名取 里美 Satomi Natori

俳人。1982年、山口青邨、黒田杏子に師事。 句集『螢の木』『あかり』『家族』『森の螢』。 共著『鑑賞 女性俳句の世界』『東川町 椅子』『富山の置き薬』。 ラ・メール俳句賞、藍生賞、駿河梅花文学大賞受賞。 俳人協会幹事。鎌倉ペンクラブ幹事。日本文藝家協会会員。

名取 里美 Satomi Natori

俳人。1982年、山口青邨、黒田杏子に師事。 句集『螢の木』『あかり』『家族』『森の螢』。 共著『鑑賞 女性俳句の世界』『東川町 椅子』『富山の置き薬』。 ラ・メール俳句賞、藍生賞、駿河梅花文学大賞受賞。 俳人協会幹事。鎌倉ペンクラブ幹事。日本文藝家協会会員。

    最近の記事

    停戦と眠り

    しとしと雨の日が続く。まさに菜種梅雨。 つきあたりの畑に二列の菜の花。黄色がこころをぽっと明るくしてくれる。 雨がやんで、 青空がひろがると、 菜の花の黄色は、ウクライナ国旗の黄色となり、途端に悲しい色となる。 マネが描いたこの戦争のデッサンは、「Civil War」という題名。マネは1870年の普仏戦争で、首都防衛戦に加わった。 戦争に色を重ねることは、マネにとって、拒絶したいこと、 許しがたいことだったのだろう。怒りと悲しみのモノクロームである。 一刻も早く、停戦にな

      • わが家の山桜

                 わが家の濡縁の端に一本の山桜がある。鳥が実を運んだのか、自生した実生の桜である。狭庭の光を求めるように、するすると伸びた幼木は、庭の真ん中に奔放に枝をひろげる若木となった。ただ、かなしいことに、肝心の桜が咲かなかった。冬芽があらわれると、桜の蕾かと毎年期待するのだけれど、若葉が茂るばかり。いつまでも葉を楽しむだけの桜だった。  ひかりそむ櫻紅葉や朝ごはん   里美『森の螢』 訪ねて来た義父が「家に近すぎるな」とこの桜に驚いていた。桜の根が家の基礎を押し

        • わたしの一句が教科書に

          新学期。手にした、新しく、ぴーんと張りつめた国語の教科書をひらいて、わくわくして読んだ昔。 その学年年齢にふさわしい作品が選ばれているからだろう。どの作品からも、文学のエッセンスがふわふわ漂ってきて、幼いながらにうっとりと読んだ。 教科書の日本の文学に触れつつ、学びつつ、子供の心に、日本人としてのアイデンティティが自ずと形成されていったような気がする。  しばらくは秋蝶仰ぐ爆心地     名取里美 この一句が、高等学校の国語教科書『精選言語文化』と『新編言語文化』に掲

          • 月を仰ぐ

            ささやかな人生の或る時を俳句に詠む。俳句に詠んだおかげで、その或る時が、後々、映画のように私には甦ってくる。 月を仰いだ私の或る時を辿ってみる。   照る月の胎児に腹を蹴られけり  『あかり』 流産、早産の危機を乗り越えたときに詠んだ句。月を詠もうと庭で月を仰いでいるとき、膨らんだお腹を胎児にぽんと蹴られた。 胎児は月光を感じるのだろうか。出産はやはり満月の日だった。その子も無事生まれれば、   庭先の子供は月を見て飽かず   『あかり』 幼い目にも、月の光は不思

            日本文藝家協会推薦入会

            ようやく梅雨入り、と思った日に、大きな封書が届きました。 日本文藝家協会 理事長 林 真理子氏からで、推薦入会のお勧めでした。 推薦理事のお名前に俳人の大串 章氏と歌人の篠 弘氏のお名前が記載されていました。 日本文藝家協会の名前は、昔から見聞していましたから、実体はよく知らないけれど憧れていた自分に気づきました。 先日、NHKに出演の林 真理子氏のトークから、作家たるパワーに圧倒された瞬間を思い出しながら、ありがたく、入会の申し込み書を書きました。 なにかいいこと

            読売新聞 俳句題詠「慈雨」

            昨日、6月11日の読売新聞夕刊の2面に、「慈雨」をテーマにした五句を寄稿しました。 走り梅雨のような日を選んで、久々に雨に濡れながら吟行しました。 締切日まで、晴れの日の方が多く、雨の句に恵まれませんでしたが、ある雨の晩、出歩くと、ふわっと飛んできた鳥が電線に止まりました。なんと、まん丸い頭の青葉木菟のシルエット!初めて見た青葉木菟でした。すぐに飛び立ってしまいましたけれど。 まだ、青葉木菟の声は聞こえてきません。。。 歌人の時田則雄先生の作品も掲載です。読売新聞夕刊

            角川『俳句』5月号

            遅ればせながら、この号に拙句12句を寄稿しました。 原稿締切は3月19日だったのですが、このコロナ禍ですから、遠出もできず、近所を吟行してあれこれ作句していました。これでいいかなあと、拙句をまとめていた3月11日、突然、義父の訃報が。急きょ、葬儀のために諏訪まで出かけました。 義父は諏訪湖のほとりの施設に暮らしていました。そばに居てほしいと願いましたが、自らの意志で都内から諏訪へと移転していました。フランス文学者で都立大教授でした。東大ではバイオリンを抱えた星新一氏をよく

            タビハイ 巴里居候雑記

            堀切克洋氏が運営する俳句のポータルサイト「セクト・ポクリット」。 その中の企画、「タビハイ」ー旅する俳句 旅する俳人ー に寄稿いたしました。 旅に出かけ難い昨今、すこし前のできごとですが、すこしの旅気分をどうぞ!              ☆              ☆              ☆

            伊勢に生まれて

            井上弘美主宰の俳誌『汀』に「わたしと着物」というエッセイの連載がある。『汀』3月号に、私も書かせていただいた。 タイトルは、「伊勢に生まれて」。私の祖母、母、私と三代の女たちは伊勢に生まれた。祖母と母は伊勢に育ち、私は、十代までの夏休みを伊勢の祖父母の家で過ごしてきた。伊勢は私のこころの故郷なのである。 思えば、わたしのささやかな着物は、すべて祖母と母の見立てで選んだものであった。 伊勢の神領民としての生活、祖母の着物への愛着などから、着物のエピソードを綴った。 私の

            京都新聞 俳句はいま 2021.2.8

            神野紗希氏による『森の螢』のご鑑賞文が、京都新聞に掲載されていた。 奈良の句友から、お知らせいただいた。 神野氏は、『森の螢』を「世界と交歓する祝祭」という視点から鮮やかに論じられていた。 名取里美は第四句集『森の螢』で、社会、世界、私のトライアングルを組み上げた。(中略)                               〈ふりしぼる終の光を青螢〉〈奥へ奥へ闇ひらきゆく螢かな〉。現れては消える蛍は「コロナ禍に右往左往する間も、森の営みは変わらず、厳かにつづい

            句集『森の螢』Kindle版発行!

            2020年の11月に角川書店から刊行した拙句集『森の螢』。 おかげさまでご好評につき、このたび、Amazon Kindle版をリリースしました。 https://www.amazon.co.jp/dp/B08X2FRZJF/ref=mp_s_a_1_16?dchild=1&keywords=句集&qid=1613870083&s=digital-text&sr=1-16 実は、この本は書店流通していませんでした。 角川「俳句」編集部(☎04-2003-8716)でしか

            愛媛新聞 季のうた 2021.2.8

            土肥あき子氏が愛媛新聞の「季のうた」で拙句をご鑑賞くださいました。 ゆくりなくひとなつかしき針供養  里美『森の螢』 針供養は、使い古した針を、神前の豆腐に刺して供養し、裁縫の技芸の上達を願う行事。 この句を詠んだときは、新型コロナウイルスの2020年の緊急事態宣言発令の直前の頃でした。 針供養の俳句をつくろうと、荏柄天神社へ出かけると、俳句仲間にばったり。晴れやかな仲間の笑顔は、まさに春のあかるさでした。 境内では、なつかしい方との出会いも。近況や思い出話に花が咲

            読売新聞 四季 2021.1.19

            宝塚の友人からお葉書が届く。彼女の住所は、阪神淡路大震災後に不明となり、音信が途絶えていたので、びっくりしてうれしかった。 彼女は、読売新聞の長谷川櫂氏の「四季」に掲載された私の句をみて、一筆書いてくれたのだ。私は、この記事を知らなかったので、この掲載にも驚いた。 早速、図書館で新聞を拝読。 花となるまで廻転のスケーター   名取里美『森の螢』 この拙句を、ご紹介くださっていた。 滋味深いご鑑賞文を、長谷川 櫂先生、どうもありがとうございました。         

            「対岸」主宰・同人作品評

            「対岸」は今瀬剛一主宰の俳句結社である。 今年10月に創刊35周年を迎えるそうだ。 「対岸」1月号から「対岸」の主宰・同人作品月評を書かせていただいている。     眼を少し開け冬鳥に似たるかな  今瀬剛一 「対岸」11月号を拝読し、主宰の秀句のなかの一句を評させていただいた。 「似たる」の主語は作者なのか、そうでないのか。 あれこれ想う読み手の顔を、さらに眼を少し開け、 見られているような錯覚までおぼえる。 今瀬剛一主宰は、『能村登四郎ノート』、『芭蕉体験 去来

            東京新聞 句の本に『森の螢』をご紹介いただきました

            黒田杏子先生からお電話がありました。 東京新聞の12月20日の東京俳壇のページに拙句集『森の螢』が掲載されていると。 近くのコンビニに東京新聞が無かったので、仕方なく、新聞販売所に予約しました。 俳句仲間にこのことを知らせると、すぐに東京新聞を買いに走る方が二人も! わたしが、遠くのコンビニへ東京新聞を買いに向かう途中で、もう記事がメールで送られてきました!なんという素早さ!ありがたいことです。これが世の中のスピードなのですね。 東京新聞の御執筆者さま、簡潔にご紹介

            『森の螢』をお読みいただきありがとうございます

            拙句集『森の螢』をお忙しい中、お読みいただき、ご鑑賞文をいただき、お手紙をいただき、みなさまに心より御礼を申し上げます。 日々、ポストにたくさんのお手紙が届きます。 うれしく拝読しつつ、 私はまだ書けていないお礼状もあるので、みなさまの素早さに反省しきりです。 他のところにも書きましたが、句集の準備中にぎっくり腰になり、以来三か月、痛みで座れなくなりました。 急きょ、キッチンカウンターを机にして、立って作業していました。 食事も立ち食いの三か月、家人から「Stan