見出し画像

clusterにいた1年半で考えたことと実行したことのすべて、そしてこれから

僕がメタバースのclusterを使い始めて1年半が経ち、その間にいろいろな活動をしてきたんですが、「友達を作る」という目的がそれらの活動を根本で支えてきました。

雑談バーとして

この大きな目的を実現するために、最初は幸甚亭というバーを作りました。当初冠していたのが「雑談バー」です。来てくれた人と雑談をして、少しずつ仲よくなれればいいなと考えてのことです。

オープン当初(2020年8月頃~)はclusterの人口は極めて少なく、短期間のログインを除くデイリーアクティブユーザーは30~50人とも。1つのワールドに集まるユーザーは多くて10人弱でした。ユーザーの属性や興味は多様でしたが、おそらく3DCGやアバターやワールドの制作に関心のある人が多かったと思います。

僕はそういった3D周りの創作にあまり関心がなかったのと、当時clusterにいた人たちがどういう話をしたいのかをよく掴めていなかったので、clusterで世間話をしたり遊んだりする友達はできたものの、お互いの心の内側や価値観に触れるような深い話をする友達はほとんどいませんでした(自分がそれを求めているのかすら自覚がなく、むしろ他人の心に触れない話をするようにしていたような気がします)。

誤解のないように言っておかなければならないのは、世間話ができる友達がいるのは奇跡的なことで、その点だけでも僕はclusterを使い始めてよかったと思いますし、交流のあるみんなに感謝しています。

カジノとして

幸甚亭にいて感じていたのは、そもそも雑談をし始めるきっかけを作るのが難しいということでした。初対面の人と何を話したらいいのか分からない。

そこで、幸甚亭はコンセプトをがらっと変えて「カジノ」に変身しました(2021年1月)。ブラックジャックとテキサスホールデムを筆頭に、clusterのワールドの仕様で可能なギミックを使ってゲームを実施、緩めのカジノとして運営していきました。

参加者が利用するポイントの貸し出し、ポイント残高によるランキング、成績上位者へのプレゼントなど、カジノを楽しくする仕組みを考えて実行したんですが、ゲームを継続的に遊んでもらう(幸甚亭カジノに何度も来てもらう)ための仕組みとしてよく機能したように思います。

カジノの参加者が増え、賑わうようになっていき、幸甚亭といえばカジノという認識がclusterの中で広がっていきました。

半年以上経った頃(2021年8月頃)には、かつての雑談バーという冠はほとんどなくなっていました。それは僕がカジノ運営を優先していたからですが、実質的にはカジノ+雑談という形ではありました。ゲームで遊んで顔見知りになり、そのあと雑談をするなど。

誰かと知り合い、仲よくなるきっかけとしてカジノはおおいに役割を果たしてくれました。ただ、仲よくなれても心や価値観に触れるような深い話をしづらかったのは雑談バーの頃と同じでした。踏み込むのにも踏み込まれるのにもためらいがありました。

DJライブとして

カジノを始めた頃(2021年1月頃)、同時に幸甚亭ライブという「DJライブ」(DJイベントやクラブイベントとも)も開催するようになりました。2021年8月までに全8回を開催したんですが、いつも幸甚亭に来てくれている人たちとカジノや雑談以外での遊びができたらいいなと考えてのこと。

その頃のclusterにはDJライブはほぼまったく存在せず、幸甚亭ライブが先駆的だったのは間違いありません。当初から掲げていた「参加者全員が主役になれる」というコンセプトを会場内で実現しきった「幸甚亭ライブ 八方美人」(第8回、2021年8月)は集大成となり、個人的にはこのコンセプトでのDJライブはやり尽くしたと感じました。要するに、アイデアの消尽です。

その後、僕はDJライブをやめ、DJをやることもありませんでした。例外として、出演を依頼された友達の誕生日イベントと共催ではDJをやりましたが。

どうしてDJライブをしなくなったのかというと、コンセプトを実現するためのアイデアの消尽のほかに、clusterにDJ文化が根づいたことがあります。僕以外の人がDJをやったり、イベントを開催したりしてくれるようになりました。だから、別に僕が先陣切ってやる必要もないなと思い至ったわけです。DJ文化の芽生えに少しは貢献できたと思うので、それで充分です。

またもう1つは、DJや音楽で身を立てる気持ちが一切ないことによるモチベーションの低下です。DJとしていろんなイベントに出演したかったわけではなく、音楽好きの友達を求めていたわけでもなく、自分の目的に対してDJライブというあり方が噛み合わなくなっていきました。

ちょっとした縁があって2022年2月に共催でDJライブを開催したものの、自分が用意した会場は以前と同じで、「参加者全員が主役になれる」というコンセプトをよりよく実現するには至りませんでした。clusterの人口が激増したので遊びに来てくれた人は非常に多く、とてつもなく盛り上がったんですが、新たなアイデアや「参加者全員が主役になれる」とは別のコンセプトないし目標を見つけないと次回の開催は難しそうです。

ただただ音楽と踊りを楽しむためにやればいいのでは、と思われるかもしれません。そのとおり。しかし、DJライブという特性上、現状では違法に楽曲を使用することになるのでそれも心苦しかったんですね。自分は利用OKの楽曲だけを選べても、ほかのDJに強制するのはなかなか難しいです。

※詳しくは著作隣接権(原盤権)に含まれる送信可能化権について調べてください。イベントであれワールドであれ、cluster内で「著作隣接権に含まれる送信可能化権について許諾を得ていない楽曲を利用すること」はすべて著作権の侵害です。グレーゾーンではなく完全なアウトです。JASRACやNexToneに申請しても著作隣接権に含まれる送信可能化権についてはクリアできません(権利者に許諾をもらうしかない)。

clusterのパワー不足

日本におけるDJ文化と同人文化のあり方、そして黙認という形で権利面に目を瞑った場合、より多くの人を巻き込む大型イベント化を目指す方向もありえました。仮に「身を立てる=生業にする、有名になる、地位を得る」といったことを目的にするなら、スケーリング(大型化)は重要な目標になります(「身を立てる」にはアイデンティティにするという意味も含まれますが、これにはスケーリングは特に関係ないですね)。

※目的とは「やりたいこと」や「理想像」などの欲望や夢のことで、目標とはその目的を実現するために達成すべき事柄のことです。目標(すべきこと)が目的(やりたいこと)の実現に本当に貢献しているかどうかは常にチェックしなければなりません。

しかし、僕はいまのclusterには「タレントをclusterの外に飛び立たせるパワー」があるとは思っていません。言いかえると、YouTubeやInstagramやTikTokのような、プラットフォームの内外で大きな影響力を持つタレントを育てる力がclusterには(まだ)ありません。

例えば、1つのイベントの累計参加者数が(現状のトップオブトップとも言われる)1000人を超えたところで、たった1000人です。主催者や出演者には何の影響力も生まれず、マネタイズも無理です。5000人や1万人を超えるイベントがぽんぽん出てくるようになれば話は別ですが、だいぶ先のことでしょう。そして、それにはいまのユーザーの活動だけでは絶対的に威力が足りず、cluster社がマーケティングにもっと注力しない限りは実現しません。ただし、それはcluster社とメタバース市場が成長し続けるなら可能性の高い未来ではあります。

DJないしイベント屋、プロデューサーとして身を立てなくても「多くの人を巻き込んだほうがイベントは楽しくなる」という考え方もあります。それは確かなので、DJライブに限らず、スケーリングが自身の目的と合致する人たちには頑張ってもらいたいです。clusterを盛り上げて、さらに外にも飛び出して活躍してほしいと心から思います。僕にはできないことです。

目的と目標の相違

僕は現状、clusterやメタバースに自分の活動のスケーリングを求めていません。なにせ目的が「友達を作ること」なので、イベントに1000人や5000人が来たところで参加者全員と知り合いや友達になれるわけではないため、イベントのスケーリングは目標にはなりえません(運営側の協力者や出演者とはよい仲になれるかもしれませんが)。

それはカジノにしても同じ。参加者数が増えていく中で、1人1人とゆっくり話す時間が減り、ゲーム参加者とディーラー(運営側)という関係にしかなれない人が増えていきました。もしカジノで身を立てたいなら、そうした関係作り(お客が増えること)は大切です。

ですが、僕はカジノで身を立てたいわけではなかったので、スケーリング(店舗やディーラーや宣伝を増やすなど)は実行できそうでしたが、やりたいとは思えず、カジノはもういいかなと考えるようになりました。

それが2021年11月頃で、この頃には約1か月間のシーズン制ランキングが定着し、clusterの仕様上でカジノの仕組みとして取り入れられることをほとんどやり尽くした感がありました。

カジノ営業の終わり

ということで、2022年2月初旬をもって幸甚亭でのカジノを休業することにしました。休業中にしているのは、clusterでカジノ運営を目標にするための別の目的(内緒)が見えてきたら再開するだろうからです。

先に書いたとおり、カジノは「話をするきっかけ」として機能させたいと思って始めたことでした。幸いにも、営業期間中の約1年間に知り合えた人はたくさんいます。ありがたいことです。

休業するまでの何か月か、「次の目標がない」と何度か話すことがありました。それはスケーリングが目標になりえず、かといってカジノにも限界を感じていたからで、では次に何をしたらいいのかが分からなかったからです。

やりたいこと、つまり目的は変わらず「友達を作ること」でした。そこで考えたのが、どういう友達を作りたいのかということです。clusterを1年半も続けてきて、やっとそこに考えが及びました。

それは音楽やゲームだけで繋がる友達ではない。世間話をするだけの友達でもない。もっと深い話、心や価値観に触れるような会話のできる友達かな、と。

学びの不足

僕は長らく月水金しかclusterに入らず、ほかの曜日は全然別のことをしていました(いまもほぼそうですが)。なぜかというと、僕にとっていわゆる学びがclusterにはなかったからです。ここで言う「学び」とはほとんど勉強や学習に近い意味です。

友達と会って話すこと、それ自体は得がたい経験ですばらしいものですが、必ずしもそこに学びが伴うわけではありません。学び=インプットがないと面白いことの1つも言えなくなります。

僕の人生には学びが不可欠なので、例えば僕の関心事であるマーケティングや進化心理学についての学びを得られないclusterに耽溺はできませんでした。何人も参加する雑談では、そういうテーマについて話すことはかなり難しいです。

だから、clusterでの次の活動として学校のようなものをやるのもいいなと思っていました。でも、思うは易し、行なうは難し。

幸甚亭を使いながら学びの場を作るにはどうすればいいだろうかと考えていたところ、とある出来事が起きました。

「雑談だけ」からの解放

clusterでの会話は雑談が多いように感じます。最近あったことなどの世間話、clusterについての話、その場のノリや勢いの会話、趣味やトレンドの共有(自分はこれが好き、あれ知ってる?、あるある話)などなど。いろんな話題が目まぐるしく転換し、話されています(僕の経験上では)。

逆に、1つのテーマについて自分の考えや価値観を交えながら時間をかけて話すことが少なく、そういう局面であっても誰かがふと「そういえば~」と別の話題を持ち出して先のテーマが流れてしまうことがよくありました。

僕はどちらかといえば1つのテーマについて延々考えながら話していたいタイプで、話題が転換して雑談化すると途端に黙り込んでしまいます。雑談や世間話はコミュニケーションにおいて非常に大事ですが、僕は得意ではありません(やりたくないわけではなく、単に苦手)。

これまで幸甚亭はカジノ営業をしていたので、来てくれている人が話したいことを話せばいいやと思ってその場の雑談を聞いていました。

――いつかの土曜日のこと。営業日ではないにもかかわらずふらっと幸甚亭にいたら人が集まってきて、会話が始まりました。とあるテーマについてわりとじっくり話をしていたんですが、不意に誰かが「そういえば」と別の話題を出し始めました。

いつもなら僕は話していたテーマからみんなの関心が離れて別の話題が始まると沈黙を選ぶんですが、その日は営業日ではなかったので「どうしてそんなにすぐ話題をいろいろと変えるのか?」とその場で尋ねてみました。「僕はさっきのテーマでもっと話したいんだけど」と。

その顛末はさておき、僕と同じように思っていた人が何人かいることを知り、みんながみんな、話題を転々とする雑談ばかりをしたがっているわけではないと分かりました。

そこで思いついたのが、1つのテーマや自身の価値観について時間をかけて話す、あるいは話してもらうような場を作ること。調べてみると、どうやら雑談の対義語として要談という言葉があるらしい。

ということで、幸甚亭は次なる形として「要談バー」になりました。

要談バーとして

要談とは何か。実はこれに答えるのが一番難しいんですね。雑談の反対と言えばそうですが、では雑談とは何か。

あくまで僕の現時点での考えですが、雑談とは「コミュニケーションすること自体が目的で、様々な話題をその場の思いつきで行ったり来たりし、趣味や関心事の対象物などについて話すこと」です。

そして要談とは「お互いの価値観や心の内側を知り合うことを目的に、1つのテーマについて時間をかけて話し、趣味や関心事にまつわる自身の考えや分析などについて話すこと」です。

雑談と要談、どちらかが優れているというわけではまったくありません。きのこの山が好きな人もいれば、たけのこの里が好きな人もいるというだけです。両方好きな人もいます。

ただ、clusterでなされるコミュニケーションは雑談が多いのではという考えがあり、幸甚亭はあえて要談バーを名乗ることにしました。要談が好きな人の居場所が少ないのではと考えたからですね。

2022年2月初旬から始めて、幸甚亭では突発プレゼン大会を行なうことが増えました。また、先日は「ウルトラ論破バトル」なる議論イベントも開催。要談をコンセプトとする催しをいろいろやれればと考えています。

要談はまた、学びの主たる方法でもあります。コミュニケーション×学びとしての要談。これからのメタバースでのコミュニケーションにおいて、大きな可能性を感じています。

もちろん、幸甚亭では要談ばっかりしているわけではありません。雑談もしますが、雑談が盛り上がってくると要談をしたい人たちは別の部屋に分かれるという健全な場になりつつあります。いままでは要談をしたくても(その雑談内容に興味がなくても)その場にいないといけない、あるいは別のワールドに行く、という風習がありましたからね。

※そもそも幸甚亭より別のワールドで話すことが増えている感。

要談で大切な姿勢

こうして幸甚亭は雑談バーからカジノとDJライブを経て要談バーに至りました。いずれも何らかの手応えがありましたが、特に要談は他人とより親密な関係を築くためのツールにもなるので試行錯誤したいところです。

最後に、要談をするうえで大切な姿勢についてメモしておきます。これは雑談においても大切だと思います。雑談ではどうしても話題に沿って誰もが自分の話したいことを話すことが中心になりがちなので、よければ参考にしてみてください。

話を聞く

とにかくまず相手の話を聞くこと。相手が話している最中に割り込んで自分の話をするのは悪手です。

話を尋ねる

次に、相手の価値観について尋ねること。相手が「これが好き」と言ったら、「どうして好きなの?」と深堀りします。「どう思いますか?」という質問でもOK、相手に話をさせましょう。

話を振る

そして、別の人にも話を振ること。場にいながら全然話していない人がいることがけっこうあると思いますが、話したくないというよりシャイで話せないだけの人も多いです。

この3つの姿勢を守ればコミュニケーションはうまくいくはずです。自分が話すときは話を振られたときくらいがちょうどいいんですよね。clusterではそれなりの数の人が話したがりの気もしますが(+教えたがり)、よほど話が面白くない限り、自分のことばかり話していては正直嫌われます。

先立つものと刹那的な楽しみと

僕は何かしようとするとき、どうしても先立つもの――目的がないと取り組めない性分です。例えば、もっとPythonを使えるようになりたいんですが、Pythonでやりたいことがないので手をつけられていません。

その場のノリや刹那的な楽しみに身を浸すのも苦手で、それに先立つものがないとどうしても億劫になってしまいます。余計なことを考えずに楽しめる人が羨ましいんですが、なかなか自分を変えていけないのでしょうがない。

幸甚亭ないしclusterでの活動には先立つものがあり、新しい目標もできました。要談を通して深い話ができる友達を作ること。はたしてどこまで可能なのか分かりませんが、clusterで知り合って、その後も長く付き合える友達ができたら幸いだなと思います。

余談ですが、最近AdobeのIllustratorを学び始めました。clusterの活動で活かせるのはもちろん、仕事でも使えるようにしたいと思いまして。特に大正ロマンや昭和レトロなグラフィックデザインが好きで、日々習作を作っております。

clusterと3DCGは親和性があるものの、どうしても関心が弱く(幸甚亭は仕組み作りの実験場ですし)。一方で、ワールド内に飾るポスターを大量に作ってきたので、そこの技術をちゃんと身につけたら最強だと思い至り、Illustratorに手を伸ばしました。

何か新しいことを始めたいとも考えていたので、ちょうどよいタイミングです。皆さんもぜひ、2022年度が始まる時期ですので、1つ新しいことを始めてみてはいかがでしょうか。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます! もしよかったらスキやフォローをよろしくお願いします。