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明日、Tさんが戻ってくる。

「あんな風に突き放しておいて、また呼び戻すだなんて」と、思ってしまっていた。

64歳のTさん。現場の縮小に伴い席を失ったが、次の行き場も見つからず、契約終了となってしまった。本人は「まだまだ働きたい」と言っている。色々と調整に奔走したが、残念ながら退職することとなってしまった。去り際に「連絡待ってるからね」と言ってくれたから、空席が出来れば呼び寄せたい気持ちはあったのだが、なんとなく、そんな簡単な話ではないような気がしていた。でも、それはTさんのことを考えた"迷い"ではなくて、私の中だけの問題だったのかもしれない。

***

4月の中旬、一人の社員から「5月末で退職したい」と話があった。転職が決まったのだという。

席が一つ空く。

会社からは「Tさんに声かけてみたら?」なんて言われたけど、「どんな思いで別れを告げたと思ってるんだよ」と怒りがこみ上げた。

その「怒り」って何なのだろう。

所詮は、私の手間や心労が台無しになるって程度のちっぽけなものだろう。

Tさんに電話をかけた。

想像したような大感激ではなかったものの、「ぜひ、お願いします」と喜んでくれた。

手続きが進んで、お客様に報告すると、Tさんが去るときに離任を悔んでいた方々も、大変喜んでくれた。Tさんにとっては経験の無い担当業務だが、なんとか玉突きではめられることになり、契約も無事済んだ。

Tさんが明日、戻ってくる。

それにしても色々なことが起こる。


よし、新しい気持ちでお迎えしよう。

いつも読んでいただきありがとうございます。