰りたい家。
それが今は4人の居場所になってしまっている。
そのことが物語をどう展開させていくのか、気になるところです。
9-7. ここに帰ってきたい
椿と美鳥のシーンって、なんだか泣けてしまいます…
前回の再会の「もう怪我してない?」のシーンも、今回のここの「帰りたいって思った家でしょ?」のシーンも、椿さんの台詞の言い方とじんわり目に溜まってくる涙、それを受けた美鳥の息の飲み方と涙をこらえる感じ、このお芝居合戦が素晴らしすぎて泣けてしまいます。
椿と美鳥の二人の過去なんて、ほんの数分しか覗いていないのに、実際の二人もそんなに多くの言葉を交わしたわけではなかっただろうに、お互い分かり合えていたこと、美鳥にとって椿は救いで、椿にとって美鳥はずっと願っていた人だったこと、それがものすごく伝わってきて、泣けてしまうんですよね。
役者さんの力ですね。
4人に遠慮して美鳥がこの家を諦めないように、家以外のゲームセンターでも楽しかったから大丈夫、前の生徒さんのためにもここがいい、自分にはこの家は広すぎる、と、先回りして伝えてあげる椿さんの優しさ。好きです。
4人への遠慮もあっただろうけれど、ちゃんと、「ここに帰ってきたい」と言えた美鳥。その言葉を聞きたかった椿。
あーーーーーーーーー泣ける。みなさんここ泣きますよね?
約束とかしないで集まる場所、もうこの家が4人にとって本当に居場所じゃん。
そんなことをひしひし感じる美鳥ですが、"4人"と会う決心をしました。
会ってみて、決めようとしたのかな。
9-8. 四人の帰る家
前提として、美鳥は一度この家を手放しているので、当然なんですけど。
でも、美鳥にとって初めて思えた帰りたい場所、初めて手に入れた自分の居場所が、今は4人の居場所になっている。
それは当然なんだけれど、その様子を目の当たりにした美鳥の、どこか切なそうな、なんともいえない表情が気になるシーンでした。
4人に対する嫉妬とか、そういうネガティブな気持ちではなくて、自分が改めて手に入れようとしている家が、別の誰かにとって大切な居場所になっているという事実。
しかもその誰かが、美鳥にとっても大切な一人と一人と一人と一人の四人で、大好きな四人の居場所を自分が奪うことに、躊躇いが生じてしまっているのでしょうか。
そんな様子をおそらく感じ取っているゆくえと椿。
椿は、ゴミ袋の場所を教えてあげました。
これは、「志木さんも仲間だよ、五人だよ」ではなくて、「ここは志木さんの家だよ」と伝えるための行為だったと私は解釈しています。
椿がこの家を手放す理由は、次の住人が美鳥だからっていうことだけが理由ではないし、美鳥がこの家に住んだって、この四人が解散するわけではないのだから、美鳥にはこのままこの家を手に入れてもらいたいって思います。
でも、いざ自分の居場所が誰かの居場所になっていることを知るって、嬉しい気持ちもありつつ、寂しい気持ちもありますよね。
「よかった。みんなに帰る家、あって。」
美鳥ちゃんにも、帰りたい家に、帰ってほしいよ。
どうなるかな~。
9-9. 五人と一人
二人組が好きだという美鳥と、少し驚くゆくえ。
美鳥と自分は似ていると思っていたゆくえは、美鳥も二人組って苦手だと思っていたんじゃないかな。
似ているようで、違うところも当然あって、でもお互い否定もせず、尊重する。
美鳥の言う、「自分のためだけに相手がいる感じ」というのは、美鳥がその生い立ちからきっとずっと求めていたものなんだろうな。
それが手に入ると思えて結婚したんだろうけれど、うまくいかなった時、相当辛かっただろうな。
でも、美鳥にとって、その安心する二人組の相手が、椿であり、ゆくえであり、夜々であり、紅葉であったこと。
その四人が、今出会って四人組になっていること。
不思議な縁ですよね。
ドラマチックだけど、こういうことって、自分が知っている範囲内でも知らない世界線でも、意外とあるかもしれないですよね。
本当に、鳥のように、椿、ゆくえ、夜々、紅葉、それぞれの場所を訪れて、出会って、また飛び立って、また戻って来た美鳥ちゃん。
どうかこのまままたどこか知らない場所へ飛び立ってしまわずに、自分の居たい場所を選んでほしいな。
ゆくえと別れて歩き出した美鳥の表情は、何かを決意しているようにも見えました。
五人の時の、四人と一人だった違和感を、しっかり口に出して伝えた美鳥。
これ結構リアルでよかったなぁ。
四人のことは尊重していて、でも私はそこに加わって五人組にならなくていいと言える美鳥。
単純に気まずいからということではなくて、四人は四人でいればよくて、自分は、美鳥は、これまで通りそれぞれの一人と二人組をつくってまた会えたら嬉しい。それが居心地が良い。
下手に五人で仲良くウェーイとかにならなくてよかった。
いやこの脚本はそうはならないとは信じていたけど、よかった。
このお見送り、ゆくえはあえて一人で来たんだろうな。
「行ってらっしゃい。帰ってきてね。」で送り出したゆくえ。
ゆくえも椿と同じように、美鳥が椿宅に戻りたいのなら、戻ってほしくて、自分たち四人組がそれを躊躇わせる理由にはなりたくないって思っているんでしょう。
夜々と紅葉もそうだとは思うけど、二人はどこかまだちょっと少し無邪気だから。
年上組の椿とゆくえが、同じ気持ちで美鳥を思っているのが、嬉しいです。
さてさてもう次回10話ですよ…なんてこった…終わってしまう…
この家が、美鳥が、四人が、どうなるのか。
どんな答えでもいいけれど、全員想い合って幸せでいてほしい。
来週も楽しみです。