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大人はバーチャルSNSで遭遇した子供とどのように接するべきなのか?

大人の皆さんに質問です。皆さんはネット上で見知らぬ子供と接したことはあるでしょうか。

僕は最近バーチャルSNSのclusterを使い始めて、ほとんど毎週のように子供(おそらく小中学生)と思しきユーザーと遭遇しています。しかしながら、彼らとどのように接するべきなのか、いまいち分からないというのが本音です。

例えばTwitterやYouTubeのような身体性を伴わないSNSでは、大人が意図的に近づかなければ交流の生じない子供に対しては、大人はみずから接しにいくのは避けたほうがいい/避けるべきでしょう。

子供やその保護者にしても、ネット上で知らない人に近づかない、コミュニケーションしないということがある程度は常識になっているはず。

でも、大人と子供と不可避的に邂逅してしまうバーチャルSNSという場だったら?

今後、おそらくバーチャルSNSはより一般的になり、誰もが利用するツールになっていくと思います。オフラインの場であればお互いに素通りできますが、バーチャルSNSはユーザー同士がコミュニケーションを目的にして利用しますし、距離も近い。同じバーチャル空間(ワールド)に居合わせた場合、実は無視し合うのが難しいんです。

僕はまさにこのケースに身を置いています。そこで、特にバーチャルSNSでの子供との接し方をちゃんと考えるためにこの記事を書くことにしました。

※「接する」とは「直接的に会話や交流をする」を意味します。

※誰が子供で誰が大人かを定義するのは簡単ではないですが、この記事ではおおよそ子供は未成年、大人は成人と年齢基準で捉えます。

Twitterでの規範がバーチャル空間では難しい場合も

そもそもネット上で見知らぬ子供と接するどころか、遭遇する機会が存在しない人も多いと思います。TwitterやYouTubeのようなSNSでは、子供がどう使うべきかという議論はあっても、大人が子供と接することの方法論についてはほとんど問題にすら上がらないでしょう(分かりきっていますからね)。

ところが、『Fortnite』や『荒野行動』のような複数人で遊ぶオンラインゲームや、clusterのようなバーチャル空間で交流するSNSではそうもいきません。これらはキャラクターやアバターを通して、「実際にそこにいるかのような」バーチャル身体性をもって相手と対峙することになります。極論すると、相手が目の前にいるんですよね。

オンラインゲームでは子供の(トキシックな)言動が問題視されることがあり、大人が子供を唆す事例も散見されます。それらについて議論し、注意喚起するのはとても大切です。

そして、バーチャルSNSはオンラインゲーム以上にコミュニケーションが利用目的のほとんどを占めるため、オンラインゲームよりさらにしっかりと「子供が利用すること」と「子供への接し方」について考えなくてはいけないはずです。

この2点は先に挙げた「子供はネット上で知らない人に近づいてはいけない」と「大人は子供と接するのを避けるべき」という規範で解決しそうな気がします。

それが通用するバーチャル空間もあるかもしれませんが、そうはいかないバーチャル空間があります。後者の一例が、僕がclusterで運営している幸甚亭という雑談バーです。

現在週2で営業していますが、そこに頻繁に子供がやってくるわけですよ。彼らも当然店内で動いたり喋ったりしますから、バーチャルとはいえお店なので接客をしないわけにはいきません。ある人とは会話をして、ほかの(言動から明らかに子供だと分かる)人を無視するのは、店内の雰囲気作りや雑談バーというコンセプトからして正直不可能です。

接することが不可避であるなら普通に接すればいい、というのが答えではあります。そのとおり、大正解。それで大丈夫なときはそうします。子供が来ること自体は問題ではありませんし、clusterの利用規約でも年齢制限は特にされていませんからね。

子供が来ると何が問題か

いちおう早々に答えは出ました。でも、僕が悩んでいる問題はその先にあります。

皆さんがご存知かは分かりませんが、子供のユーザーの多くには共通するある厄介な特徴があり、それにどう対処すればいいのかが難しいんです。

というのは、幸甚亭に来てくれる人の中に「タメ口で口調が荒く、自己中心的で場の雰囲気を読めない」人がおり、その多くが子供だと推測されるということ。そういう人が来てしまうと店内の空気が悪くなり、ほかの人が話しづらくなる状態になってしまいます。雑談バーにとっては致命的です。

なぜ子供だと推測できるかというと、「タメ口で口調が荒く、自己中心的で場の雰囲気を読めない」という性質は社交性が未発達な人の特徴だからです。子供は社交性が未発達ですから、「タメ口で口調が荒く、自己中心的で場の雰囲気を読めない」人の多くは子供だと推測できると。言葉遣いの幼さや話に出るネタの性質(アニメや漫画が多い)からも子供だと判断できる可能性が高くなります。

※ちなみに、clusterでは彼らの多くがオフィシャルアバターのうちどれかを使用しているので、これも判断材料になります。最初期からあるロボットのデフォルトアバターを使用している人はなぜか「タメ口で口調が荒く、自己中心的で場の雰囲気を読めない」人ではない確率が高い。なんで?

※子供はスマホユーザーが多く、スマホで自由にカスタムアバターを使うのはちょっと難しいので、使いやすいオフィシャルアバターを選んでいるんだと思います。Realityと連携したらclusterがより楽しくなるんですよね。それを教えてあげたいが、なかなか……。

※オフィシャルアバターの人を見ると警戒してしまう気持ちは分かる。

さらに、ここで言う子供は主として小中学生が当てはまります(幼稚園児がバーチャルSNSにアクセスするのはちょっと想像が難しい……。高校生については後述)。

小中学生の生活圏は家庭と学校でほとんどが占められていて、知らない人(特に大人)と話す機会が全然なく、そのため社交性を高める経験も少ないと考えられます。身の回りには友達か家族かよく知っている大人しかおらず、ネットの人間関係もリアルと地続きであることが多いので、いつでもどこでも「いつもどおり」で大丈夫なわけです。

そのせいで、見知らぬ大人と遭遇しうるバーチャルSNSでも「いつもどおり」にしてしまう。つまり、初対面の他人と適切にコミュニケーションするスキルが未熟ということです。こちらからあいさつをしても返してくれないことが多く、何か教えてあげたときにお礼を言ってくれることも少ないです。話しかけられているのに自分中心の発言しかしない人もいますし、言葉の綾や妙を理解できずに急に怒り出す人もいます。

僕からすると彼らの言動は非常に乱暴で荒く、トキシックに見えてしまいます。それはたぶん、ほかのユーザーからしても同様でしょう。誰も口にはしませんが。

※言わずもがな、小中学生でも大人と同じような社交性をもってコミュニケーションできる人もいます。そういう人はでもここで取り上げている問題の範疇には入りません。

※対人関係やコミュニケーションが苦手な傾向のある発達障害を持つ大人かもしれませんが、そういう人でも初対面で他人に丁寧語を使わないことはあまりありません。初手タメ口は年齢の低さに起因することが多いように思います。

これが高校生になるとまったく違ってきて、受験を経ることで劇的に社交性が向上します。移動範囲が広がり、アルバイトもできるようになり、自由に使えるお金も増え、新しい人間関係もでき、自分の意思でいろいろ挑戦できるようになる。

こうした社会との繋がりを経験することで自分が社会の一員であることを知り、社会には自分の見知らぬ人たちが大勢いてその人たちとも適切なコミュニケーションしなければならないことを理解していくわけです。

※幸甚亭にも高校生の常連さんがいますが、当人から教えてもらうまで高校生だと分かりませんでした(もちろん高校生の中にも社交性が発達中の人もいるでしょう)。小中学生かどうかはテキストチャットでもボイスチャットでも本当にすぐに分かります。

「タメ口で口調が荒く、自己中心的で場の雰囲気を読めない」人の全員または大半を子供だと判断するのは無理があると思うかもしれませんが、先ほど述べたように口調や言葉遣いが明らかに幼いんですよね。

もし大人だったら「いままでどうやって生きてきたの?」と心が荒ぶので、社交性が未発達な子供だと判断するほうが心を健全に保てます。

ちなみに、彼らからは場を荒らそうという悪意はまったく感じられません。ごく自然で、そういう言動が日常という感じです。悪意がある場合は通報通報。

大人は初対面の子供に注意・指導すべきなのか?

さて、ようやく本題に至れました。

幸甚亭に来てくれるお客さんの中に「タメ口で口調が荒く、自己中心的で場の雰囲気を読めない」人がおり、その多くが小中学生だと推察されるわけですが、僕は彼らとどう接するべきなのでしょうか。

これを一般化すると、バーチャル空間で公共性を持つワールドを運営している人は「タメ口で口調が荒く、自己中心的で場の雰囲気を読めない」初対面の小中学生とどう接すべきか、となります。

ワールドを運営していないユーザーなら距離を置くのが正解でしょう。また、あくまでフレンドだけが集うプライベートな場として運営されているワールドの持ち主であるなら、この場合も無視するか排除するのがよさそうです(ブロックやキックの機能があるなら。clusterには現状ありません)。

※追記:2021年10月時点でミュートとブロックの機能が実装されています。

でも、幸甚亭のようなある意味で公共性を持つワールドの持ち主だとそうはいきません。上述したような理由があるからです(場をぶち壊されるリスク)。

また、たとえワールドを持っていないユーザーやプライベートなワールドを運営しているユーザーだとしても、たんに生きている年月が短いがゆえに社会性を発達させる時間や機会が充分でないだけの子供を、大人が一方的に無視・排除すべきなのでしょうか。うまくコミュニケーションできないのは彼らの責任ではないのです。

だとしたら、僕はバーチャルSNSで出会った初対面の子供に「こういう場ではこういうふうにコミュニケーションするんだよ」と注意・指導すべきなのでしょうか? ここに問題の難しさがあります。

バーチャルSNSには叱れる大人が必要なのかも

たぶん、そんなことを言ってくる大人は彼らからすると相当鬱陶しいですよね。僕もあえてそういう憎まれ役を買って出たいとは思いませんし、はっきり言ってめんどくさい(彼らに対して何の責任もないですし)。

「他人の子供を叱れる大人がいなくなった」と言われますが、ネット上でも同様ですね。そのうえ、彼らに注意したところで聞き入れてくれるとは思えません。逆ギレされる可能性もあります。

ただ、それでも根底にあるのは、彼らにバーチャルSNSでの体験を楽しんでもらいたいという気持ちです。彼らが「タメ口で口調が荒く、自己中心的で場の雰囲気を読めない」状態で居続けると、楽しむのは難しいんです。

そういう言動は嫌がられて、誰ともコミュニケーションをしてもらえません。そうなると「面白くないな」と感じて二度と利用しない。せっかく面白そうだと思って使ってみたclusterでそんな悲しい体験をしてしまうのは、できれば避けてほしいところ。

どうすればいいでしょうか。やはり、僕のような大人が憎まれ役を買うべきでしょうか。

いまのところ、それがベターなのかもしれません。ほかのユーザーを不快にしたり、その場の雰囲気を壊したりするような人がいたら、注意・指導する。たぶん、彼ら自身はそれを「うざい」と感じるだけでしょう。こちらがもっとバーチャルSNSを楽しんでほしいという気持ちを伝えたとしても、なかなか理解してもらえないと思います。

その場できちんと理解してくれる人もいるかもしれません。長い目で見れば効果が表れる可能性もあります。なので、少なくとも幸甚亭では、そういう方針で運営していこうかなと思います(独り言のようにチャットをして会話が成立としない人もいますが……というかマジで会話を成立させようという気のない人が多い)。

ということで、バーチャルSNSにも子供を叱れる大人がいていいんじゃないか、という結論になりました。オフラインだと、してはいけないことを注意しても「怪しい男が子供に声をかけた事案」になりえますが、バーチャルSNSだと事案にはならないでしょう。まあ運営に通報されるかもしれませんけど。

子供を温かい心で見守ってほしい

僕はワールド主としてclusterを利用しているので、この記事で議論してきたことは喫緊の問題です。たぶん次の営業日にも子供が来店するでしょう。そんなとき、みんなの雰囲気を台なしにする言動が目立つ場合は注意することにします(申し開きをしておくと、必ずしもそうすることが最終解あるいは最適解ではないかもしれません)。

で、公共性のあるワールドの持ち主だけでなく、バーチャルSNSを利用しているすべての大人のユーザーにもお願いしたいことがあります。言動について注意するかどうかは自由ですが、いずれにしても相手が子供だろうと判別できたら、可能な限り温かい心で見守ってほしいんです。

前述したように、彼らが見知らぬ人とうまくコミュニケーションできないのは、彼らの性格や性根の問題ではないからです。社交性を向上させる機会が充分でないだけ。だから、僕としてはバーチャルSNSをその機会の1つにしてもらいたい。大人のユーザーにも彼らを煙たがらず、優しい気持ちを持ってもらいたいわけです。

とはいえ、もちろん我々も一ユーザーでしかありません。時には嫌な思いをするかもしれない。僕にもそのリスクがあります。けれど、そのリスクを負ってでも、子供に対して大人は(叱れるという意味も込めて)優しくあるべきだというのが僕の考えです。それが「社会」ってもんです、きっと。

今回、僕自身も答えの出ていない問題を議論してきました。うまく言語化・説明できているか不安も残ります。ですが、少しでも共感していただけたなら幸いです。

僕はclusterを利用していますが、VRChatなどほかのバーチャルSNSを利用している人にも届けば嬉しいな。

※余談。現状に鑑みると、clusterは13歳未満の利用を禁止したほうがいいと思います。僕は「子供のユーザーが自分の素性を話す」「彼ら自身は意図せずとも名前や住んでいる地域が分かってしまう」という事態に遭遇したことがあり、危険性を感じました。

一例として、家族が近くにいる状態でボイスチャットを使っている人がいて、後ろから家族の誰かが本名で声をかける、家族が近隣の地名や駅名を話しているのが聞こえる、というケースがありました。

※もう1つ余談。YouTubeでも放送主のことを何とも考えていないような暴言チャットをする人がいますが、彼らも社交性の未発達な子供が大半のはず(他者への想像力が未熟)。そういうとき、ブロックや無視よりも放送主がきちんと諭してあげるほうがいいのではと思うことがあります。


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