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派遣社員なるがまま~夢って、寝れば見る。その夢ですか~


#スキしてみて

ヘルメットを洗っていた。
アルコールでゆっくり、丁寧に時間をかけながら・・・。
今日でこの現場も終わりだ。
事務の尾崎が、朝礼でみんなに告知した。井沼のおっさんと俺が本日で終了な事を・・・。

「おいっ、これまっすぐかどうか見てくれ!」とその井沼のおっさんが垂れ幕状につくった用紙の線を確認しろという。
「よくわかんないっす」正直な返答をした。
「そこで見て、何が解るか? こっちに来て、まっすぐ線をみてくれよ」と強く言った。
他の作業員達もその声に驚いていた。

(ちっ、めんどくさ)

「はいはい・・・」言われるがままに縦の線を見る。やはり、わからない。ここは、適当に答えとく。
「まっすぐすよっ!」
「あいたた・・・。聞くんじゃなかった・・・。どこが真っ直ぐなんだよ・・・。お前の根性と同じだ」
「なんすかっ?」
「聞こえんのか? 耳もわるいのぉ・・・ったく」
「オッサン、今、なんて言いました?」

「いい加減にしろっ!」東間所長の声が聞こえる。井沼、垂れ幕状の紙を持ち上げ、その場を離れる。

コインランドリーの洗濯機の時間を確認した。
あと、5分だ。座って待つことにした。
ケンタッキーフライドチキンのクーポンメニューを検索していた。

寒い風と共に、コインランドリーの引き戸があいた。見る。
「あら、来週から空調設備の施工管理の鳴賀さん」井沼だ。同じように返却の作業着を洗いに来たみたいだ。
「できるのか? 空調設備の施工管理なんて」といいながら、煙草に火をつける井沼。
「できるかどうかわからんけど・・・派遣の営業が薦めるから・・・行くんであって」
「なんでもかんでも、おんぶにだっこだな・・・」
「仕方ないじゃないですか・・・。派遣なんだから・・・」
「手に職と言っても・・・。なんだなぁ・・・。あれだ。職業訓練校でも行く気はないのか?」
「なんすか? それ?」
「知らんのか? ハローワークで申し込みやってるやつだ」
「知らないっす」
「お前、将来像はどうなんだ?」
「将来なんて・・・何も考えないです」
「夢はないのか?」
「夢? 寝れば見ますよ」
「あほだな・・・お前」



そうだよ。あほだよ♪


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