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ハーブティーのお話 その9 不思議なご縁の1

もう10年前にもなるお話。

その頃、頻繁に訪れてくる一人の男性がいた。

ある時、「こちらでもハーブを栽培しているんですか?」と

話しかけられ

「あぁー農園はこちらですよ」と店内から見える場所へ案内すると

「ボク、農業はじめたんですよ。渋谷生まれで渋谷で育ったんですけど

これからの時代農業だと思って・・・」

サーファーみたいな風貌でちょっと農業とは縁遠そうだなと感じた。

「友達みんなどうせ続かないからやめとけって言うんすけど

絶対3年はやって成功してやると思って。

こっちに畑があって、そこで野菜作って東京で売るんですよー

いま取引しているレストランは高級なとこばっかりっすよ

ボクの野菜見てみます?」と誘われるまま

駐車場に行くと

真っ白なBMWのトランクいっぱいに人参が積まれていた。

「BMWで運んでるんですかぁ・・スゴイですね」

「そう、ここまま都内のレストランぐるっと廻ると

これ全部売れちゃうんですよ」

今でこそ新規就農や地産地消は一般的になってきたけれど

当時はかなり珍しく、こんな新しい感覚の人が

出てきたんだなと思っていた。

帰り際に

「今度、新しいレストランのシェフ連れてきますよ」と

言い残してお帰りになった。

しばらくして、そんな話も忘れかけた頃

例の真っ白なBMWがやってきた。

一緒に来た新しいレストランのシェフと名刺を交換して

一通り農園とハーブの説明をしたあと

この農園で採れたハーブで作った”空”というブレンドティーを

淹れて差し上げた。

新しいレストランのシェフは

カップを両手で包み込むように持ち大事そうに口に運ぶ。

目をつぶり、神経を集中させ、深く味わっていた。

そんな飲み方をする人は、それまで見たことがなかったから

今でも強く印象に残っている。

「ごちそうさまでした。またご連絡します。」

お帰りになった後

頂いた名刺を見直してみる

「サイダブリア 生江史伸」

これが後に

2ツ星レストラン レフェルヴェソンスとなる

生江シェフとの出会いだった。




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