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校長室通信HAPPINESS ~校長の挑戦 「教えないサッカーの授業」

校長なのに…体育の授業をやりました

 先日、2年生4クラスで体育の「サッカー」の授業をやらせてもらったところ、ありがたいことに6年生からも「やってほしい」という要望が…!ただし6年生の先生方からは「その先をどうやって展開していくのかも教えてほしい」というリクエストつきです。
 まあ、そりゃそうだなということで、何十年かぶりに「指導案」を書き、6時間扱いの「指導計画」を6年生の先生方に提案しました。そして、校長なのに、午前中4時間も使って、授業にチャレンジさせてもらいました。

教えないで、気づかせる

 体育のような教科指導の目的は2つ。ひとつは「その教科の知的文化遺産である知識や技能を次世代に継承する」こと。もうひとつは「与えられた課題を解決するために、自ら考え、判断し、表現できる子どもを育てる」ことです。
 この2つの両立は実に難しい。「身につけさせなければならないけど、押し付けてはいけない」からです。これが教科指導の最大の課題です。今回の授業では、教えないで、子どもたちに大切なことを伝えていく…そんなことを自分のテーマにして、授業をやってみることにしました。その報告です。

子どもの「考える機会」をうばっていませんか?

 まず「3人でパスをしながら移動」です。子どもたちには始める前に、「3人でパスをしながら、カラーコーンを回って帰ってきてください。」と言葉だけで簡単に指示。「どういうこと?」と悩んでいる子もいますが、お構いなしに始めちゃいます。何人かの男子がそれらしくやっているのを見て、「あ、そういうことね」とやっと動き出します。ところが思ったように目的のカラーコーンに近づけない。グループによっては三角形になって、その場でボールを蹴り合っているだけ。ここで子どもたちを集めます。「あのーすみません…。言われたとおりにやっていない人たちがいるんですけど…。その場から全然進まないのはどういうこと?。」ここで笑いが…。
 そこで「パスをしながら前に進むにはどうしたらいいですか?」と問いかけました。子どもたちは「前に蹴る」「次にもらう人が前に走る」と言いいます。そこで、ちょっとだけやって見せてから、「じゃあもう一度やってみましょう」と再チャレンジ。すると子どもたちの動きが変わります。
 これと同じ流れで、「2対1のパスキープ」もやってみました。
 ここで大切なことは、「やる前からあれこれと教えない」ということ。でも、教師はつい教えたくなる。たぶんそれは「子どもは教えなければできない」「丁寧に教えることが教師の仕事」という誤った認識からです。教師の丁寧すぎる指導は、子どもの「考える機会」を奪います。コツを教えるのではなく、「自分がどうなっていたのか」「どうすればできるか」を考えさせること。そうすれば「考えるクセ」が身についてくるはずです。

ルールは自分たちで考える

 授業の最後はグループが2つに分かれてゲームです。でも7人のグループだと「4人対3人」という不平等が生まれます。これをどうするか。子どもたちに聞いてみると、「4人のほうのゴールの幅を広くする」と出ました。「そうですね。カラーコーンでゴールを作っているのはそのためです。一番面白いのは1点を争うゲーム。そんなゲームになるようにルールを変えて面白くしてください」とアドバイス。おしとやかな女子の多いクラスでは、「男子がシュートを決めたら1点、女子が決めたら5点」と、私がルールを決めて、ルールを工夫する面白さを体感してもらいました。
 「ルールの工夫」は、大切な「思考・判断」の場ですが、だからといって何でもかんでも変えればOKってわけにはいきません。ルール変更の目的はあくまでも「みんながもっと楽しめるゲームにする」です。ハンディを埋めるためにどんなルール変更を考えたのか、これが評価のポイントです。
 その後の子どもたちのゲームでは、幅が広いゴール、GKがいるゴール、いないゴール…とコートによってルールはまちまちでした。グラウンドを見た方はお気づきだと思いますが、コートはラインを引きません。おもしろいのは、ラインがないのに、「出た!」と言ってスローインで再開しているところがあったこと。子どもたちは、不都合があれば自分たちでルールを変えたり、付けたしたりします。こういうときはたいてい、普段からよく遊んでいる子がリーダーシップを発揮します。

子どもたちに考える「余白」を…!

 結論。子どもたちが考えたり、工夫したりするようになるには、教師がどれだけ「考える余白」を作っておくかです。子どもたちは第1時にも関わらず、よく考えていました。もちろんそれは、普段から「考えるクセ」をしっかりつけさせている指導あってのことですが…。6年の先生方、ありがとうございました。

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