恋人の好きな動物は、アザラシ
キスをしながらたった一言「好き」と伝えるのもドキドキして、5分くらい要したりする。そうかと思えば惜しげもなく大胆になり、恥ずかしいことを言い合いながらセックスをしたりもする。
両極に揺れる感情に満たされる夜を過ごして眠り、起きたら素晴らしいサンドイッチと野菜スープが山のように作られていた。
よっしゃ今日もがんばれる。
2018年5月15日
花柄の服を着ていれば「花柄似合うね」とか、緑色の服を着ていれば「緑似合うね」とか、その都度褒めてくれるので、決してそうではないと解っているけれどまるで何でも似合う最強の人になった気分になる。
そういう恋人は、今日は珍しくスーツを着用している(友人の結婚式にお呼ばれして)。彼は365日ほぼボーダーなのでスーツを見慣れないけれど、なかなか似合っているよ。
新高円寺のネパール・インド料理屋さんで、信じられないほど美味しいビリヤニとチーズナンとマトンカレーと数種類の肉を、とても二人で食べる量ではないボリュームだったが、完食した(こんなに満腹なのは2年ぶりくらいかも、と恋人は言った)。
満腹を解消するため高円寺駅までお散歩し、歩きながら素敵なインテリアショップや古着屋さんも覗いて、思いがけず大好きな高円寺デートを楽しめてラッキーだった。
その間わたしたちはずっと笑っていた。美味しいと思うものと、可笑しいと思うことが似ていれば、あとは何も要らないくらい幸福だ(セックスも大切だが、愛と思いやりがあれば次第に気持ち良くなってゆくものだと思う)。
◆ ◆ ◆
わたしは自分のふくよかな下半身を気にしているのだけれど、恋人はそれを嫌がるどころか好もしいとさえ思っているらしく、わたしが眠っていると(だいたい裸で)、必ずお尻と太ももにキスをする。
昨日、友人の瀬戸物作家さんの個展に行った恋人は、サインを描いてもらう際に好きな動物の絵を入れるけど何がいいかと問われて、アザラシと答えたらしい。ああ、大変納得。
わたしの部屋のセミダブルのベッドは、ひとりで眠った方が大の字になれるし、鼾も聞こえないし、暑くないし、断然快適なはずなのに、不思議なことに恋人が隣で寝ている方が安心感からよく眠れる。
全く何故だかわからないし、不可思議すぎる。ベッドと恋人、グルとしか思えない。
2018年5月17日
愛し合えている人がいるのにも関わらず、昔の恋愛で傷つけたことや悲しませたことが、具体的な記憶というよりぼんやりとした影のような印象として忍び寄ってきて、どうしようもないほど悲しくなる時がある(もちろんわたしも傷付いたし、彼らは今幸せに暮らしているにも関わらず)。
一旦その影がやって来るとしばらく去らずに居座り続けるので、まったく心というものは不自由だ。そのような心の暗がりは、消えていった星の名残だと思う。
そう。漠然とした悲しみや虚しさは、宇宙の片隅で死んだ星たちの名残だ。そう考えることができるようになってほんとうに良かったと思っている。
物事は時に、救ってくれない真意よりも救ってくれる納得の方が大切だと思う。星のことを考えれば、落ち着きを取り戻すことができる。
正しいか間違っているかではなく、愛を抱いて力の限りに生きるしかない。何が正しかったのかなんて生きてみないとわからない。
ただし、安全か危険かはよく気をつけなければならない。間違えるなんてぜんぜん良いけれど、危険は良くない。取り返しのつかない人生になってしまうのは、あっという間だから。
(映画を観るならお腹の子のため穏やかな気持ちになれる作品を選ぶべきだというのに、最近何故だか、闇金、詐欺、あるいは摂食障害など、危険なテーマなものにばかり惹かれる。この世の中には、危険への落とし穴がなんてそこらじゅうにあることか。それらに想いを馳せるのは、胎教には良くないと思うけれど。)
2018年5月22日
恋人はベッドから立ち上がる時や戻った時など、移動の際に必ずわたしの身体のどこかにキスをする。
わたしも、恋人が料理をしているキッチンに入ったり出たりする時、彼の肩や背中にキスをする。
眠る前と玄関で見送る時は、唇にたくさんのキスをする。
これからもずっと、キスで溢れているといいなと願う。
なぜならキスは、 「あなたが好きです」 「あなたがとても大切ですよ」 「あなたを愛しています」が、集約された行動だから。
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