国葬を「国の儀式」に位置付けた平成12年の政府作成文書(逐条解説)の意味
9月12日に産経新聞がこの報道をしてますが、内容は9月6日に読売新聞が報じたものと同じです。
この事実の使いどころについて。
国葬を「国の儀式」に位置付けた政府文書の意味
これをもって「国葬の法的根拠がある」と言うための根拠とすることを否定するわけではありませんが、もともと国葬は内閣府設置法がなくとも閣議決定で可能だというのが行政法解釈の標準理解なので、そこはあまり重要ではありません。このことは何度も書いています。
そうではなく、国葬を内閣府設置法4条3項33号の「国の儀式」に位置付けたことが議会制民主主義に照らして適切な手続を経ていたと言えるか、という観点から考えた場合に、「国会審議を通っている」と言える…ということの根拠事実として使えるかもしれない、ということです。
法解釈の観点からは国葬制度と国葬実施に法的根拠があるとしても、議会制民主主義の在り方からして事前に議会=国会の理解を得るという手続を経るのが「立憲的」ではないか、という問題意識があります。
確認ですが、「国の儀式」と「内閣の行う儀式」とで異なる規定ですから。
内閣府設置法案は平成11年4月28日提出、同年7月8日に成立、同年7月16日に公布されており、平成12年4月の逐条解説より前ですが、逐条解説に書かれていることは法案審理にあたって議員へ提示された説明資料をベースにしている可能性があります。
読売も産経も、この点には触れていませんが、もしもそうならば【民主的手続論】は完全クリアとなります。
それが無い場合にどう見るかは日本の議会制民主主義の在り方からどう考えるか、という話になると思います。
なお、「国会で明示的に議論されてなければ民主的手続を経たことにはならない」ということだと、敢えて無視して議事録に残さないという行動を取り、あとになって「あのとき何も議論してなかった!立憲主義に反する!」とか振る舞う事を是認することになるので、明らかに不当な考え方です。
国葬令と国葬
国葬令は失効してますが、その理由は「特旨」「勅裁」といった手続が現行憲法と相いれないからであって、国葬制度それ自体が現行憲法と相いれないという理由ではありません。
また、一覧してわかるように、大喪儀も、皇族方の葬儀も、それ以外の「国家に偉勲ある者」も、すべて「国葬」とされています。
国を挙げて弔う、葬送する、という意味において、戦前と戦後で変わりがないということがわかります。
したがって、内閣府設置法4条3項33号の「国の儀式」に、①天皇の国事行為として行う儀式(憲法7条10号)と、②閣議決定で国の儀式に位置付けられた儀式を含めることは、この沿革からしても是認できるものと言えます。
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