見出し画像

狂武蔵に脳をハックされたので鑑賞注意

坂口拓主演の「狂武蔵」見てきました。

私は体調に異変を感じました。ハッキリって危険だと思いました。

狂武蔵の構造

本作の前提として吉岡道場の当主である清十郎と伝七郎を切り伏せたため、吉岡一門が武蔵に決闘を申し込み、武蔵が殴り込みに行く、というお決まりのストーリーがあるわけですが、本作は2つの構成によっています。

一つは77分1本取りの武蔵vs吉岡一門。撮影は9年前。

もう一つは本作公開のために最近収録したパート。

ぶっちゃけ後者は山崎賢人のためにあるというか、キングダムで名を馳せた「山崎賢人」の名前を使うために収録したというか。

最後のシーンなんか、完全にキングダムの信vs左慈(坂口拓)を意識したセリフみたいだなと。同時に、「賢人もこっちの世界に来いよ」という坂口拓からの激励のように思える。アクション俳優としてもっと成長しろよ的な。

その辺りはオマケ要素だと思ってるので、以下本編について。

「殺陣シーン」という不適切用語

申し訳程度の物語要素のあとはずっと殺陣シーンというか、全編殺し合いなので「シーン」と言うのは不適切か。たぶんカメラ1つでずっと回しっぱなし。

これを77分(映画全体はもうちょっとある)

サッカーが1試合90分なので、後半32分という、ハイペースを維持できる限界の時間までずっと刀ぶん回して相手を蹴ったり投げたりしてる(しかもハーフタイム無し)と思えばいい。頭おかしいことしてると思う。

で、まぁ無粋な事を言ってしまえば突っ込み所はたくさんあるわけですよ。同じ格好をした俳優さんが何度も同じような殺され方をしては登場するとか、武蔵の後ろを明らかに取ってるのに攻撃しないで素通りするのがカメラに映ってるとか、斬られて動けなくなるはずの人が走り抜けてカメラからフェードアウトしようとしてしきれずにそのまままた周りを取り囲むとか。

でも、この映画はそういう視方をしてはいけないんだろうと思う。

武蔵の動きに脳がハックされた

何度も何度も集団で迫りくる吉岡一門。それを様々な構えで応戦し、技を駆使して蹴散らす武蔵。打ち合わせをしているんでしょうけど、明らかにそんなものは忘れてしまうくらいの濃度で戦闘が連続するので、その時点で驚異的だと思う。

卑近な例でたとえるなら学芸会で学年全員の役の動作とセリフを覚えるなんて不可能だろうけど、目の前に見える現象としてはそれ以上の事が行われている。

相手の刀奪って二刀流からの刀をぶん投げるとか、とにかく1対多数なので型なんかほぼ関係なく(あるんでしょうけど)やれるもんは何でもやってるという感じ。

で、ある時点で頭が痛くなって視聴するのが辛くなってきたんですが、「ああ、これはミラーニューロン・システムが働いてるな」と。

ふつう殺陣シーンなんて、せいぜい10分でしょ?

それを大幅に超えて1時間以上も、しかも武蔵一人の動きを中心に見続けるわけですから、私の脳も武蔵の動きにハックされたんでしょう。途中から「この闘いはいつまで続くんだ、もう疲れた、でも相手がどんどん斬りかかってくるし、どーすんだこれ」という心境になりました。

これは明らかに映画がつまらないからということではない感覚。

狂武蔵という映画をクーラーの効いた映画館で見ていたはずが、武蔵として剣戟を振るっている感覚に完全に憑りつかれました。映画見終わったあとに1リットル水分補給しました。頭が疲れてるので帰りの電車で爆睡しました。

これ書いてる途中に気づいた感覚ですが、肩甲骨周りがすっごい重い。確かに昨日はジムでラットプルダウンとかシーテッドローとかやりましたけどこんなにはならないはずだぞ、ということになってます。

2017年の「RE:BORN」でも"TAK∴"の長時間の戦闘シーンが続くんですけど、それを観たときにはこういう感覚にはなりませんでした。場面転換やスローモーションなどがあると、感覚が途切れるんですかね?

「行くかぁ、どうせ死ぬんだし」

本当の合戦なんて再現できないのは分かりきった上で、それでも「アクション映画以上の何か」を作ろうとした作品が「狂武蔵」だと思う。

途中で武蔵が小休止のあと「行くかぁ、どうせ死ぬんだし」と言ったのは自然に出てきた言葉でしょう。

既に当初の状態からズレてる赤いタスキ、全身から汗が噴き出てて脱水症状になりかけてるであろう身体の状態、相手の剣戟を1000回は受け止めて、且つ切り伏せ、駆けたことによる疲労、乳酸の蓄積、開始5分で折れたという指などの痛み………それでもまた映画として成立するような「殺し合い」をしなければならない………

そういう状態に至るまで・至った人間を1本のカメラで映し続ける所業。

その事の意味を私はおそらく完全に理解できていない。

以上


サポート頂いた分は主に資料収集に使用致します。