あの日僕らは魔法使いだった
多くの人が夢見たこと
「空を飛びたい!」と思ったことがある人は多いのではないだろうか?
飛行機に乗るという行為ではなく、自分自身が風を切りながら飛ぶという夢。
えっ? そんなこと夢見たことない?
あっ、なんかすみません……。
でっ、でもさ! 特に男性諸君は思ったんじゃないの?
「ドラゴンボールのビーデルは普通の人間なのに空飛んでんじゃん! じゃあ頑張ればオラだって!!」とかさ!
……茶番はここまでにしておこう。これ以上同意を求めたら私の中の中学2年生な部分が溢れ出してしまう。
緑色のペットボトルをいい感じに切って、目に当てて「スカウターだ! 戦闘力…たったの5か…ゴミめ」とか言ってないんだからね!
ちなみに今回はジブリの名作『魔女の宅急便』がすこーーーーーーしだけ出てきます。
僕の右手には竹ぼうき
あの日、教授を怒らせた私は、罰として後輩と一緒にボランティア清掃をやらされていた。いや、やらされていた時点でボランティアでも何でもないけどね! 罰って言っちゃってるし!
「もぉ~! 先輩のせいで……」
後輩のセリフから推測いただけると思うが、彼は完全に巻き込み事故。
詳細を書くと長くなりすぎるので割愛するが、教授の意に沿わないことをやってしまい、共犯でも何でもないのに「こいつもやりました!」と盛大に巻き込んだのである。いや、ホントすまん。
「そう言うなよ。俺も腹減ってるしさ、ハンバーガーおごってやるから機嫌直せよ!」
「ホントっすか? めっちゃ食いますからね?」
「昨日パチンコで勝ったからいくらでも好きなだけ食え!」
典型的なダメ大学生である。
食欲を刺激された後輩の頑張りのおかげで早めに掃除が完了。
大きなゴミ袋5袋分ぐらいの落ち葉を掃除した。えらい。すてき。
しかしちょっとした問題が起こる。
ゴミ捨て場は近かったのでスムーズに処理できたのだが、右手に持っていた竹ぼうき、これが問題だった。
掃除用具入れは掃除を完了した場所と対極にあり、そこそこ遠い。
私達はお腹が空いていたため、一刻も早くハンバーガーを食べに行きたい。
かといって道具を放置して行っては、また教授に怒られるかもしれない。
するとここで私にナイスアイディアが浮かぶ。
読者様は「ぜってぇナイスなアイディアじゃねーだろ!」とお思いだろうが、本当にナイスアイディアだったのだ。
ロードショーのせいだ
「この時間、たぶん混んでるよな?」
講義があらかた終わった時間、大学生だけでもごった返すのに中学校も高校も近かった。混んでいるとみて間違いないだろう。
「あー、たぶん混んでますね」
「だろ? だからドライブスルーを使うんだよ」
「ドライブスルー? 俺の友達がふざけて歩いて入ったことあるんすけど、普通に怒られたって言ってましたよ?」
後輩が呆れ顔で物申したが、誰が歩いて入ると言った?
「それは歩いて入ったからだろ? 俺の右手には今なにがある?」
「竹ぼうき、、、、っまさか!?」
「昨日ロードショーで『魔女の宅急便』やっててさ。竹ぼうきは乗り物だ」
「違います!」
「違わない! 角野栄子さんと宮崎駿監督とキキとユーミンに謝れ!」
「宮崎駿とキキは何となくわかりますけど、ユーミンは主題歌歌ってるだけでしょ! あと角野栄子って誰っすか!」
「原作者だよ! 児童文学書を書いた人で、宮崎駿がそれを映画化したんだよ!」
「知りませんよ!」
ちなみに上記の会話、ノンフィクションだ。
私はちょっとだけジブリ作品に詳しく、後輩は後輩でお笑い大好きなやつだったのでツッコミ性能が高かった。
それからもギャーギャー言い争ったが後輩は空腹に勝てなかった(のか私に反抗してもムダと思った)ようで、竹ぼうきに跨ってハンバーガーショップに行くことになった。
大切なのはリアリティ
いざドライブスルー、しっかりと竹ぼうきに跨った。竹ぼうきに2ケツ。
しかし大切なのはリアリティだ。
「竹ぼうきは音が出ないから不審に思われるかもしれない」
そういった私を、店員よりも先に不審な目で見てくる後輩。
やめろ、見つめるな、照れるだろ。
「車もバイクも馬も、エンジン音とか鳴き声がするだろ?」
「車とバイクはわかりますが、馬って……」
「知らないのか? 馬とか馬車は規則さえ守れば軽車両扱いされるんだぞ?」
知らなそうだったから教えてやったのに、なぜか冷たい目を向ける後輩。だからやめろって! そんなに褒めるなおだてるな!
「とりあえず、お前は後ろでブルンブルンッとエンジン音を奏でろ」
「嫌っすよ!」
「ハンバーガー食えなくてもいいのか!?」
この脅しにもならない脅しで黙るあたり、後輩も相当なアホだ。
私はオーダーを通さなければならないので、後ろに乗ってる(?)後輩にはエンジン音を奏でてもらう。
よし、準備は万端だ! ←
いざ注文
前の車両がオーダーを終えて前に進んだ。
次はいよいよ私達の番だ。
「次の方、前におすすみ、、、ください?」
なぜか語尾が疑問調だったが、言われたとおりに前に進む。
さぁ、いざオーダーの瞬「徒歩の方は店内でご注文お願いします!」
何てことだ!
どうやら声の主にはこの2人力の竹ぼうきが目に入ってないようだ!
しかしここだ!
さぁ後輩よ、さっそく出番だぞ!!
「ブルンッブルンッ!」
あまり心地よくない低音のエンジン音が響いた。
スピーカーから漏れる「ウヒッ」という小さな笑い声。良かった、どうやら彼女にも我々の乗り物が把握できたようだ。
「えっと、ハンバーガー2つと……」
「おっ、お客様、注文は店内で「ブルンッブルンッ!」プフッ、ヒヒヒ…」
「アイスコーヒーとバニラシェイクと……」
「でっ、ですから「ブルンッブルンッ!」フヒッ、ヒヒヒヒヒ」
結果、買えました!
そりゃそうだよね、だって乗り物に乗ってたらドライブスルー利用できるんだからね!
※ 相手せず通した方がいいという判断が下されたという事実が後日発覚する。
眠れない夜に読んでいただけただろうか?
この話には続きがあるので、好評であれば続きを書こうと思う。
ぷりーず、スキ!!
終わり
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