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本人主体と保身

支援者として「本人主体」は間違えてはいけない視点だと思います。
一方で、「本人が希望しているから全てOK」というのははき違えているのではないかとも思います。

30代の発達障害を持っている方からの相談で考えることがありました。
とりとめがないかもしれませんが、考えや感じたことを並べてみます。

経緯

発端は本人からの連絡。
転職相談を受けたところに始まります。転職の理由を聞くと「自立のため」と答える。
本人の言う「自立」とは、現在の親元を離れ、アパートなどで自活することでした。さらにその理由を聞くと、「親の言動が厳しく感じられ、精神的に追い詰められる」という内容で、実際に傷を見たわけではありませんが、自傷行為に至ることもあるようでした。

そこで私がお返ししたこととして、ニーズとしては「安心して過ごせる空間を得ること」で、その手段として思いついたことが「自立(一人暮らし)」でよいか、と。
本人もそうだということで、ニーズ把握ができたと判断しました。

本人の思いついた一人暮らしという手段の他、グループホームの利用やたまの外泊(ホテルや漫喫)を並べてみました。
グループホームについては好感触。外泊については自宅に戻る際のストレスが強化されるため除外。
親の理解を進める(=厳しい言動を抑える)ことも確認しましたが、難しいのでは、と本人の言。
本人から自立について親には話していなくて、喧嘩になってしまうため避けていると言われていました。

この間に自立を想定した収支の確認と、相談員への顔つなぎも実施。
現在の手取り約10万円では心許ないと判断し、障害年金申請の提案をおこないました。
本人曰く、グループホームや年金の話を親にちらとしたとき、「そんなものに頼らず、まずは自立できる収入を得るよう転職しろ!」と言われたと。

この時点で私としては本人から聞く親の印象をそのまま鵜呑みにするかを考えていました。
親の理解がないまま進めることで、自立に向けた動きが上手くいかなかった時に、帰る場所を失うことや、本人と親の関係がこじれること、親から支援者に不信感が生まれ、クレームが生じる可能性も想定しました。

本人は自分の気持ちと親の意見の間でどう動けばいいか決めかね、ストレスも感じているようだったので、いつもより踏み込むつもりで親を交えて話すことを提案。
親を交えることで本人が責められる可能性も生じること、支援者からは説得することはできず、支援の意図を伝え、親の意図を確認することになるだろうと確認。その上で本人がその機会を希望するかと聞くと、希望するとのことで、話し合いの機会に至りました。

本人から「自立像」について話をしてもらいました。障害年金と収入で組み立てることもひとつ。転職についてはコロナの影響もあり難しい。また収入増の転職は本人が必要としている配慮から難しく(当たり前に転職のリスクはある)、現状の仕事も大事にしたほうがいいことを支援者からは説明。

親からは障害年金は申請が通っても更新が確約されているわけではないというリスクがあると指摘がある。また、過干渉についての自覚は親から話があり、心配からくるものだと理解できました。本人もうっとうしいと思っているだろうという認識でした。
本当に本人が希望する自立(=一人暮らし)を目指すならばまず収入。障害者雇用にこだわらず、長距離輸送業や夜勤などをすれば現実的になるだろうと意見あり。
親からの提案として、まず過干渉を控えること、衣食住の「住」を保障するするので「衣食」を自己負担することで「自立」としてはどうかと言われました。

ここで私から、本人の「自立」の目的が「親の過干渉からの脱却」であることを強調。その点の理解を促しました。
さらに、本人の希望を汲んで様々なリスクを踏まえて送り出すことは親として可能か、失敗した時の受け入れは可能か聞くと、「難しい」と回答がありました。

本人は今回の話を受けての感想としては「うーん」と、明確には言われず。
最後まで絞り出したのは「できれば一人暮らしを」ということでした。

総括として自分からは
・一人暮らしに向けてまずは実家で「衣食」の自立を図ること。
・親からの過干渉は控え、その上で本人の自活能力を確認すること。
・年金は申請については可。それを頼りにした一人暮らしへの移行は控える。
と確認。

今回の結果はひとまず持ち帰ってもらい、不満や疑問点が生じたら本人の相談に継続して乗ることを確認したところです。
本人が面談の時間内でそれを整理し、親の前で表現することは難しいと思ったので・・・。
また、親には成人の希望なので親の意見は聞きながら、本人の意向はないがしろにできない。必要に応じてまた親と相談したいと、了承を得ています。

思ったこと

やっぱり成人への支援でも親の意見はないがしろにはできないと思っています。
ここがもうずれていますかね?
経緯の中にもありますが、本人の意見だけで話を進めてしまうと、親と本人、親と支援者の関係がこじれかねず、そうすると本人への保障が不足してしまう場合もあると考えるからです。

本人の話を親に伝えながら、理解を得ていく努力はこれからも続けていくと思います。

一方で、親がよかれと思ってやっていることが本人の負担になっており、その「よかれ」の部分が本人には伝わっておらず、見方によって「虐待」という言葉に表現されかねない場合もあります。
ここは「支援者が判断すべきではない。疑わしきは通報」という意見もありますね。

今回、一応の結末に至りましたが、これが本人にどう映ったか。
これは今後も確認していく点だと思います。
前提として「説得しない」とか「本人の思う通りに進むことは保証できない」とは伝えていますが・・・。我ながらコウモリ野郎ですよね。

どちらの気持ちもわかるのです。会ってみた所感として、愛情のない親ではないと感じてはいますし、聞く耳も持っていると感じますが・・・。
本人の感じ方というと・・・。これは障害の特性も影響していると言えばそうだし、それだけだと断じてはいけないとも思うし。うーむ。
(というか年金更新が確約じゃないことをリスクとするなら、転職後に続くかもリスクになり得るし、なんなら現職がずっと存続するかもリスクですよね)

元も子もないですが、私の立場としてここまで立ち入る必要はなかったのかもしれない。
そう言うと手放し、お手上げという感じですが。
実際に対応する相談員に自立の相談は振っていくことが大事だったのかもしれません。
一方で自立を考える上で就労は外せませんから、全く触れなくていいわけでもなく。

まとめ

改めて本人から「やっぱり一人暮らしを」と言われた時の対応が重要でしょうか。
この点についてもう少し考えておかねば。

やはり本人の希望だけで進めないし、いかに親の理解を得ていくかという視点で考えてしまいます。
本人への保障もそうですが、何よりクレームに発展することを恐れている私もいます。

赤裸々ですが、私は保身的なのだと思います。
それに本人の気持ちもわかるし、親の心配もわかる。
改めて一緒に入った担当者や上司、同僚と意見交換してみよう。

長々とありのまま綴ってしまいました。
率直なご意見があれば、受け止めたいと思います。

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