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初めて行った美容室で「お帰りなさい」と言われて

20年以上美容室を利用していても、いまだにどうオーダーすればいいのかよく分からない。あまりにも髪に関する語彙が少ないのと、希望の髪型が別にないので、「とりあえず前髪を短くして全体はそれに合わせてください」に近しいこと以外に何も言えない。

だから正直、2か月に1回も美容室に行かないといけないのが面倒で、つい伸ばしっぱなしにして前髪がうっとうしくなりすぎ、観念してホットペッパービューティを開くことになる。

レンガ坂の美容室

いまはもう中野に住んでいないのに中野の美容室に行ってしまうのは、美容室がいっぱいあって、しかも2、3000円でカットしてもらえるところが多いからだ。この数年で、かれこれ10店舗くらいを気まぐれでローテーションしている。

今回は行ったことのない美容室を選んだ。僕にとって行ったことがあろうが行ったことがなかろうが違いはほとんどない。別に美容師と仲良くなるわけでもないし、お気に入りの美容師ができるわけでもない。こっちから細かいオーダーをするわけでもないので覚えてもらう必要もなく、誰でもだいたい一緒だ。

僕は日曜日に中野のレンガ坂に向かった。たかだが数十メートルの坂道に飲食店がひしめき合っているだけなのに、ときどきメディアで特集が組まれるらしい。たしか麦酒大学がTwitterで話題になったこともあった。僕の目当てはその隣のビルだった。

髪はあるのに髪の知識がなさすぎる

2年くらい前にカラーを入れて以来、久しぶりに髪を染めることにした。希望は濃いめの赤。黒髪からだとどんなカラーにしてもだいたい茶色っぽい髪色になるだけなので、別に何でもよかった。なんとなく、見せてもらったカラー表で赤が気になった。

カラーについていろいろ説明されたが、髪に関する知識が少ないせいで全然意味が分からない。担当の美容師が熱心に説明してくれたのに申し訳ない。たぶん僕が彼女にesportsやゲームについてあれやこれやと話したら、僕のそのときの気持ちを知ってもらえたかもしれない。

目が悪いと何をしたらいいのか分からない

カットのときは眼鏡を外す。そのおかげで雑誌もスマホもカットの邪魔になる距離でしか見えなくなる。だから、目が悪い人は髪を切られている時間に何をするかはとても重要だ。

僕はいつも思索することにしている。今回は、次に書く記事のネタや内容を考えていた。彼女がときどき中野の話題を振ってくるので、僕も知りうる限りの知識で応えた。レンガ坂のこと、中野サンプラザの取り壊しのこと、そのほか。さすがにヘアカラーリング剤を染み込ませているときはスマホで時間を潰した。

お帰りなさいって感じ

カラーリングも終わって首の辛いシャンプーとトリートメントを乗り越えた。彼女は僕の髪を乾かしながら、色が落ちるかもしれない、お風呂のあとのタオルに気をつけて、何回かカラーをするともっとはっきり色が出る、と言ったようなことを話した。

僕は「なるほど」とか適当に返したと思う。でも、そのあと彼女が「赤、似合いますね。お帰りなさいって感じ」と言ったので、思わず声を上げて笑ってしまった。そんな褒め方あるのかと。

きっと、僕は次もここを訪れるだろう。


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