見立てについて2
さて先回は見立てについて、私自身がどのように進めているのかをまとめました。
その過程を振り返ったことがあり、活用したツールについても簡単に説明しています。
記事をまとめる中で、見立てにも種類があるなとぼんやりと思ったので、その点を一度整理したいと思います。
また、支援を実践する中で見立てに関して注意しておきたい点も整理します。
ではまとめていきましょう。
見立ての種類
先回の記事では、ある情報から業務上の課題を推測し、対応を検討したという流れを例として提示しました。
この例のように、私の実際の動きに関連する見立てがひとつあると整理します(①)。
一方で、本人の行動の傾向や障害特性を見立てるものもあるなと感じました(②)。
恐らく実際の支援の場ではまず、②が先に来て、次に①に繋がるものと思います。
新規で面談し、本人の情報を知って、傾向や特性を見立てる(②)。次に職場や現在本人が置かれている場を知り、②に照らしてその場に必要な私の役割や支援内容を決める(①)。
といった順序でしょうか。
今一度、先回の記事ではこのように例を挙げました。
情報を得た時点で、もうひとつの評価が挟まっています。
それは、「仕事のステップアップについてイメージが不足している。社会経験が乏しいのかも」といったものでしょうか。
だからこそ、画像にあるような②の評価に繋がっていくわけです。
今回挙げたもうひとつの評価に至るには、画像にある発言だけでない他の言動も関連してきます。
例えば、「高校を卒業してすぐに訓練施設の利用を開始した」とか「母親とは仕事のことをあまり話さない」とか「発達障害があり、先のことをイメージすることが苦手」とか「支援員からは思い込みが強いとあった」などなど。
これらから総合すると、「社会経験が乏しいかも」と見立て、それが職場という場面での発言と相まって、画像にある②の評価に繋がり、③の対応に至ったという流れが正しいでしょうか。
ひとつの発言からイメージしたわけではなく、複数の事柄を根拠としてイメージしたわけです。
これは根拠として弱いでしょうか。どうでしょうか。その他にもいろいろな場面も含まれています(後出し)。来所の時にノックせずに入ってきたとか、帰る時に椅子を引いたままにしたとか、名刺を片手で受け取ったとかとか・・・。
記事では伝えきれませんが、そういった複数の情報からひとつ、または複数の見立てを立てています(お、言い訳か?)
根拠を持って見立てていますよ!(そうであってくれ)
一方で、この「社会経験が乏しい」という見立てに終始するのは危険ですよね。
見立てに関する注意点
見立ては複数の情報を根拠として成立させていきます。
しかし、上記の複数の情報を「社会経験が乏しい」に繋げ、それだけで生じている言動だと片付けるのは危険です。
他の見立ても同時に成立することがあります。というか、私はほとんどそうなる。
例えば、画像の①の発言があった時に、本当に周りの人がサボっているのかもしれないですよね。めんどくさいからお前は洗車でもしとけという発言があったのかも(それはとんでもねえ会社だな)。
そういった複数の可能性を切って捨てず、いくつかの見立てを作って、どのようにしたらその精度が上がるかを検証していく必要があります。
今回のことで言えば、本人からだけでなく、会社側にどのような意図でひとりでの洗車を指示したのか、今後もこのような状況は続くのかを確認すること、本人にもう少し発言の意図を聞いていくことで精度が上がると思われます。
個人的には決めつけないことが重要で、一度見立てたとしても、その後に修正をどんどん加えていくべきだと考えています。
今回の例でいえば、本人の経験が蓄積すれば解消される可能性がありますしね。逆に蓄積がされない場合もあるでしょう。その時は大変ですね。大変でした。
もうひとつ、見立てに関して注意しないといけないのは、他機関と共有する時のことです。
他機関と情報共有する際に、情報だけでなく見立てや所感といったものが入り混じります。その時に、伝えている内容が“事実”なのか“見立て”なのか“所感”なのかを明確にしておくことが重要です。
実際に起こったこと、発言などは“事実”として伝える。
それらを根拠にして自身が見立てたことは“見立て”として伝える。
さらに見立てとも取れない根拠があまり明確でないものは“所感”として伝える。ここは特に慎重であるべきですが、逆にとても重要かもしれないとも思っています。
自分はこのように伝えることを整理して伝えられたらいいなと考えています。
なので、相手から聞いたこともそれはどこに該当するのかを聞いています。ここがごちゃごちゃになっている人もいて、そのまま受け取っていざ蓋を開けると違う状態だったということもある。
自分もそうならないように意識をしているところです。
まとめ
見立てはまず、本人の複数の言動から性格傾向や障害特性を分析することから始まります。「なぜそのような言動が生じているのか」ということを、複数の言動から根拠づけていく。
そこから、そのような性格傾向や障害特性が、現在置かれている環境ではどのように課題としてもしくは長所として生じるのかをイメージする。
見立てはひとつだけでなく、複数並行して立てていく。つまりは可能性を複数挙げ、よりリスクや重要性の高いものから確認していく・対応の準備をしていくことになります。
見立てたら終わりではなく、複数ある見立ての精度を上げるためにも情報の確認や更新をおこなう。
その繰り返しで常に最新の精度高い見立てをつくっていく。
注意すべきこととしては、自身の見立てを含めた“情報”を他機関に共有する際に、それが“事実”なのか“見立て”なのか“所感”なのかを明確にすること。
それらが混在していると、相手の見立てを阻害したり、場合によっては関係する方に不利益が生じたりしてしまいます。
自分が他機関から情報を得る時も同じ。これらを分けて伝えてくれるか、そうでなく、ごちゃごちゃのまま整理できない相手から聞いているのかを自覚して情報を得た方がいい。
怪しいと思ったら自分で事実を確認するまでは“所感”として保留しておく。
見立てることは支援の醍醐味だと思います。
一方で躓く部分でもある。
「どのように対応していいのかわからない」と感じる時には、自分の見立てともう一度向き合う。そうすると、見立ての不足、ひいては情報の不足に気付くことがあります。
見立ては精度が重要です。楽しさを感じながらも真摯に、慎重に向き合っていきたいと思います。
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