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鼻出血に対するトラネキサム酸の効果は…

【はじめに】

トラネキサム酸は重症外傷性出血、外傷性脳損傷に対して死亡率を改善させる研究結果が出て、出血なら原疾患に関わらずトラネキサム酸!が投与されるケースもあるかもしれません。

今回は鼻出血に対して、どのような効果が期待できるかを評価した論文をみてみました。

The Use of Tranexamic Acid to Reduce the Need for Nasal Packing in Epistaxis (NoPAC): Randomized Controlled Trial
Ann Emerg Med. 2021. PMID: 33612282

【概要】

 鼻出血に対する鼻腔内投与のトラネキサム酸で鼻腔内パッキングの必要性を減らすことができるか?2017年~2019年にイギリス26の救急部門で行った二重盲検のプラセボ比較、ランダム化試験です。

Participants 対象者
 特発性鼻出血で、初期治療や血管収縮薬の外用を用いても持続する症例

参加者の背景はTabel1で示しています。参加者平均年齢は約70歳、高血圧と抗凝固薬を内服している方がそれぞれ60%ほどいます。

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Intervention 介入群
 トラネキサム酸の鼻腔内投与
 投与方法は10%のトランサミン液(100mg/ml)、2mlを綿球にしみこませて鼻腔内に挿入して鼻クリップ固定し、10分間放置した。(鼻翼を摘まんで固定する感じでしょう。)その後、再発したときは同様の処置をもう一度行いました。

Comparison 対照群
 プラセボ(生理食塩液)
 生理食塩液を用いて介入群と同じ処置を行いました。

Outcome 評価項目
 主要評価項目は救急外来受診時に前鼻部ガーゼパッキングを必要としたかどうか。副次評価項目は入院、輸血、鼻出血の再発、血栓症などです。

Result 結果
 496人が試験に参加し、254人がトラネキサム酸群、242人がプラセボ群に割り当てられました。前鼻部パッキングを要した症例はトラネキサム酸群の42.5%、プラセボ群群の41.3%で有意差は認めなかった。その他の副次評価項目も差がありません。

下記 Tabel2で、鼻出血に対して前鼻部パッキング(ガーゼを鼻腔内につめこむ処置)を必要とした割合を示していますが、有意差はみとめません。

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個人的感想
 トラネキサム酸液を染み込ませた綿球を詰めただけでは、止血効果を追加することはできなかった。これは外用の話なので、点滴静注で差が出るかを見る試験で確認するのもありかもしれません。


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