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「街がカウリスマキに見える」フィンランドに暮らす人との対話

昨年末から日本でも上映されているアキ・カウリスマキの最新作「枯れ葉」。


私は昨秋にロヴァニエミの映画館で観た。ホストシスターのリータとその旦那さんマッティが誘ってくれたのだ。二人が留守の間に猫の世話を頼まれたお礼にとオットマンのついたプレミアム席のチケットとポップコーンをご馳走してくれた。

フィンランドでは「オッペンハイマー」と「バービー」も観たが、特にオッペンハイマーは難しい用語を英語で聞きながらフィンランド語・スウェーデン語字幕を追うのになかなか苦労した。一方、「枯れ葉」はもちろん全編フィンランド語で字幕はスウェーデン語のみだったが、なにせカウリスマキの作品、セリフが少なくてゆっくりだ。全て理解できた。

映画館が終わると夕方で、外は薄暗くなっていた。リータたちの家まで3人で歩く途中、映画の感想を言い合った。「なんか質素っていうか、ちょっと朽ちたような感じがいいよね」「フィンランド人でもアーティスティックすぎるって言って観ない人もいるんだよ」。そしてこの夏知り合ったばかりのマッティが「なんかさ、カウリスマキの映画を観た後だと、普段のロヴァニエミもカウリスマキに見えるよね!」と言った。全くその通りだった。このときの私たちには、確かにカウリスマキのレンズを通した街が見えていた。なんだかとても大事なところが共有できた気がして、うれしくて。この散歩をよく覚えている。


# サムネイルはもう何年も閉まったままのセカンドハンドショップ。「もうすぐ再開します」という張り紙が褪せていた。

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