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【音源研究】さらし幻想曲/中能島欣一(1章/3)

さらし幻想曲/中能島欣一

当曲は作曲者本人のCD音源がYouTubeMusicにUPされています。

よく聞くと、公刊五線譜とはやや違うところが多々あります。
これは邦楽曲にはままあることですが、音源を正とした三味線(三弦)の運指等の研究結果をここに記します。
参考になれば幸いです。

大前提

楽譜を持っている方は手元で見ながら読んでいただけると幸いです。

調弦はDGDの本調子です。

曲を通して、次のツボへ先移動する「洒落ウチ」という技法が常時使用されています。
洒落打ちとは、長唄三味線の技法で、次音に運指する際に手癖のようにウチを入れることです。そのため、スリやウチの音があちこちで発生し、音数が増えて聞こえます。

例えば三弦冒頭の
ラ ラシ△ラシ△
四 四三・四三・
は休符・の時に次に弾くラに紅指をウチのように置いています。なので
四 四三ウ四三ウ
と聞こえます。
(一般の古典の四=中指と違い、四=紅指の指定があります。イ四・4も同様。)

また、
ミ ラ
3 7

ラ ド
7 9
など、ツボが大きく飛ぶ際は顕著にスリの音が聞こえます。これはウチではないのですが、ウチと同様に運指する際に行っているので、洒落ウチに含まれるのではないかと思います。

第1章

1⃣(以降、練習番号)

  • 箏が
    レソラ# レソラ# と繰り返しますが、
    ここではまだ加速し(ノリ)ません。

  • 軽めに三弦が入ります。
    前述したように冒頭から洒落ウチが炸裂しています。
    ラ ラシ△ラシ△
    四 四三ウ四三ウ

  • ③(以降、小節番号)
    accel.が書いてありますが、5・6小節目で三味線が
    レソラ と弾き、繰り返すあたりで自然とノっていきます。

  • 三 四 1 3c7
    3 7に飛ぶときスリ。

  • 2⃣の前、pになるところでやや拍感たっぷり目で弾きます。

2⃣

  • 尺八が入り、6小節目シファソハ シファソミを受けるように
      ・ ・ ・ ・
    3 Λ Λ Λ Λ ケ
    (Λ:ハジキ
     ・:スタッカート)
    跳ねるようにハジキます。
    それを受けて尺もスタッカートを吹きます。


  • イ一 五 五 v (v:スクイ)
    五は若干スリ気味で入ります。五の1cm手前くらいから滑って入れ、
    イ一 c五 五 v こんなイメージです。よくある装飾だと思います。


  • 大間で
    1 3 5 7 9 1・ 3・ ケ
    と上昇します。最後3・をそこまで伸ばさないです。
    ここも前述の通り洒落ウチと同様、スリで次のツボへ先取りしながら撥振りしています。
    ※注意
    ここまで洒落ウチが常にあると書いてきましたが、あくまでさりげない装飾音なので、「次のツボ!」と気張ってしまうとツボ探しのように見えてダサくなるので注意してください。
    この塩梅は玄人の為せる技かと思います。


  • 箏が16分で細かく弾いているので節アタマ(縦)を揃える。

3⃣

  • 上記同様、拍頭を揃える。


  • △578 は
    △5c78 のように、57をしっかり目にスリ。


  • 7v△43 4
    の休符△はミュートすると小気味よいです。他所同様です。
    このミュートは、三の糸上を移動する際自然と触れてミュートする程度で良いと思います。


  • 1 3 4331 は
    1 3v 4331 と3がスクイ。

  • 4331は頻出フレーズで
    43Λ31Λ とハジキで速いパッセージですが、
    ピッチはずれるし粒は揃わないしで基礎的な手のわりに難しいです。
    こういう時は紅指のほうが安定して弾けると思います。
    人差指をしっかり押さえて支柱を安定させながらハジキ、
    また撥打ちも細かいですが焦らず、むしろ少しベタ気味で弾いたほうがリズムが滑らないです。

  • その後の一連のフレーズ
    四v三Λ一Λ イ二vゝイ一Λ も同様です。
    vも入るのでなおさらベタ気味のほうが間が取れます。
    また、一の糸・二の糸はハジキづらいですが、人・中指でややベタっと弦を引きずるようにすると、リズムと音量が安定します。


  • 2121ケ
    ミュートして箏と掛け合い

  • ⑮~⑰
    1 1・v3・v4・ 4拍目の音はスクイなし。直後のフレーズも同様です。
    また3・4・が尺とユニゾンです。
    ここから速いテンポで高ツボ・スクイ・ハジキ・ひと撥(押し撥)があります。
    フレーズを通して力を抜きつつ、滑らないようベタ目で弾きます。


  • 4・ v Λェ 3・Λ
    Λェ:紅でのハジキ
    古典である『さらし』ならではのハジキです。
    支柱となる中指で支えます。

  • ㉑~㉒
    2・ 1・Λ 一 9
    よくある手ですが、忙しいフレーズの中でひと撥が急に現れます。
    ここも焦らずしっかり目に撥打ちします。

  • ㉓~㉔
    5Λ一5 1~(同型) 2~ 1~
    ハジキとひと撥が連続します。極力軽く弾きます。音源がここで若干加速しています(なんで!?)
    ハジキ後に元のツボに戻り安定した音を出すのが難しいです。
    1Λは中でなく紅指で行い、ハジキ紅指で統一し、かつ指の移動距離をなるべく減らすことで少しは安定すると思います。

  • ㉖~㉗
    イ四 4
    一の糸のイ四にIとありますが、おそらく指1(親指)のことだと思われます。しかし、親指は音が安定しづらいため
    人 中
    イ四 4
    のほうが運指しやすいと思います。
    ちなみに野澤先生は親指でした。

続く・・・

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