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好きだった人の残像を探すように、記憶を巡る旅をした




記憶が私を優しく包む。癒される。
どんなに後悔しても、あの人に会えるわけじゃない



「まだ仕事はいいんじゃない?」

カウンセリングの先生がそう言ってくれてから、お言葉に甘えてずいぶん長いこと一人で部屋にいた

最近は決まって、昔好きだった人のことを思い出してしまう

身体が老いに向かっていくのを肌で感じる今、あの人と一緒に今頃生きていられたら、どんなに心強かっただろうと

繰り返し繰り返し思い出しては、自己嫌悪に陥っている

どんなに後悔しても、あの頃には戻れない

どうしてもっとうまく生きれないんだろうって、後悔しては真っ暗な穴の中に落っこちて、凍えるような自己否定の中で怒ったり泣いたりひたすら焦ったりすることしかできないから、旅に出た

少しでもいいから、好きだった人の残像に触れたかった


優しいあの人のことをたくさん思い出して浸りきったあとは、繰り返し襲ってくる後悔と自己否定を終わらせなければいけない。いつまでもここにいることはできない。

2024/04/09

二人で手を繋いでこの道を歩いた
あれから12年の間
何千の、何万もの人が踏みしめたこの石畳の上
消えなかった私の記憶

夕方の日差しが切なく射しこむあのときの
記憶に残るあの街の面影を感じることはなかったよ
こちらに気を使いながら少し前を歩く背中を見てた

目の前にあるのは冷たい石畳
いろんな国からのたくさんの観光客が行き交う
あの時とは違う場所みたい

いつも夜遅くまで、眠そうな声で話してた
今度山に登ろうとか、そういう楽しそうな事、もっとたくさん話してみたかったな

桜が咲いている川沿いを歩く
今は一人で

違うものにならなきゃいけない
あの時とは違う自分に
ここにはいられないんだ

好きな人、どうか、しあわせでいて
この満開の桜の下で、笑っていて

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