某月某日(某) Iちゃん

女の子といちゃいちゃするお店に行くことが日常になりつつある。おかげでお金が溶けていくスピードが早い。一年後には無一文かもしれない。

社内研修後の同期との飲み会帰り、帰路が途中まで一緒の某女性と偶然を装い帰路を共にしようと思った。が、その試みが失敗に終わり、お酒で意識が朦朧としていた私は大宮まで何とかたどり着くとATMで一万円を下ろした。

終電にはまだ余裕がある。
二次会をパスし帰路へ向かった某女性を追いかけた結果、その女性を見失ってしまった。私は明らかな不完全燃焼であった。

東口を降り左にそれ、まっすぐ歩みを進める。以前から目星をつけていたお店に迷わず入店する。正直、何をどこまでするお店なのか分からず入ったが、45分コース1万7000円から遊べることは調査済みであった。この業態であるならば、安く思える。

1万7000円に加え、選択肢が一人しかいないのに「その子で」と言ったら起きた謎の指名料1000円。計1万8000円。たかが1000円。そう思う。薄給であることをこの瞬間だけ忘れていた。

待合室に通される。先客が二人いた。指先を清潔にしその時を待っていると、真っ先に店員に呼び出される。一番安いコースだからなのだろうか。

待合室を出て奥にある階段へ向かう。階段の先に女の子が待っているらしい。一段一段歩みを進める。視界の端に女の子の姿が見える。小さくてにこにこした子だ。

手慣れた彼女の誘導に従う。お互い服を脱ぎシャワーを浴びる。お話ししながら身を清めていく。体の表面を泡で覆われる。彼女の手のひらが私の胸元から下半身にかけて移動していく。

身を清めた後、歯ブラシを渡された。どうやら歯を磨くらしい。彼女の歯磨きを横目にしながら、歯を磨き口をゆすぐ。そして、体を拭いたら部屋の片隅のベッドで仰向けになるよう、言われる。

一連の流れを何となくこなしてしまったが、もっと楽しめる余地があるかもしれないと、今になって思う。まあ、この業態の店は初めてだからこんなものだろう。

ベッドに寝っ転がる。彼女の体が全身に迫る。肌が柔らかでとてもさわり心地がよい。その後、彼女は口を使い下半身を弄び始める。今のところ私はされるがままである。下半身は確かに反応を見せているが、過度のアルコール摂取後であるからか、若干の尿意を常に感じていた。

何をどこまでするのか分からない私は、とりあえず上に乗ってほしい旨を伝える。彼女は滞りなく私の下半身を薄い膜で覆わせる。
「そうか、そうなのか」
と私は思う。表面で擦るだけだと思っていた私は不意打ちを喰らったかのような気になる。

滑らかな不毛地帯を抜けた先に待ち構える断層へと彼女は案内する。神秘的な地表を前に硬直した私は恐る恐る、彼女に手を引かれる形で入っていく。

私は暗闇に覆われた。
前後が不確かな暗闇に。体の表面が湿気で覆われる。暗闇の中で地鳴りを感じる。大地が上下に震えているのだ。

私は小高い丘をまさぐったりしながらその様子を眺めていた。私はいったん不意に外に出てしまったが、もう一度断層へと向かう。しばらく断層内の探検をした後、天地がひっくり返った。いや、ひっくり返したのだ。

広大な大地を無意識のうちに自分の手で操るようになる。

支配者になることに、優越感を抱けず、大地を私有物のごとく身勝手に扱うことに不快感すら覚えた。理性を最後まで放棄できなかった私は本来望まれる物語の終焉を迎えることなく、ひどく中途半端で不完全燃焼な終わりを迎えてしまった。

私は彼女に詫びを入れた。申し訳なさでいっぱいになったが、彼女は最後まで優しくにこにこしていた。

私は不甲斐ない気持ちでいっぱいだった。
不完全燃焼だった飲み会帰りを完全燃焼すべく訪れた先でまた別の不完全燃焼の感情に苛まれてしまった。私は何をしたかったのだろう。楽しいには楽しかったが、これで良かったのだろうか。私はもやもやした気持ちでお店を後にし都会の雑踏へと消えていった。

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