茂木大臣の「定住外国人に地方参政権を」についての補足

茂木敏充議員が「定住外国人に地方参政権を」という方針だったことについて上記記事で「20年前の話」だということを書きました。

加えて、その後の政策マニフェストからはそれについて言及することもなく、実質的に方針変更した可能性も指摘しました。

今回は別の側面から、この発言の意味内容を取り上げます。

「参政権」の中身の理解

「参政権」と言うと、第一に思い浮かぶのが「選挙権」「被選挙権」だと思います。実際、それで間違いでは無く、参政権の中核をなしています。

「公務員の選定・罷免権」も、参政権を構成するものと理解されています。

憲法改正の国民投票、各種住民投票、最高裁判事の国民審査を参政権に含める理解もあります。

また、請願権や選挙運動の自由に加え、「公務就任権」も、参政権に含める理解があります。

公務就任権は、かつては参政権に含める理解が強かったですが(芦部が「広義の参政権に含めて考えることができる」と書いている)、現在では参政権に含める理解は主流ではないです。ただ、まったくおかしな理解というわけでもありません。

現在は「職業選択の自由」説で捉える理解が多いと思われます。

地方公務員の外国人就任

地方公務員に外国人が就任することについて、現在の実務と法的な扱いは以下のものになっています。

【「公権力の行使に当たる行為を行い,若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い,又はこれらに参画することを職務とするもの」(公権力行使等公務員)については、国民主権の原理に基づき、原則として日本の国籍を有する者が就任することが憲法上想定されている】

最高裁判所大法廷 平成17年1月26日判決 平成10(行ツ)93

つまり、公権力行使等地方公務員にあたらない、言ってしまえば「役職者ではないヒラの公務員」であれば、外国人であっても地方公務員に就任することは憲法上許される、ということになります(役職者かヒラかで決まるわけではないが、一応便宜的にこのように表現しておく)。

実際に、現在は多くの地方自治体で、外国人が公務員として就任しています。

茂木大臣の言う「参政権」とは

茂木大臣の「定住外国人に地方参政権を」の発言は「平成12年」、つまり、先述の最高裁判決が出る5年前でした。

この事案の地裁判決は「平成8年」でしたので、茂木大臣が「参政権」と言った際の意味内容に「公務就任権」が含まれていたとしても、不思議ではありません。

そうであるならば、現在でもその考えが変わっていなかったとしても、それは現実に多くの自治体で見られる実態を追認しているということに過ぎません。

「外国人の公務就任はすべてダメだ」というような理解の人であれば格別ですが、そうでなければ、問題ない理解であった可能性があります。

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