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OFFICE TOSHIKI NASU/鍼灸師は頭の中で何を考えているか

はじめに

鍼灸師の仕事は何か。
想像できますか?

「ツボって所に鍼して灸をしてだよね?」

そんな声が聞こえてきそうですが。
実際には刺している、灸をしているだけではありません。

電話での声や話し方。
メールの内容。
来院されてからの動き。

そこからの目や動きをみて精神的な働きを読み取り、顔色、姿勢、呼吸をみています。さらに皮膚の色艶や肌理、出物をみて、言葉や匂いから情報を集めます。

それと同時に脈やお腹に触れ。
頭の中では、発病の仕組みを分析、施術方針の決定、個人差に合わせてツボを選択、鍼やお灸の操作の選択などをします。

鍼を刺している時は微細な情報を読み解き、刺入深度やスピードなどを調整したり、灸では熱の入り方を観察し、同時に患者さんの様子や呼吸を感じ取るのです。

つまり鍼は刺すだけではなく刺すと同時にいま起きていることを情報処理しながら手を動かしています。

鍼灸治療中の意識の置き方

学生時代の練習を思い出すと。
あれは治療とは言えないものです。

なぜなら読み取る(入力)ことより表現すること(出力)に意識があったから。

「痛いかな」「ここで合っているかな」「良くなったでしょ?」。
そんなことばかり考えていました。

これが年数経つと同時にできるようになる。
と言ったらそんなに簡単なことではなく。

日本には多くの鍼灸の流派があるのですが、どこにも所属しない人もいます。

本の中では「学校鍼灸」という一大派閥が存在する・・・と紹介されていますが、実際には国家試験までの3年間で必要な単位を取り、その間に実技が行われる程度です。

そして晴れて国家試験に合格をすれば「はり師・きゅう師免許」を取得。
その鍼灸師が年間に5000人輩出されています。

学校鍼灸という一大派閥とはいえ、実際に人に触れるレベルが高いという人はそう多くもなくて、教員課程に進んだ時に1つ型をもっている人や流派に所属している人はいませんでした。

殆どが卒業後に学び直すのです。

鍼灸は70%は何らかの効果がある

教員課程で学んだことの1つに印象的な言葉。
それは鍼灸は平均的に70%は効く。
名人と言われている人は74%効く。

つまり鍼灸は初学者でも効果が出せるということ。
けれどこの4%を求めて努力が必要です。

実際に20年近くやってきて思うことは、鍼と灸は皆さんが思っているよりも効果があります。小学生がやっても、中学生がやっても効果は出せると思います。ただビギナーズラックもあるでしょう。

その結果の率を少しでも高めるために専門的な知識や技術が必要になるのだと思います。

伝統的な技芸、技術を修得するために経験者の下に就き、そこで東洋の身体感や哲学を身につける。

「鍼灸はツボに何かをする」
そう思っていた方もいることでしょう。

しかし、頭の中では常に情報処理が行われています。
そして目の前の人が良くなるために意識を集中させて、病、人、すべてと向かい合っています。

以前、SNSを見ていて「プロとアマチュアに差はない」と発信している方がいました。お金をもらったらそんな差はないと。

私はその考えに同意できず、プロとアマチュアの差は道があるかないかだと思います。

先日もお菓子による食中毒被害が出ました。
お菓子のレシピはネットを調べれば沢山出てきます。
誰でも今日からお菓子職人と名乗ることができます。

写真撮影が好きな方はフォトグラファーを名乗れます。
料理好きは料理研究家、絵を描くことが好きな人はイラストレーター、人に触れることが好きな人は整体師と言える時代です。

それど、そこに責任があるかないかという問題が出てきます。

ある時、患者さんからこのような話を聞きました。
それは「プロがいなくなって素人が増えた」ということ。

私たちの仕事は鍼を刺すこと、灸をおこなうことが仕事ではなく、患者さんが求めている形に最短距離で導いてあげることだと思います。

私たちはこの1分(いちぶ)に必死になって頭を使います。
鍼灸師は頭の中で何を考えているか。
それはあなたの未来の創造です。

私は頭の中で、目の前にいる人の体調や病歴、すべての情報をもとにリスクマネージメントをおこない、鍼灸の施術をおこないます。

それは当たり前のことですが、74%をさらに高めるための努力です。

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