どうしてうちの会社に人が集まらない?

悪い評判しかなかったうちの会社

就任当時は「五戸町で青森シャモロックの会社です」と自己紹介すると、「あぁ、あの人(元夫や元義父)の会社でしょ?(苦笑)」と言われることも多かったくらい、地元ではあまり評判が良くなかった会社でした。
賃金未払いもありましたし、仕入れ代金の支払い遅延もよくあり、会社の金をまるで自分の懐のように使うような代表者たちだったというのは、地元の人なら大体知っているいうようなレベル。
労務管理も財務管理もザル、求人を出したところで地元の評判がすこぶる悪い会社に誰が働きに来たいと思うのか。
どうしたら評判が良くなるのか頭を悩ませる日々でした。

卵が先か鶏が先か

人が集まってから職場環境を良くするのか、職場環境を良くしてから人がはいるのか。
どちらが先でしょうか?と聞かれることもあるのですが、私は間違いなく「職場環境を良くしてから」とお答えしています。
もちろん大変な道のりになるのですが。
私と課長は基本的なスタンスが似ているのもあり、「こんな職場だったら働きたいと思ってもらえるのでは?」という議論を日頃からやってきました。
その中で出た大原則は「完全週休二日制」と「残業なし」でした。
うちの会社はお母さんも多く、土曜日出勤は嫌がられることもありました。また、私自身が完全週休二日制の会社に勤めていたというのもあり、土曜日が普通に仕事だというのが耐えられなかったのです。

なぜ残業しなければならなかったのか

うちの会社の工場部門の仕事を大きく分けると、「食鳥処理(生きている鶏をしめる工程)」と「食肉加工(お肉を解体したり、加工品を製造する工程)」の2つに分けられます。
この「食鳥処理」が曲者でした。食鳥処理工程が平日毎日あることで、食肉加工工程への着手が遅くなる⇒加工品などを作る時間がなくなる⇒結果、残業で対応しなければならないという悪循環になっていたのです。
また、食鳥処理も自社の鶏だけではなく、近隣の青森シャモロック生産者や小規模で鶏を飼育しているところの食鳥処理も受託していたのも原因でした。受託作業を優先すると自社の鶏に手を付けるのも遅くなります。
この食鳥処理工程をどれだけ効率化できるのかが定時退勤のカギでした。
2023年8月現在、食鳥処理日は週2回、自社鶏のみとなっています。時々、隣町の青森シャモロックも処理しますが、それ以外の鶏は一切処理しないことにしました。2日ある食鳥処理日の内1日は、その日のうちに発送まで行うため、慌ただしくなります。一方、発送のない食鳥処理日はぎりぎりまで処理羽数を増やすようにして、翌日に解体等の作業を行うようにしています。食鳥処理が毎日ではなくなったことで、羽数が多い時やトラブルがあった時など万が一解体作業がその日のうちに終わらなかったとしても、翌日に持ち越すことで残業せずにすむようになりました。

従業員のマルチスキル化

「仕事の属人化を防ぐ」、会社員時代に業務改善プロジェクトの事務局を担当していた時によくコンサルの先生から言われていました。
仕事の属人化は、中小企業において百害あって一利なしだと私は思っています。実際、当社では工場長がなんでもできる人だったため、私が何を言っても「社長はできないんだから口を出すな」という状態でした。まずは、「誰が」「何をできるのか」をまず把握するところから始めました。
この時、会社員時代の教育管理がだいぶ役立ちました。部署の仕事ごとに求められる技術・知識を3段階で自己評価・所属長評価するシステムを簡易的に導入したのです。「できる」人が一人しかいないところに、他の従業員を充て、100点ではなくても60点くらいにはなるように技術を習得させました。今では9割の業務で複数の従業員が「できる」ようになりました。もちろん私を含む事務所勤務の従業員もです。
今年の5月に大型ギフト案件を受注して、製造がひっ迫した際も事務所含めて「できる」人が確保できていたおかげで、ギリギリではありましたが完遂することもできました。
「自分しかできない」というのは、その人のうぬぼれだと思いますし、それでは会社(組織)は回らない。ましてやその状況を作ってしまうのは経営者として恥ずべき行為と思い、マルチスキル化を推進しています。

マルチスキル化を進めた結果

マルチスキル化を進めることで大きく2つの効果がありました。
一つ目は私や管理職の「従業員に対する執着」がなくなりました。
今までは「この人しかこの作業ができない!」となると、なんたかった引き留めようと、時給を上げたり、わがままを聞いたりしてきました。
しかし、マルチスキル化を進めたことで、「この人がいなくても、業務は進められる」と踏ん切りがつき、組織の新陳代謝が加速させることができました。
二つ目は前段にもある通り、事務所の従業員も含めて作業ができる状態になったことで、更に効率が上がったと感じるようになりました。事務所でも隙間時間に作業に入ったり、急遽休みの人がでてもスムーズにフォローが
入れるなど、仕事が組み立てやすい状態になりました。

これからの展望

最低賃金アップや資材高騰など頭が痛くなることばかりで、経営者は悩みが尽きません。御上に対して文句を言いたいことはたっぷりありますが、まずは足元からできることを地道にやっていくしかないのかなとも思っています。今考えているのは、食鳥処理工程の時間短縮と加工品の統廃合です。
見通しはついているので、あとは実行のみ!!!

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