アメリカン・フットボールを、まずは 楽しむルールの基本
アメリカン・フットボールのルールについては、やさしく解説してあるページがけっこうあるので(たとえば下のページ)、
私のページではそれは割愛しよう、と思っていたのだが、やはり自分の言葉で説明するのも大事。まずは細かなルールは気にせず、ゲームの流れを知り、ゲームを楽しめるくらいの解説をしてみることにする。
ゲームの流れを知ろう
アメリカン・フットボールのことをよくご存じでない方からすると、まず第一声が「ルールが難しい」となるようだ。
確かに、細かなルールは難しいしややこしい。しかも、大学とプロでルールが違うし、それが年ごとに改定されていったりする。こんなコラムを書いている私も、現役時代を含めて100%ルールを把握していたことなど一度もない。
どんなスポーツでもたぶんそうだが、ちょっとやそっと細かいルールはわからなくても、ゲームの流れをしっておけば、アメリカン・フットボールは十分楽しめるはずだ。
重要なことは3つだけ
ゲームの流れを知るために重要なことは3つだけ。この3つさえおさえれば、とりあえずの試合観戦を楽しめるのではないだろうか。
① 攻撃側と守備側は完全にわかれている。
② 10ヤードという距離が攻守のカギ。
③ 基本はランプレーとパスプレーの2種類。
では1つずつ解説しようと思うが、イメージがつかみやすいよう、だいたいの方はゲームの流れくらいはご存じであろう、野球とくらべてみることをこころがける。
① 攻撃側(オフェンス)と守備側(ディフェンス)は完全にわかれている
「アメリカン・フットボールは野球に似ている」というのは、アメリカン・フットボールを説明するとき私がよく使う言葉である。攻撃側(オフェンス)と守備側(ディフェンス)が完全にわかれている、というのがその理由だ。
サッカーやラグビーのように、ボールを相手にとられたからと言って、すぐに攻守が入れ替わるわけではない。野球と同じで、完全に攻撃と守備は分かれている。
ちなみに、アメリカン・フットボールの攻撃中ボールを相手にとられたら(インターセプトなど)、いったんプレーが止まり(時計も止まり)、しっかり攻守交替してから次のプレーが行われる。
② 10ヤードという距離が攻守のカギ
他の多くのスポーツ同様、アメリカン・フットボールも、基本はボールを前に進める陣取りゲームである。
ただし、陣取りのルールとして、「4回の攻撃で10ヤード進むと次の攻撃権が与えられる」というものがある。逆にいえば、「4回の攻撃で10ヤード進まなければ、その時点で攻守交替」となる。
ちなみに、10ヤードというのはよくアメリカン・フットボールのフィールドで目にする、白線で仕切られた2つ分の距離である。
また、ここでいう“攻撃”とは、プレーが開始されてボールを持った選手が倒されるかサイドラインに出るか(もしくはタッチダウンするか)するまでの一連のプレーをいう。
野球では3アウトで攻守交替となるが、アメリカン・フットボールの場合は4アウト(4thダウンという言葉を使う)で攻守交替となる、と覚えておくとよいかもしれない。
ただ、野球の場合はイニングの中でアウトカウントはリセットされないが、アメリカン・フットボールの場合は、4回の攻撃で10ヤード以上進めば、アウトカウント(ダウン数)がリセットされ、新たに1回目の攻撃権(1stダウン)が与えられる。それを繰り返し、相手のエンドゾーンへボールを運べばタッチダウンとなり得点となるわけだ。
ここで、“パント”についても説明する必要があるだろう。パントとは、オフェンスがボールを足で蹴って、相手の奥深くまで陣地を戻すことである。
アメリカン・フットボールでは、攻撃中にボールを故意に足で蹴る、というのは“攻撃権を放棄する”ことを意味する。
それではどんな状況でオフェンスは“パント”を選択するのか。
4回で10ヤード進めなければ攻撃権を相手に渡してしまうことはすでに述べた。この攻守交替は、その時点までに進んだ地点で行われる。
仮に、自陣で攻守交替となった場合、相手に有利なポジションで攻撃権を渡してしまうことになる。そのリスクを避けるため、相手に有利なポジションで4thダウンとなった場合、パントをすることにより、攻撃権を放棄する代わりに陣地を挽回しておく、という手段をとる、というわけだ。
③ 基本はランプレーとパスプレーの2種類
アメリカン・フットボールの攻撃プレーは、ランプレーとパスプレーの2種類、と覚えておいてまったく差し支えない。
野球でいえば、コツコツ当ててヒット狙いのバッターと、大振りでホームラン狙いのバッターがいる。この違いがランプレーとパスプレーの違いと思ってよいだろう。
ランプレーは、攻守ラインメン(最前列に居並ぶ屈強な選手たち)の中(時にはそれを避けて大回りすることもあるが・・・)に、ボールを持った選手(ランニングバック)が走って突っ込んでいくプレー。当然ディフェンスの選手は前に行かせないよう、タックルを仕掛けてくるわけなので、なかなか大きなゲインは難しい。
しかし、勢いをつけて突っ込んでいくぶん、後ろに押し戻されることはないし、ボールを相手にとられるリスクも少ない。確実に少ない距離でも前進しよう、というコンセプトだ。つまり、コツコツとヒット狙いのバッターと考えてよい。
ただ、ヒット狙いの鋭いスイングが2塁打とかホームランになったりするように、ランプレーでのロングゲインというのはアメリカン・フットボールで最もエキサイティングなプレーの一つでもある。
パスプレーは、成功すれば大きなゲインを期待できる反面、失敗すればゲインは無し、というプレーである。
ボールを一度空中に放つため、守備側の選手にボールを取られる(インターセプト)リスクもある。さらに、パスを投げるためにQB(クウォーターバック:ボールを投げる役目の選手)は一旦後ろに下がるため、もし投げる前にQBが守備側につかまってしまったら、大きな陣地のロスをすることになる。
野球でいえば、大振りで、三振かホームランか、というケースに相当するだろうか。
ランプレーかパスプレーか、というオフェンスの選択は、1stダウン更新までの残りヤード数(残り少なければランプレーで確実に稼ぐ、など)や試合の流れ、そのチームの特徴などいろいろな要素で決まるものであり、まさに戦略構築の第一歩となる。次のプレーがランかパスか、を予想しながら試合を観戦するだけで、野球で、「次のボールはどこに投げるか」「変化球かストレートか」を予想するより何倍もスリルのある観戦ができるはずだ。
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