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心房細動のスクリーニングは発見率改善に貢献するか?

アップルウォッチで心電図が見れるようになったこともあり、心電図がより個人に近い存在になったことは間違いありません。
心房細動は不整脈の中でもよく見つかるものですが、適切に治療しないと脳梗塞などの合併症を引き起こすこともあるため重要な不整脈です。

アップルウォッチネタではありませんが、不整脈をスクリーニングすることで新規の心房細動を発見できるかを見た論文です。

元論文は
Opportunistic screening versus usual care for detection of atrialfibrillation in primary care: cluster randomised controlled trial
BMJ2020;370:m3208 | doi: 10.1136/bmj.m3208(Published: 16 September 2020)
です。

【概要】
 心房細動は有症状時や脳塞栓後に指摘されることが多いですが、スクリーニングによって新規診断率を改善できるのかをみた論文です。注意点は主要アウトカムが心房細動の新規診断率であって、脳塞栓や心不全の入院、死亡などではないところでしょう。

 対象者は65歳以上で心房細動の既往が無い人です。

 この研究は施設ごとにある時点で心房細動のスクリーニングを行う施設と通常診療を行う施設にランダムに割り付けています。(Cluster randomised controlled trial) 1施設につき200名の症例を登録しており、スクリーニング群で47施設(約9400人)、通常ケア群で49施設(約9800人)が参加しました。

下記図は研究参加者のフローチャートで、Intention-to-screen practices側がスクリーニングを追加された参加者です。

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 スクリーニング内容は①橈骨動脈の脈拍、②脈波を確認できる血圧計による評価、③心電計です。通常ケアは眩暈、呼吸苦、耐運動能低下、胸痛、動悸、失神などの有症状時の心電図を評価しています。
 この研究は1年間追跡しており、スクリーニング群でも通常ケア群同様に上記の症状があった場合には心電図評価を行っています。要するにスクリーニングでは単純に1度無症状時に検査を追加されているだけにすぎません。ですので、介入群はスクリーニング追加群という表記が適切でしょう。

【結果】
スクリーニング群に8874人、通常ケア群9102人に割り当てられました。
但し、スクリーニング群で実際にスクリーニングを受けた人は4106人でした。Intention to screen分析での心房細動発生率はスクリーニング群で1.62%(144/8824)、通常ケア群で1.53%(132/9102)でした。
Pre protocol分析での心房細動発生率はスクリーニング群で1.18%(48/4085)でした。この内訳は、スクリーニング時点で30人、通常ケア中(有症状時)に診断した人が18人です。

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【個人的感想】
 一言でまとめるとスクリーニングの意味はあまりない?ということになるのでしょうか。もしくは有症状に確認すれば十分チェックできるという見方もできるでしょう。但し、あくまでこの論文は新規の心房細動を見ているだけですので、長期の脳塞栓発症や死亡などの重要なアウトカムもみたいところです。
 脈や心音で多くの不整脈、循環動態の概要が把握できるので有症状時の診察が大事だと思います。


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