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なぜ「Cornelius」の「夢中夢 -Dream In Dreame-」はこんなにも美しく、ソウルを感じる作品なのか。

はじめに

昨年リリースされたこの作品について当時の僕はXでこう書いた。

コーネリアスの音楽って、ただただ音が磨き抜かれてて、その曲や音の造形美を愛でる感覚でしたが、今作はすごくソウルを感じる。今までの延長線上にあるけど行き着いた地点は全然違う場所。 とてもいい。

僕のX

これを書いてからも何回も聴いたし、今回の待ちに待ったアナログ盤の発売ということでもうちょっと膨らまして書きたいなと思いました。

騒動やこれまでの作品との関連性

今回の作品がなぜソウルを感じさせるのか。
殆どの人は東京オリンピックの時の騒動があって、落ち込んで、謹慎してってのを経たからでしょと思ってるはずです。
もちろんその経験が関係無いはずはないですが、そもそも騒動前からそういったモードになっていた事は作品を聴いていた人からすれば明らかです。

前作の「Mellow Waves」でその兆候は表れていました。
ただ前作の印象としてはソウルを感じさせることは無かったです。
「point」や「SENSUOUS」とは違ったより歌モノポップスへの接近とは思いましたが、作詞の多くを坂本慎太郎にお願いしていたというのと、本人作詞の曲でもパーソナリティが出ているかというとそうでもなく、今までの延長線上のかんじだったからだと思います。
別に「Mellow Waves」が駄作という気は全然なくて、坂本慎太郎との共作はお互いの世界観が綺麗にマリアージュされていて不思議な質感や温度感になっていてどちらもファンな僕としては大好きです。
味わいが違うってだけです。

作品について

歌詞

今作は1曲目とインスト以外は本人の作詞。
歌詞の書き方も歌唱する事と音としての響きの両方を満たす事を念頭においたと思われる作詞になっています。
ただ、自分の作詞スタイルを全く変えて作詞しているかというとそういうわけではなく、あくまでも平熱な言葉選びというか坂本慎太郎に確実に影響を受けてそうなのに、Cornelius自身のオリジナルな歌詞として昇華されているのがとても素晴らしいなと思います。
イメージを膨らませる単語の並びはそのままに、ストーリーを感じさせる歌詞も入っているのでより入ってきやすいです。

また、騒動前に作られた曲は騒動後に書かれたように思える歌詞が結構あるのがとても興味深いです。
人生50年も生きていたら悲喜交々で喜怒哀楽で山あり谷ありです。
そんなこんなが現実とリンクする不思議。
逆に騒動後に作られた曲の方(無常の世界以外)が現実感が薄目というか、時間軸がぼやけているというか現実を意識しながらのある種の達観の境地にいってしまった感があります。

「環境と心理」と「無常の世界」でわかるサウンドの特異性。

今作のキーとなる曲は「環境と心理」と「無常の世界」だと思います。
今作のアルバムのソウルを感じさせるという部分はこの2曲がほぼ担っていると言っても過言ではないです。
この2曲はどの国のどの世代のどんなアーティストにも同じようなトーンの楽曲が無いと思われるすごい曲だなと思います。

Corneliusのサウンドには独特の手触りと言うか温度感があると思います。
特にMellow Waves以降は透徹した音なのに、すごい冷たいわけでも熱いわけでもなく、かといって温くもないけど人肌というには冷たすぎるような温度感だと思うのです。
決して形として四角いとは思わないけど丸いのかと聴かれたら違うし、固いか柔らかいで言えば柔らかいと思うけど、ドロドロではないし、ボヨンボヨンではないし・・・・。
形として存在していて認知できるけどこんな形とはっきり言い表せない不思議な感覚を音で表現してるような感じだから余計ボンヤリ。

自分の声を把握した歌唱の素晴らしさ

ここに本人の歌唱が乗ると人肌よりわずかに温かいぐらいの温度感になっているのが絶妙で凄いと思います。
前作はやはり本人の歌詞ではないという所で温度が人肌より少し冷たいぐらいになっていたと思います。
それはそれで独特な感触でとても良かったのですが、語弊を恐れずにいってしまえば言葉が音っぽく聴こえる事になっていたと思います。
しかし、本人作詞多数の今作は自分の思いを自分の言葉と声で歌うわけですから体重が乗っているというか温度感が違います。

今作では歌唱が冷たいわけでもないし、熱くもない。平熱から平熱のちょっと上だけど微熱にはならないぐらいの感じでずーっと微妙に上下しています。
聴きようによっては平坦に聴こえてもおかしくないのに、バックの音と合わさった時にビタっとフィットして高揚感が出てきます。
めちゃくちゃボーカルの録りに時間をかけたんじゃないかなと思います。
音程とかの話じゃなく、声の質感や微妙なニュアンスの入れ具合への拘りが物凄いなと感じました。
自分の歌声を音として捉えてきた人ならではのディレクションなんじゃないかなと推察できます。

実は個性がすごくあるギターサウンド

あと、どちらの曲もギターの音がCorneliusのギターの音だなって思えてステキです。ギターの音色は平熱じゃなくて、ちょっと熱くてギターの音で心のボルテージが上がります。

実はというのも失礼ですがCorneliusって国内有数のギタリストなんじゃないかと思ってます。フレーズとか音のコントロールが素晴らしいですよね。
火花の曲の合間に入るガッていう音とかディレイのかかったジャーンとか雄弁に語ってるなぁって思います。
ロングトーンの音なんかシューゲぽいし、エモい音作りで静かに熱くなれますよね。

まとめ

このままだとダラダラ色々な事書いて纏まらなそうなのでこのへんで。
言いたいことは

・歌詞が今までの作品よりも入ってきやすくてパーソナリティを感じれる。
・「環境と心理」と「無常の世界」は唯一無二。
・特別熱いことしてないのに凄くソウルを感じる。
・ボーカルが素晴らしい。
・ギタリストとしても最高。

Cornelius初心者の方にも聴きやすいのでとてもオススメです。
特に僕が取り上げた2曲はすごく良い曲で色んな感情を想起させます。
PVもカッコイイです。環境と心理はmetafiveの方を観れば良いと思います。
そして、できれば曲順通りに1回は聴いてほしいなと思います。
やっぱり練られた曲順だと思うのでその通りに聴くのがストーリーを感じれてとても美しく感じれると思います。

おしまい。

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