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ここがインド、メインバザール(インド旅②)

首都ニューデリーのメインバザールというからにはネオンに包まれた夜の街を想像したくなるが,どちらかといえばここは夜の上野,アメ横に近い.この時間に営業している店は殆ど無く,極めて暗い.道端には座り込む人々,犬の群れや牛,まだ捌けきっていない水溜り(舗装は無い)が私達を迎えてくれた.便利な日本から突然こんなところへ来てしまうと本当に不安になる.大体,今夜の宿を探せるのか.こんなところを歩き回ることなどできない.すぐに宿を紹介するという男が何人も現れた.

「チープホテル?」「コンニチワ」「アニュハセヨー」などと,どんどん人が集まってくる.こんな時はとにかく早足で歩いてどこかの宿に一端入ってしまうのが良い.ここは安宿街でもあるのだから.頭の中には出国前に読んだ「歩き方」(ダイヤモンド社の「地球の歩き方」のこと、以降も「歩き方」と称す)の安宿マップのことがあった.そのマップだけ見ていれば選び放題と思えるのだが,この暗い商店街で看板も薄暗くてよく分からずインド人に囲まれた状況では,とにかく目的宿を決めてそこへ向かって毅然と歩いて行くしかない.”目的宿確認”のためには落ち着いて「歩き方」を参照したい.そのために,とにかくどこかの宿に入りたいという状況だった.面倒くさいのである.

なんとか”仮”宿を見つけて”取り巻き”から離れ,改めて「歩き方」の安宿街マップを見ると,本当にこんなにあるのかというくらいの宿情報がある.現在地からの距離や値段を考えて,「パヤル」というゲストハウスに向かうことを皆で確認した.

安宿街ということで,タイのカオサン通りを想像していたが,ここは全然違う.そんなことを考えながら,足早に,夜道を進むと「パヤル」の看板を見つけ,無事チェックインすることが出来た.

取り敢えず,これで今日はゆっくり出来る.夜の空港から宿まで,トラブルに遭うことがなかったのは,やはり事前に情報を得て慎重かつ堂々と行動したからだと思うが,この空港からのタクシーに関してのトラブルの話は旅先で何度も聞くことになる.

パヤルには日本語が少し話せる店主がいた.店主といっても自分より少し年上(30歳くらいか)くらいの風貌でなかなか端正な顔つきであった.彼は「良く無事でこれたね」などと冗談交じりで言いながら150ルピーを受け取ると部屋のキーを渡してくれた.その上,コンビニも無いメインバザールで水や食べ物など色々いるだろうと対面の食堂に出前をオーダーしてくれた.「フライドライス・・・,それと水のボトルが欲しい」と言うと「少し待ってね,部屋に持って行くね」といった調子である.トクナガ君も彼には少し気を許し始めたようだった.

時間は午後11時くらいだったが,2時間前にインドに着いたことを考えると不思議な気持になる.異文化が一度にやってきて,またそれが日本とは全然違うものであるがゆえになのか,とても2時間前に来たとは思えない.おそらく皆そう思っていたのではないだろうか.3人で部屋を囲み,緊張の解けた面持ちで温かいフライドライスを食べる.このフライドライスが美味しくないはずはなかった.

それぞれ別の部屋に分かれた.東急ハンズで買った鎖でリュックとベッドを繋ぎ南京錠で施錠すると,インド初日は終るのだった.

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