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⚫️ルンバ続報〜ルンバはペットじゃない!

 さて。

 ルンバを稼働させた翌日。
 やはり、夕方、私は実家に両親の様子を見に行った。
 両親はいつも通りよぼよぼしていた。
 異状なし。

 ルンバの充電が終わっていたので、私は思案する。
 二階の部屋だけではもったいない。
 一階の廊下であれば障害物も少ないし、大丈夫なのではないか?

 廊下から、台所と親の部屋に続く扉が閉まっているのを確認し、玄関の上がり口から土間にルンバが転落しないように、傘や袋やその他複数の障害物でバリケードを作る。

「お母さん、ちょっとルンバ、廊下で動かすから。」
 一言声を掛け、スイッチオン。

 ルンバが稼働音と共に動き出す。
 数分後、母が台所から出て来て、ルンバの前で立ち止まる。
「あらっ、ルンバ、こんなところで動きようよ!」

 そうだね。
 わざわざ持ってきて、ここでスイッチ入れたからね。

 その母の目の前で、ルンバは廊下から洗面所に突撃した。
 洗面所のドア閉め忘れてたなと思いながら、まあ洗面所はさほど障害物がないからいいかと私は思ったが、母は違った。
「あらっルンバ洗面所に行ったよ!」

 それはいいのだが、ルンバの先回りをして洗面所の掃き掃除をしようとする母。
 意味不明である。

 いやせめてバケツや洗剤を高所にあげるだけにしとかない?
 掃除はルンバの仕事だと思うんだ。

 無事ルンバが洗面所から廊下に出てきて掃除を続けるが、後ろからついてくる母。

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 この足である。

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 ついて来なくていいのよ。

 しまいには、玄関の上がり口を見て、せっかく私が築いたバリケードを
「あらっ、誰かいな。
 こんな散らかして。」
 と片付けようとする母。

 油断も隙もない。

「いやちょっとお母さん勘弁して。
 それせっかく置いてるんやから、どけたらルンバが転落するやろ。」
「あら、そうね」

 とりあえず、ルンバから目を離せない。

 廊下が一通り終わったと思った時、母が言った。
「梨、これ台所もかけてくれん?」

「いいけど。
 明日ね。
 今日はここまで!」

 続報は翌日に続くのだ。
(翌日もこのまま書きます。)

 その翌日、夕方、フル充電をしたルンバを抱えて、私が二階から台所に降りていく。

 そこで母の一言。
「どうしたと?
 それどうするとね。」

 台所をこれで掃除してくれって頼んだのは昨日のあなたやろうが!
 生活に支障がないよう、夕食が終わった頃合いを見計らって持ってきたというのに!

「いや、ルンバ掛けてって言ったやん。
 ちょっと台所の下の引っかかりそうな布とか、どかして掛けるけん。」
 台所も、掃除をしていない訳ではないのだが、年寄りの常で、古いキッチンマットを捨てずに買い増すばかりなので、やたら布が敷いてある。
 掃除しやすいフローリングリフォームにした意味はあまりなかった。

 小さめのキッチンマットを複数枚、そのほかに、ゴミ箱や、床に置いてあった紙袋ストックなどを退け廊下に一旦廊下にぽいぽいしていた私に、母が聞く。

「その間、私はどこにいたら良かろうかね?」

 自分の部屋にいたら良いんじゃないですかね。(母の部屋は独立でちゃんとあります。)

「自分の部屋にいたら。」
 ルンバ、スイッチオン。
「とりあえず、私は二階に行くけど、また降りてくるから。
 なんかあったら呼んで。」

 ルンバが動き出す。
 十数分後。

「梨!
 どうしたらいいと、ルンバが赤くなった!」

 母が私を呼ぶ大声に、は?と思って階下に行く。
 ルンバは正常に稼働していた。

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 まあ一応赤くなってはいる。


 ダストサインが。

 正直そんなに慌てるものでもないのだが、ゴミを捨て、スイッチを入れ直して、もう一度稼働させる。

 二階で自分の雑用を済ませようとしていたところ、十分ほどして、また大声で呼ぶ声が。
「梨!
 ルンバが動かんくなった!」

 悲痛な声に、何事かと階下に降りて見ると、ルンバは、うちの母が敷きまくった、複数枚重ねられた絨毯の段差を乗り越えられず、エラーで停止していた。

 ここで不審に思う人がいるかもしれない。

 台所に複数枚の絨毯?と。

 うちの母はいつのまにか台所から廊下に続く扉を開け、廊下から自分(母)の部屋にルンバを追い込もうと一生懸命努力していた。

 羊飼いか!

 ルンバは廊下とうちの母の部屋の間の、絨毯と絨毯の間の段差に完全に嵌まり込んで、動けなくなっていた。

「お母さん、普通に持って運んだら良いんじゃないん…?」
 母の部屋に放り込み、再起動させる。

 母の返答は
「いやだって、ルンバも頑張ってるんやけん。」
 だった。

 ルンバはペットじゃない。
今度こそ自分の用事を済ませようと二階に上がるが、十分後、また階下から声が。

「梨!
 ルンバが!」

 今度はなんだ。

「ルンバがどっか行った、おらんとよ!」
「は?」

 母は台所から出てきた廊下にいた。
 多分台所にいたのだと思われる。
 普通にその横の、母の部屋から稼働音がする。
「いやお母さん、部屋してもらいたいってドア閉めたやろ。
 掃除しようよ。」
 開けると、普通にルンバが。
「あら、そうやったかね?」

 その日は全く他のことができず、私が自分が帰る際、ルンバの稼働を止めて行ったのは言うまでもない。

 もののついでだが、ここで全く登場しない父だが、私の帰り際にだけ声を掛けてきて、自慢げに
「僕の買ったルンバは役に立つだろう。」
 と言ってきて、私を苛つかせたので、
「ルンバだけはね。」
 と返事をしておいたことを申し添えておく。

(終わり)

ルンバ欲しくなったらどうぞ🤣


投げ銭歓迎。頂けたら、心と胃袋の肥やしにします。 具体的には酒肴、本と音楽🎷。 でもおそらく、まずは、心意気をほかの書き手さんにも分けるでしょう。 しかし、投げ銭もいいけれど、読んで気が向いたらスキを押しておいてほしい。