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低用量エドキサバン(リクシアナ)でも脳梗塞は減らすことができる

Low-Dose Edoxaban in Very Elderly Patients with Atrial Fibrillation
August 30,2020, at NEJM.
DOI: 10.1056/NEJMoa2012883

【概要】
多くの先生方が取り上げるだろう高齢者心房細動に対する超?低用量エドキサバン(リクシアナ)の脳卒中予防効果をみた論文です。日経メディカルにも概要があるので、少し違う視点を記載します。

 元々腎機能低下例におけるDVT予防時でエドキサバン15㎎を用いることがあるために、効果が出て当然という意見もあるかもしれませんが、比較的抗凝固療法を導入しにくい患者層を対象にした研究として意義があると思います。
 添付文章では『非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制、静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制』において、クレアチニンクリアランス15~30の場合、『有効性及び安全性は確立していないので、本剤投与の適否を慎重に判断すること。投与する場合は30mgを1日1回経口投与すること。』ですので、慎重な判断でエドキサバン30㎎投与をやろうと思えばできるのですが、今回15㎎で安全性と有効性を確認しました、という意味と捉えています。

Inclusion creteriaは
① 非弁膜症性の心房細動でCHADS2スコア≧2点の80歳以上の日本人です。
② 抗凝固療法(ワルファリン・ダビガトラン・アピキサバン・エドキサバン)を保険適応量を用いることができない。
③ 下記の出血リスクを最低1個以上満たす
(ア) eGFR 15~30
(イ) 既往に頭蓋内出血、眼内出血、消化管出血
(ウ) 体重45㎏未満
(エ) NSAIDSを長期間用いている
(オ) 抗血小板薬を内服している

984名の患者を492人をエドキサバン15㎎、492人をプラセボ群にランダムに割り付けた。(しかし、最終的に解析できたのはエドキサバン群341人、プラセボ群40人です。)

患者背景は年齢は86歳、持続性心房細動47%、CHADS2スコア平均3.1点であった。
Frail categoryをつけていますが、参考文献とSupplementary Appendixを見てもFiredらのフレイルの基準にたどり着かないのは、闇を感じました。
とりあえず、Firedらのフレイルの基準(体重減少、主観的疲労感、日常生活活動量の減少、身体能力の減弱、筋力(握力)低下のいずれもない、健常状態が55%でした。3つ以上該当するフレイルが41%です。
主要アウトカムは脳卒中と全身性塞栓症です。


【結果】
脳卒中または全身性塞栓症はエドキサバン群で2.3%、プラセボ群で6.7%で有意差(95%CI 0.19-0.61、P<0.001)を認めていますが、この主な要因は脳梗塞の予防です。全身の塞栓症はエドキサバンで0.4%、プラセボ群で0.9(95%CI 0.13-2.01)でした。

出血合併症は頭蓋内出血が6例(エドキサバン群2例、プラセボ群4例)、消化管出血が19例(エドキサバン群14例、プラセボ群5例)、などエドキサバン群でやや多い傾向である。

全死亡は両群で有意な差を認めなかった。

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【個人的感想】
超高齢者で腎機能障害や本来抗凝固療法が導入しにくい背景の人でも超低用量のエドキサバン(15㎎/day)で脳梗塞発症を押さることができる根拠になったと思います。

しかし全死亡が変わらないことから、本研究者の対象である80歳以上で抗凝固療法が導入しにくい背景の人に残りの人生10年前後、抗凝固療法を全員導入すべきかというと、ADLが良い方で無いと恩恵は少ないのかなとも感じました。全死亡は変えていませんので。




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