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ラブレーターを書くようにキュレーションしよう

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコース「クリエイティブリーダシップ特論2021」第4回:鈴木 潤子さん
2021年5月3日 by コク カイ

「クリエイティブリーダーシップ特論2021」は武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコース(通称「ムサビCL学科」)が行われている、クリエイティブとビジネスを活用して実際に活躍されているゲスト講師を招いて、参加者全員で議論を行う形の講義です。受講生たちは毎回の内容をレポート形式でnoteで連載しています。

今回のゲストはアートキュレーターの鈴木潤子さんです。

美術の仕事をするには、美大卒じゃないといけないか?鈴木さんの経歴から見れはそうではないことが分かります。彼女はマスコミや美術館の仕事で約20年間の勤務を経て独立しました。最初は展覧会やイベントのキュレーションの仕事から段々と個人事務所を立ち上げ、アートやデザインを中心に、幅広い分野でPRやキュレーション、文化施設の立ち上げなどの仕事を携わってきました。

彼女が持ち込んだテーマは「学びとアートとキュレーション」です。アートは社会においてどのような役割を果たすべきか?私たちの日常生活の中にもアートがあるか?そのような質問に対して、彼女はアートを「一部の人しか理解できないミュージアムでしか見れない」専門的な分野として扱うのではなく、もっと地域社会や市民生活と寄り添うものとして考えてきました。

そんな彼女が携わってきた数々のアートプロジェクトの中で、私が一番印象的だったのは今年の七月下旬に開催するなおえつうみまちアートプロジェクトです。なおえつは新潟県の上越にある町で、文化といえば上杉謙信や北前船などがあって、自然といえば漁業や林業などがあって、たくさんの資源がある豊かな場所です。

そんな地域をアートの力を活かして再び「生き返らせたい」という思いで、鈴木さんは今回のアートプロジェクトを企画しました。彼女がやりたいのは今までの芸術祭のようなものではなく、地域独自の魅力を掘り起こして、町人の元気を取り戻せるアートプロジェクトです。そこで彼女が考えたビジョンは「未来への交感」という、未来から現在の直江津を見返す目線を持って、文化や芸術が掛橋となって、街の魅力や賑わいをみんなで交感する風景を作るコンセプトでした。

もちろんアートプロジェクトそう簡単ではありません。例えば、町人やアーティストなどといったたくさんステークホルダーを巻き込むには、さまざまな出来事が起こることを予想しなければなりません。そして金銭や場所、時間と空間のあらゆる要素を踏まえながら、どうキュレーションするかはキュレーターの腕を見せるところでもあります。このような仕事に長年携わってきた彼女にとってこれらの問題は困難というよりも、未知な要素として化学反応を呼び起こすきっかけとして、いつも積極的に捉えています。

最後に地域でのアートプロジェクトのキュレーションについて、それは「地域の人たちへのラブレーター」みたいものだ本人は言いました、まさにその通りだと思います。むしろそのような心境や気持ちがなければ、地域の本当の美しいところは発見できないと私は考えます。

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