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他人の中に残った自分の記憶

人の記憶に残りたくなんてない。有名になるなんてもってのほか。

理由はないけど、きっと元々そういう性格なんだろう。

というか、だれかの記憶の中に、自分が残っているということを、ついこの間知ったのだ。

先日、会社でとあるプロジェクトの打ち上げをした。

私は初期しか関わらなかったから、思い入れがあるわけではなかった。
打ち上げに参加することすら申し訳なく、一度断ったのだけど、それでも、と言ってもらったからとりあえず参加した。

会の最初はたわいない話をしていた。
最近の仕事について、面白かった出来事、職場の人のこと…。それから、このプロジェクトの話になった。

私は最後まで関わっていないから、ふんふんと聞くことに徹していたのだけれど、突然プロジェクトのはじまりの話になった。
このプロジェクトのキックオフのとき、私が衝撃的な一言で、ミーティングを始めたらしい。

そこでふっと、そのときの記憶が甦ってきた。まったく忘れていた。自分の中から出ていった記憶が、そのとき戻ってきたような感覚だった。

自然と涙がぽろぽろこぼれた。まるでNetflix"初恋"でヒロインが記憶を取り戻したときのようで、ドラマで涙するのは正しい挙動なんだな、と冷静に思った。

プロジェクトの発足前、みんな半信半疑だったのだ。どうやってスタートを切ればいいのか、本当に進めるのか。曖昧な空気が漂っていた。

途中で頓挫してもいい、失敗に終わってもいい。ただ、中途半端でなあなあになるのが1番嫌いだ。そう思った私は、メンバーを集め、言葉を発したのだった。

考えた。いまやりたいことを簡潔に伝え、でも強く前へみんなを進めていく言葉を。
ミーティングの前は緊張すらした。

そんな一言を、覚えていてくれたのだ。

人は、忘れていく生き物だ。

忘れたいことほど忘れられないし、忘れたくないと願ったことは、忘れてしまう。だからきっと、これからも誰かの記憶に残ろうなんてしない。

ただ""いま""を一生懸命に考えて、必死に動いていきたい。

そうすれば、その瞬間も、運がよければそのあとも、他人の心に残るのだろう。

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