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要談とは何か、どうやればいいのか――clusterで始めた要談について

「いまの話題で話したいことがあったのに、別の人が別の話題を話し始めてタイミングを逃してしまった」

「その場のノリの騒がしさは楽しいけど、たまには落ち着いて話したいときもある」

こういうお悩みの解決策として有望なのが「要談」です。

僕はいま、メタバースプラットフォームのclusterで要談をもっと多くの人に楽しんでもらうための普及活動を行なっています。少しずつ魅力を知ってもらえるようになり、中には「要談とお砂糖になった」という人も。

要談に興味がある、要談に参加してみたい、という声もちらほらと聞くようになりました。しかし、この聞き慣れない言葉の意味や、そのやり方が分からない場合もあるかもしれません。

ということで、この記事ではclusterでのコミュニケーションを念頭に置いて、要談とは何で、どうやればいいのか、そして実践のポイントと注意点について解説します。

もし要談をやってみたいと思ったら、ぜひすぐやってみてください。どこででも、誰とでもできます。

◆要約

  • 要談とは「1つのテーマや話題について考えを話し合う」こと

  • 「自分が話す」よりも「聞く」「振る」「尋ねる」が重要

  • 要談ブレイクが起きた場合は「話を戻す」ことが最優先

  • 場を取り持つ「ファシリテーター」がいると要談しやすい

要談とは何か、雑談との違いは

要談と対比されるのは雑談です。どちらも複数人が集まって会話をすることは同じですが、大きな違いは話し方にあります。逆に、話の内容やテーマで区別するわけではありません。

雑談と要談の具体例からその違いを見ていきましょう。なお、極端な会話内容にしてあるので実際に発生することはないと思います。

(1) 雑談の例
A「そういえば、朝食で珍しくオムレツを食べた」
B「そうなんだ、実は俺、オムレツ作るの得意なんだよね」
C「特技あるのいいよね。私はあんまり特技も趣味もなくて……」
A「趣味っていうと、最近ゲームにハマっててさ」

(2) 要談の例
A「そういえば、朝食で珍しくオムレツを食べた」
B「そうなんだ、普段何食べてるの?」
A「パンだけ。Bはどう?」
B「食べないことが多いかな。Cは?」
C「できるだけちゃんと食べるようにしてるよ」

(1)と(2)の例で話されている内容が面白いかどうかはさておき、違いは一目瞭然ではないでしょうか。

(1)の雑談の例では、話題が頻繁に変わっています。注目すべきは、3人が会話の中でそれぞれ引っかかるキーワードを拾い、相手の話を広げるよりも自分のしたい話をしているところです。

(2)の要談の例では、朝食というキーワードを中心とした会話が行なわれています。さらに、AとBはお互いに質問をし合っており、Bは会話に入れていなかったCに話を振っています。

この例から雑談と要談がどういうものかを引き出すことができます(辞書的な意味とは異なります)。

雑談:その場の雰囲気や会話内容によって話題が頻繁に入れ替わり、それぞれの人が気になったキーワードにもとづいて思いついたことを話すこと。

要談:誰かが持ち出した特定のテーマや話題を中心に、それぞれの人が意見を出し、また相手の考えを引き出しながら話し合うこと。

こうして見ると、要談は議論(ディスカッション)に近いですね。ただ、僕としては雑談に対するアンチテーゼの面を強調したいので、あえて要談と呼んでいます。

※すなわち、「要談」は概念としてはまったく新しくもなく誰もが日常的に(clusterでも)行なっています。ですが、言葉としては全然使われておらず物珍しさがあります。VRChatにおける「お砂糖」と同様です。お砂糖は概念としてはネット恋愛と変わりませんが、この言葉の使い方に新しさや珍しさがあります。

言わずもがな、雑談と要談に優劣があるわけではなく、一方だけを好きな人も入れば両方を好きな人もいます。自分の会話の好みが雑談と要談のどちらよりなのかを探ってみるといいのではないでしょうか。

ところで、先ほど雑談と要談を話の内容やテーマで区別するわけではないと言いましたが、実際には上記のように、話し方の違いから必然的に要談のほうが話の内容が深まり、話し手の真剣度が高まっていく傾向があります。

そのため、傍から要談を聞いていると深い話や難しい話をしているように感じられますが、最初からそんなふうな話をしようと意気込まなくても構いません。選んだテーマにもよりますが、たいていは勝手にそうなります。

要談の面白さとは

要談の面白さはまさにこの仕組みにあります。他人の意見をじっくり聞くこと、自分の意見をしっかり話すこと。これを繰り返すことで話の内容が深まり、テーマについての理解が進みます。

それはいわゆる学びに近いものであり、雑談で得る楽しさとはまた違う面白さを得やすいのが要談です。

要談のやり方

要談をするのは簡単です。何人かいる場で「これについて話したいんだけど」とか「こういうことについてどう思う?」と持ちかければ要談が始まります(相手が乗ってくれるかどうかによりますが……後述)。

特別な仕組みや難しい方法はまったく必要ありません。ただし、要談を行なううえでその場にいる人たちが意識すべきことが3つあります。それと、要談を継続するうえでの注意点もいくつかあります。

※誰かと話すときに当たり前のこと、例えば「場を尊重する」「相手を馬鹿にしない」といったことはいちいち書いていません。

要談三か条

要談の際にその場にいる人たちが意識すべきことは以下の三か条にまとめることができます。

  • 相手の話を聞く

  • 相手に話を振る

  • 相手に話を尋ねる

この三か条から導かれる注意点は、「相手の話を遮らない」「自分ばかり話さない」「自分だけ話して満足して終わらない」となります。自分が話すということは相手が話をする時間を奪っている、という認識が欠かせません。

自分から話すのは3割、相手に話させるのが7割、くらいの感覚でよさそうに思います。もちろん、テーマを掘り下げたりきちんと説明したりするために積極的に話すのは大丈夫です。

そして、積極的に話せる人ほど、誰かが話したがっていないか、あまり話せていない人はいないか、と気配りすることが大切です。

要談はけっこう考えながら話すことになるので、沈黙の時間が増えがちです。だからこそ、沈黙を恐れてはいけません。相手が考えをまとめて話し出すのを待つのが大事です。沈黙にも大きな価値があります。

要談ブレイクが起きたら

要談をしているときに困るのが、誰かが別の話題を話し始め、そこから連想ゲームでどんどん最初のテーマから話がずれていくときです。

言いかえると、要談が雑談化していくということですね。これは要談に慣れていない人がその場にいると頻繁に起こりがちです。最初に話していたテーマでもっと話したいのに、と思っている人にとっては楽しくなくなる大きな原因となっています。

僕はこれを要談ブレイクと呼んでいます。要談ブレイクが起きたときは、誰かが話題を元に戻すのが極めて重要です。

とはいえ、多少は話題が逸れたり、場に新しく誰かが来たりするなどで要談ブレイクが起こることは避けられません。そのとき、雑談化するのを放置するのではなく、「話を戻すけど」とか「こういう話をしてたから一緒に話そう」と軌道修正しましょう。

実は要談においては軌道修正が一番難しいかもしれません。誰か1人が雑談化させている状況なら易しいですが、数人が場を雑談化させると流れが一気に雑談になってしまうからです。その流れ、空気を壊して要談に戻せるかどうか。これが、要談をするためにとても大切なことです。

もし雑談に花が咲き始めて軌道修正が難しいと感じたら、「さっきのテーマで話したいから」とその場から移動して再開するのがよさそうです。clusterの距離減衰を活用するべし。

これもまた「嫌われるかもしれない」「角が立つかもしれない」と思って心理的抵抗があるかもしれませんが、せっかく楽しむためにclusterに来ているのに、楽しくない状況になるのは望ましくありません。

その場から移動して話したいことを話すことを、誰もが自然なことと思えるようになるといいですね。移動するのはあなたのことが嫌いだからではなく、いま話したいことを話すためなのです。誰かが話していると自分は話せないわけですからね。

誰と要談をすればいいのか

おおよそのやり方が分かったところで、誰と要談をすればいいのかと感じつつあるかもしれません。誰でも大丈夫だと思いますが、相手が要談を好きではなければ乗ってくれず、そうするとたとえ自分がしたいと思っていても要談はできませんね。

この問題はコミュニケーションや人間関係にまつわるものなので、要談に乗ってくれる人と知り合う、要談が行なわれている場に参加する、といった解決策しかありません。

おそらく多くの人が「要談って何だ」という状態だと思うので、まずは自分がどんな話をどういうふうにしたいのか伝えるのが先でしょう(要談という言葉を使う必要はないです)。

普段は雑談しかしていないように見える人も、実は機会がないだけで要談を好きかもしれません。相手との相性もあるので、コミュニケーションをして探っていくのがいいですね(それこそ要談かも)。

それと、要談をしている場に誰かがやってきたとき、その人をどう迎え入れるかは意外と難しいです。「いまこういうことを話してる」とさっと説明できればいいですが、人によっては雑談のノリで会話に入ってきて意図せず雑談ブレイクを起こしてしまうことも。

後述のファシリテーターが説明をしてもいいかもしれませんし、聞いているターンの人がチャットで説明するのもありですね。

ただ、会話の人数が5人を超えると途端に雑談化する可能性が高まるので、ほどよく離合集散するのがおすすめです。

ファシリテーターの重要性

要談のテーマを投げかけるのは誰でもできます。しかし、その場にいる人に話を振る、要談ブレイクが起こったら軌道修正する――そういうのって誰がやるべきなのか、という当然の疑問が起こります。

明確に役割を決めなくてもいいんですが、ファシリテーターの役割を担える人はそうしてほしいです。

要談におけるファシリテーターとは、その場のテーマや話題について話を促す人であり、話を引き出す役割を持ちます。話題の軌道修正もそうです。要談の場にファシリテーターがいると非常に捗ります。

よいファシリテーターとは、誰かが話したことを解釈し、多少自分の考えをつけ加えて内容を深め、そのうえでほかの誰かに話を振れる人です。clusterではチャットを拾うのも大事です。

悪いファシリテーターとは、誰かに話を振ることしかしない人です。一人一答のような形で次々に話を振っていくと、あまり話が面白くなっていきません。

ただ、よかろうが悪かろうがファシリテーターがいると要談をしやすくなるのは間違いありません。自分がファシリテータータイプかどうかはやってみないと分かりませんが、誰でも練習すればできるようになるのではないでしょうか(要談はそういう練習が許される場でもありますし、「練習させて」と一言伝えればいいでしょう)。

ドミネータータイプの人もいる

気をつけなければならないのは、ファシリテーターは場を取り持つ役割だとはいえ、場を支配してはいけないということです。つまり、自分だけが楽しく気持ちよくなるために場(=他者)を利用してはいけません。

皆さんも経験があるかもしれませんが、clusterでの会話の場において話の中心にいる人を見かけることがあると思います。その人はたいていその場の会話の流れや雰囲気を支配しているはずです。

こういう人を、僕はドミネーターと呼んでいます。しかし、ドミネーターにも良し悪しがあり、悪いドミネーターのいる場は全然楽しくないですが、よいドミネーターがいる場は楽しく感じることが多いでしょう。

よいドミネーターとは、その場にいる人がどんな話を聞きたがっているかを察知し、面白い話をしてくれる人です。話すのが好きで、テーマの選び方や話し方が巧みで、場を盛り上げるのが得意です。

悪いドミネーターとは、延々と自分語りをしたり、騒ぐことや他人いじりなどで目立とうとしたりして、自分のペースや気持ちよさを場に強制する人です。悪い意味での「声が大きい」人だと言えます。

こうした(よい)ドミネーターの人の話を聞くのが好きな人も多いと思います。要談においては、ファシリテータータイプとドミネータータイプ、どちらにもなれるほうが役立ちます。

その場にいる人たちが話したそうにしていればうまく話を振るファシリテーターとして、その場にいる人たちがあまり話せなさそうでも誰かの意見を聞きたそうにしていればドミネーターとして振る舞えるといいですね。ファシリテーターは他者から場の雰囲気を作り出す人、ドミネーターは自分から場の雰囲気を作る人というイメージです。

ちなみに、ファシリテーターがいるから要談、ドミネーターがいるから雑談、といった単純な二分法は使えません。ドミネーターのいる要談もあれば、ファシリテーターのいる雑談もあります。

clusterで要談をやる意味

以上です。暫定版ということで今後も考えが変わっていくかもしれませんが、要談のポイントや注意点について説明しました。

最後に、僕がclusterで要談をしている意味とその価値について簡単に紹介します。

そもそも要談に目覚めてこの言葉を使うようになったのは、以前のcluster活動振り返り記事で書きました。clusterでは雑談が多く行なわれており、それだけだとどうも自分は楽しめないなと感じたのが大きなきっかけでした。

最近はほとんど要談ばかりしており、雑談をしたいときや実際にしているときもそれなりにありますが、clusterでは要談とその普及を主たる活動にしています。

要談をする場もclusterの公式ワールドとして開かれているロビーが多いです。それは、雑談が多いclusterにあって要談をしている人もいることを知ってもらうことで、雑談だけでは楽しいと感じられない人がclusterに飽きてしまわないようにしたいからです。

これまでのclusterでは、あくまで僕の体感ですが、会話のほとんどが雑談だったように思います。1つの場に多人数が集まることが多いので仕方がないことだったでしょう(クリエイター周りでは要談が多いかもしれませんし、議論を目的としたイベントはいくつかありました)。

雑談は騒がしくなりがちで、その場のノリが重視されます。それについていける人は楽しめるでしょうが、ついていけない人は楽しくありません。

雑談が楽しい人にはどんどん新規ユーザーを巻き込んでいってもらいたい一方で、僕としては要談の楽しさも広めていきたいわけです。とすると、雑談の場ばかりではバランスが悪いでしょう。ゆえに、要談の場もそこらへんで立ち上がってくるようになれば、clusterがより多くの人にとってよき居場所になっていくはずです。

僕1人ではできませんので、ぜひ皆さんともに気軽に要談をしてもらえればと思います。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます! もしよかったらスキやフォローをよろしくお願いします。