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【映画感想109】ホット・ファズ-俺たちスーパーポリスメン!-/エドガー・ライト(2007)


【あらすじ】
エリート警察官のニコラスは、堅物な性格と有能さを疎まれて田舎町に左遷させられてしまう。
能天気な町にも職場にも馴染めない中、ある不可解な事故死の調査を開始するが…。

【ネタバレ感想】
「ショーン・オブ・ザ・デッド」のエドガー・ライト監督の2作目。
あらすじだけ読むと真面目なクライムものっぽいのに、カメラワークと妙にズレた間の取り方でコメディになってるという異質な映画でした。笑

・キャラクターのよさ
バディものの醍醐味といえば正反対な2人がお互いに影響を受けて変化する点だと思うのですが、
真面目すぎて融通の効かないニコラスが能天気なダニーの影響でパトロール中にアイスを食べるようになっていたり、ダニーがニコラスのセリフを「かっけー!」と言わんばかりにキメ顔でしょっちゅう真似するところが面白かったです。

まさかこのバディあるあるがラストに繋がるとは…

・やっぱりカットが上手い監督
テレビ業界には7秒間の掟というものがあり、
7秒以上絵代わりしないと視聴者がしんどくなるのでカメラを切り替えるそうです。
(人間は集中しすぎると緊張してしんどくなってしまい、緊張を察知した脳が集中を下げてしまう)
これを意識してるからしてないかはわからないのですが、この映画は短時間でカットがすぐ切り替わるので確かに集中力が切れない気がしました。

逆に言うと集中しっぱなしになるわけで「映画って見ててなんだかつかれるんだよね」という人にはあんまり向かないかもしれません

・「飽きない」と「疲れる」の境界線
先ほどの「7秒ルール」はエンタメ映画にも通じるのか、最近みたインド映画のRRRも画面の切り替えが多い印象がありました。

しかし、RRRが3時間越えで一切退屈しなかったのに対してホット・ファズは途中でちょっと疲れる感があったのは、もしかしたらストーリーの進むスピードじゃないかなあという気がします。

RRRは異常に展開が進むのが早い(マジで早い)一方、ホット・ファズでは犯人は捜査の進みが遅いです。しかし道中の伏線や登場キャラが多いからこそラストが面白いところもあるので、削るのが正しいのかは難しいとこだとも思う。

ただ、監督最新作の「ラストナイト・イン・ソーホー」は、逆にいろんな説明を省いてまでかなり全体を短くしてる印象がありました。作品により意図的に全体のテンポ変えているのかもしれません。

・コメディの皮を被ったB級映画(褒めてる)
殺人シーンの安っぽいスプラッタとか、なんとな〜くその片鱗を見せつつ最後の最後に思いっきりB級にぶっちぎっていく映画でした。
爆発オチまであるのがいっそ清々しい。

ここのラストを面白いと感じるか、なんでやねん!となるかが評価の分かれ目になりそうですが、わたしはあの「やりやがった!!」感は好きなのでスーパーの精肉コンビが好きです。

武装する老人たちがロンドンゾンビ紀行っぽいな…と思って調べたら逆で、ロンドンゾンビ紀行が監督一作目の「ショーン・オブ・ザ・デッド」のリスペクトを込めて制作されたものでした。

エドガー・ライトという監督

ショーン・オブ・ザ・デッド
ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-
スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団
ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!
ベイビー・ドライバー
ラストナイト・イン・ソーホー

公開中の作品はこれで全てみたことになりました。
個人的にワールズ・エンドの哀愁漂う主人公が1番好きです。あれは酒クズによる酒クズのための救済映画。ビールを飲むシーンがいつも美味しそうなんだけど、監督はビール好きなんだろうか。笑

この監督の面白さは音楽と映像を合わせるのが上手さとスピード感のあるシーンが取れるところ、

そしてそれにも関わらずふざけたB級の方向に舵を切れる思い切りのよさとサブカルよりの感性なんじゃないかと思います。

(B級映画という言葉はいわゆるクソ映画と同じニュアンスで使われることもありますが、実際のところ面白いB級とそうでないB級が存在するわけで、独特のセンスが必要なジャンルだと個人的には思います)

最高級の食材でカップラーメン作るみたいな「なんでそっちをつくるんだよ!!」という。

次回作がどんなジャンルなのかたのしみです。

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