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脳梗塞と脳動脈瘤が併存する場合は抗血小板薬を継続すべきなのか?

非ランダム化の観察研究でアスピリンは未破裂脳動脈瘤の破裂リスクを下げることと関係があった。

Safety of aspirin use in patients with stroke and small unruptured aneurysms
Neurology 2020 Oct 14; [e-pub]. (https://doi.org/10.1212/WNL.0000000000010997)


【背景】
数多くのMRIを撮像すると必ず出会う未破裂動脈瘤ですが、抗血小板薬を内服している方がこのまま継続した方がよいか質問を受けたことはありませんか?破裂リスクを上げないと断言できますか?それに答えてくれるひとつの論文がこちら。

【概要】
 1866人の7㎜未満の未破裂動脈瘤+虚血性脳血管障害(症候性、無症候性)の方を対象にした多施設前向きコホート研究です。対象者の中でアスピリン内服者と内服していない方に分けて、その後の動脈瘤の破裂に差が生じるかを追跡しました。

 虚血性脳血管障害は症候性の(一過性脳虚血発作+脳卒中)と無症候性(偶然画像検査でラクナ梗塞が見つかった症例など)に分かれます。

 除外基準は下記の通りです。破裂リスクが高い動脈瘤を除外していることが重要です。
・脳動脈瘤破裂の既往
・家族歴がある脳動脈瘤
・悪性腫瘍
・重度の機能障害
・Daughter sac(動脈瘤表面の不正な突出) , fusiform(紡錘形) の動脈瘤


【結果】
 1866人のうち最終的に1730人で解析を行いました。
 試験参加者の平均追跡期間は31カ月でした。
 アスピリン内服者は643人(37.2%)です。
 
全体の動脈瘤破裂は12例 0.7%で
 アスピリン内服群   1例    11人/10000人年
 アスピリン非内服群 11例   39人/10000人年
 とアスピリン内服群で少なかった。

 虚血イベントはアスピリンを用いている群の中でも症候性ICVDグループで有意に少なかったが、無症候性ICVDグループではその傾向は認めなかった

 下記図は(A)がアスピリン内服群と非内服群を比較して脳動脈瘤破裂の累積発生率を見たものです。アスピリン内服群で少ないことが分かります。(B)が症候性の虚血性脳血管障害がある人のみで比較したものです。脳動脈瘤破裂の差がより明確になっています。(C)は無症候性の虚血性脳血管障害がある人のみで比較したものです。無症候性の場合は、アスピリンを内服していても、内服していなくてもあまり差がありません。

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 多変量解析では血圧の管理が悪い場合や動脈瘤の大きさが5-7㎜で動脈瘤破裂の割合が多く、アスピリン内服していると動脈瘤破裂が少ないことと関連があった。(下記表のAneurysm size 5 to <7mmとuncontroled hypertensionの部分で有意差が確認できます。)

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 本試験の脳動脈瘤破裂以外の脳卒中の発生件数を見たものが下の表です。脳動脈瘤破裂以外にも脳梗塞、脳出血も少ない傾向でした。

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【結論と個人的感想】
 7㎜未満の動脈瘤と虚血性脳血管障害がある場合には、アスピリンを継続しても動脈瘤破裂が増えないことが分かった。(むしろ少ない傾向)
 脳梗塞の既往があって抗血小板薬を用いている方で脳動脈瘤も見つかった場合でも抗血小板薬をやめる必要はない、という結果になると思います。




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