骨盤剥離骨折の治療について(10代のスポーツ外傷)
中高生のスポーツ障害?で稀に出会う骨盤剥離骨折で、最もよくあるパターンは、ダッシュ・ジャンプ・シュートのあとから足の付け根・股関節付近がすごく痛いという病歴です。13歳~16歳くらいが大半を占めます。
大半は保存治療で手術を受けることは少ないですが、過去の研究ではどうなっているかをまとめた論文です。
Operative versus conservative treatment ofapophyseal avulsion fractures of the pelvisin the adolescents: a systematical reviewwith meta-analysis of clinical outcome andreturn to sports
BMC Musculoskelet Disord. 2017 Apr 19;18(1):162. doi: 10.1186/s12891-017-1527-z.
【概要】
この論文は2016年までの剥離骨折で臨床的改善とスポーツへの復帰を報告した研究を系統的調査し、最終的に14個の論文を解析して、保存治療と外科治療のアウトカムをまとめました。
Patinets 対象者
骨盤剥離骨折を発症した596名
平均年齢14.3歳(12.5~16.0歳)、男性75.5%
下記Table 1に抽出された14の研究の概要が記載されていますが、研究ごとの人数や手術・保存治療の比率などに差が大きいことが分かります。
部位
下前腸骨棘33.2% (AIIS, anteriorinferior iliac spine)
坐骨結節 29.7% (IT, ischial tuberosity)
上前腸骨棘27.9% (ASIS, anterior superior iliacspine)
腸骨稜 6.7% (IC, iliac crest)
小転子 1.8% ( LT, lesser trochanter)
下記の図が骨盤剥離骨折を生じる可能性がある部位です。
Intervention 外科治療 52名
手術はスクリューが76%、K-wireが15%、プレート固定が9%であった。
術後平均4.5週で全体重荷重
スポーツを含めた日常生活は術後平均2.4カ月で許可された
Comparison 保存治療 544名
部分的免荷(松葉杖を用いるなど)は、0~3週間
全体重荷重は平均4.9週間後から(3~6週間後の範囲)
平均3.1カ月でスポーツを含めた日常生活へ復帰
Outcome 結果
① 臨床的予後
外科治療を受けた群は受傷前の生活、スポーツへ復帰できた割合が88%で、保存治療群の79%と比較して良い傾向があった。
特に15㎜以上の転位がある症例では外科治療でスポーツへの復帰率は84%、保存治療群で50%で有意差を認めた。
② スポーツへの復帰率
追跡期間終了時点で全体のスポーツへの復帰率は86%であった。
外科治療群で92%と保存治療群の80%と比較して有意に良い結果であった。
また、復帰までの期間も外科治療群で12.6週、保存治療群で17週と外科治療群で早かった。
③ 合併症
合併症は全体で17%、保存治療群で17%、外科治療群で19%と有意な差は認めなかった。偽関節は外科治療で0%、保存治療群で2.4%、異所性骨化は外科治療の8.2%、保存治療の2.4%で生じた。神経学的合併症は両群とも約2%であった。
結論
このメタアナリシスの結果から、スポーツへの復帰率は手術群で良い結果でした。特に15㎜以上の転位がある場合には手術治療を考慮するべきである。
個人的感想 冒頭の通り骨盤剥離骨折は、大部分が保存治療ですが、転位が大きい場合は外科治療が適応になることがあるために、安易に鎮痛薬と松葉杖、安静だけで経過をみないようきちんと整形外科に紹介する必要があると改めて勉強しました。
骨盤剥離骨折は診断が難しいために、単純写真で遊離骨片がない場合でも、スポーツ後の股関節・下肢・下腹部の痛みにはCTやMRI、超音波などの検査を追加する必要があります。
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