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偶数議会の方必読……二元代表制が引き起こす政治的混乱/議員の成り手不足解消への試論その2

その1の続きです。

今回は二元代表制のどこに限界を感じてこんな試論を始めたのかについて書いてみます。

下川町議会議員として2期目に突入した時、私は自ら志願して議会運営委員長になりました。とても活発な議会になったこともあり、議員のバイブルとも言える『議員必携』を隅から隅まで読み漁りました。

その結果、あることに気づいてしまいました。

議長は議場で議案の賛否を決める採決に加われないため(例外はあります)、定数が偶数の議会で議長を含まない半数が結託すれば、下川町議会を例にして言うと、議員数8人の議会で議長を含まない4人が結託すれば、制度的には議会を牛耳ることができてしまうのです。

*ここでは実際の下川町議会がどうであったかという事実とは切り離し、理論的な考察をしています。

議会の代表者たる議長を含まず、さらに、もしその4人の得票数の合計が半数以下であったとしたら、それは町民の声を反映していると言えるのでしょうか?

そうなると、自分の派閥から議長を出すと不利になるため議長を出さない方がいいとなり、議長の権威が低下します。

当時、こんなことが本当にありうるのかと検索したところ、そうした事態を想定して少数派から議長を選ぶことが慣例となっている議会があり、とても驚きました。

さらに、議員数が偶数の議会でもし議長を決める前に派閥が半数で割れていたら、議長を決めれず議会が空転してしまうことが理論的には考えられます。

今回この記事を書くにあたり改めて検索したところ、危惧していたことが机上の空論ではなく実際に起きていました。

議員数が偶数に起因する問題自体は、議員定数を奇数にすることで予防できますが、私がここで提示したいのは

首長選挙で大筋の政治的決着がついているにも関わらず、議員選挙の結果によっては政治的混乱が最長4年間続く可能性がある

という二元代表制の矛盾です。

そして、こうした政治的混乱は小規模自治体の少数(特に偶数)議会で生じやすいと感じています。

政治に限ったことではありませんが、物事を判断するときには情と理のバランスが大切です。小規模自治体では住民・行政・議会の距離が近いため声が届きやすく、それはメリットでもある一方で、積年の感情のもつれを政治的な判断にもちこみがちです。

また、小規模自治体の多くは農山漁村であり、自らの肉体を使って生業を営んできたためか、学術的な知識や理論を軽視する人もいて、総じて合理的な判断より情緒的な判断に流れる傾向にあるのではないでしょうか。

現行の二元代表制がこの傾向に拍車をかけ、各地で政治的混乱とその結果の政治不信を引き起こし、あるいはその反動としての事なかれ主義と政治的無関心につながり、議員の成り手不足として顕在化しているというのが私の仮説です。

二元代表制という制度・システムの問題であるならば、制度・システムを変更すればいい。そこで試案の起点になったのが、スウェーデンのコミューンで採用している議院内閣制だったというわけです。

議院内閣制になれば、住民が選ぶのは議員のみで、住民に選ばれた議員の中から互選で首長を決めるるため、その時点で多数派が決着します。よって任期中に政治的混乱が起きる可能性は低く、安定した行政運営が可能になります。

逆に、議員選挙の段階でしっかり見極めておかなければならないわけですから、政治的関心も高まり、議員の成り手の発掘・育成にも力が入るのではないでしょうか。もちろん現行制度と同様、議員報酬・定数のあり方については議論が必要です。

ただ、議院内閣制への移行は憲法改正が必要で、憲法第8章の地方自治の改正に関しては議論が活発とは言えず、The Long And Winding Road なのが現状でしょう。

というわけで、次は現行制度でもできる改善策について思案をめぐらせてみようと思います。

追記:その3を書きました。


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