火傷の魔女と魔弾の射手 #7
「目撃者は生かしてはいけない……とか?」
魔女も即座に半身に構え、懐に手を入れる。
「違う」
青年は引き金を引く。撃鉄が雷管を強打し、爆発的な衝撃が弾丸を高速で射出する。弾丸は魔女の頭部の横を飛び去り、背後の炎を突き抜け、騎士の兜を貫通して頭部を吹き飛ばした。炎の向こうの怒号が混乱へと転じる。
青年は外套を翻し、腰のホルスターに銃を収める。円筒状の物体からピンを引き抜き投げると辺りが白煙に満たされる。
「時間稼ぎだ。来い」
差し伸べられた手を魔女は握る。
青年は魔女を抱き寄せると、もう片方の腕を聖堂の天井の梁へ向け、フックのついたワイヤーを射出する。フックが解けないことを確認すると、青年は魔女と共にワイヤーで天井に昇っていく。
天井に辿り着くとそばには天窓があり、青年は肘鉄で窓を叩き割る。
「先に行け」「言われなくても!」
魔女が天窓から屋根に出る。教会は高く建造されていて庭園に囲まれている。青年も続いて屋根の上に登った。逃げ道などどこにもない。
「屋根伝いに逃げるぞ」「ちょっと、どこにも逃げ道なんて、うわっ!?」
青年は魔女の腰を片手で掴み脇に抱え、走る。
屋根をぶち抜かんとするような猛然とした走りは速度を増していき、屋根の端が目前に迫っても一切減速しない。青年は教会の屋根の端を破壊しながら踏み切る。
高く遠く跳躍した。
未体験の浮遊感に魔女が狼狽え叫んでも青年は動じない。
青年が手に握られたスイッチを押すと教会に仕掛けられていた爆弾が連動し、聖堂の内部を爆炎に飲み込む。教会の屋根ごと吹き飛び破片が四散する。爆風を背に受けながら二人は眼下の屋根へと落ちていく。
青年は比較的高めの建物の壁に片腕を向け、ワイヤーフックを撃ち込む。フックを始点としてワイヤーが巨大な振り子のようにスイングし、勢いを殺しながら屋根の上へと軟着陸する。
魔女は屋根の上に降ろされる。背後を見ると先程までそこにいたはずの教会は巨大な炎に包まれていた。
その炎を見て、魔女は笑った。
【続く】
私は金の力で動く。