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とある20代女性会社員の物件選び

 2021年3月末から都内での一人暮らしを始めた。
 まだ1ヶ月しか経っていないけれど、男女問わず、私は一人暮らしを経験することをおすすめしたい。しようか迷っている人がどこかにいたら、私の話が役に立つかもしれないと思い、少しずつ記録として書き溜めていくことにした。

 今回はまず、物件選びについて。(※私は飽き性なので今回で最後の可能性もあるけれど、、笑)
 「新聞などの勧誘を避けるにはオートロックがいいよ」とか「南向きの部屋でなくてもよいが浴室乾燥機は必須だよ」といった基本的なことは有用な記事がたくさんあるので、私自身がこだわった部分を中心にお話する。

一人暮らしの決意を揺らがせない、「住みたい家」を探しに

 一人暮らしをするのって、進学・就職で地元を離れざるを得ないからというケースも多いと思うが、私は都内にアクセスしやすい埼玉で育ち、就職後も都内勤務であったため、実家を出る必要性はあまり高くなかった。加えて実家が裕福でなかったので、わざわざお金をかけて一人暮らしをすることが贅沢なのではないかという葛藤もあった。
 だからこそ、自分の中での迷いや周りからの反対があったとしても「どうしても住みたい!」といえる家を見つける必要があった。

 とはいっても、最初はやはり借金まみれの実家に対する後ろめたさがあって、当初は会社から近くて家賃もそこまで高くないところ、要は両親が文句を言わないであろう物件を探していた。実際に父の借金返済のため急遽数十万円を私から出さなければならない場面もあったので、家賃の高いところだときちんと生活を維持できるのか不安があった。
 しかし、会社で私の親年代の先輩から「親御さんの身の丈とあなたの身の丈は違うよ」と一人暮らしを後押ししてもらったこと、昇進・昇給が決まったことを背景に、せっかくなら住みたい街・住みたい物件に住もう!と思えるようになった。

一人暮らしの目的と住みたい街

 まず、どんな街に住むかをよく考えた。仕事の移動の合間や休日に、都内でも行ったことのない街をよく散策して、イメージを広げた。お酒が好きなので行きつけのバーがあったりすると嬉しいな、でも在宅勤務を考えると落ち着いた住宅街がいいかも、などなど。

 私の一人暮らしの目的の一つに、生きがいが欲しいというものがあった。それまでは仕事に一生懸命でそれなりのやりがいもあったのだが、コロナに伴う在宅勤務も相まって、「私が働くのって実家の借金を返すためなの?」とマイナス思考に陥り、何のために働いているのか・生きているのかわからなくなってしまったのだった。仕事はうまくいくときもいかないときもあるので、仕事以外にも「このために働くのだ」という、プライベートでの生きがいが欲しくなった。とりあえず今やりたいこと、そして今後の自分のためになりそうなことが一人暮らしだったのだ。
 今後の自分のためになりそう、というのは、私の場合は自分がどう生きていきたいのか(=ライフプランとキャリア)を考えることだった。まずは親から与えられてたまたま生まれ育った地元を出て、新しい環境で様々な刺激を受ける。その中で本当の自分・なりたい私・送りたい人生が少しでも見えてくるのではないかと。

 自分と対話した結果、私が住みたい街の条件は「働く女性のロールモデルが多く住む街」となった。
 地元はいわゆるベッドタウンで、旦那さんの稼ぎをメインとして暮らすファミリー世帯が多かったので、私が働けば働くほど勝手に疎外感を受けるようになってしまった。なので、行き交う人々を見ながら女性の多様な生き方が連想できるような街、あなたはあなたらしく生きていいんだよと言ってくれるような街に、住んでみたかった。
 独身・カップル・夫婦・ファミリー、いろんな生き方をする人が集う街。私にとってそれが世田谷区だった。

大好きな物件との出会い

 周りで一人暮らしをしている友達にたくさん話を聞いた。大島てるで事故物件じゃないかどうか見たほうがいいよとか、自炊するならキッチンのコンロとシンクの間の作業スペースは大事だよとか、住宅街は安心だけど夜道が暗いと逆に怖いかもねとか、いろんなアドバイスをもらったのだけれど、やっぱり、住みたいっていう直感が大事だと思った。

 家賃や細かい条件重視ではなく、改めて住みたい家を考えたときに、デザイナーズ物件ってありかも、と思った。私は海外旅行が趣味で、特にヨーロッパと北米によく行っていた。ベルギーの石畳、ヘルシンキの路面電車、そしてボストンのレンガ造りの住居が立ち並ぶ通り、、。日本と異なる文化・街並みを目にしていつも「ここに住みたい!」と叫んで帰ってきていたのだが、どうやら私のそれは海外に住みたいというわけではなく、ヨーロッパ風の建築が好きだったらしい。この家には住みたいけど別にこの国に住みたいってわけではないんよね、日本でこういう家に住めないもんかね、なんて無意識に考えていた。

 そして、出会ってしまった、今の物件に。

申し込みは早くすべし

 選んだ物件はヨーロッパ風建築で、レゴのおうちについているような窓(何て呼ぶんでしょうか)、レトロなランタン、白を基調とした内装、赤いキッチン、、見つけた瞬間発狂するほど惚れてしまった。
 すぐに内見し、うん、いい!と確認したが、すぐには入居できない。私はまず両親を説得して一人暮らしを正式に認めてもらわなければならなかった。
 一人暮らしの申し出は一度社会人2年目のときにしていたのだが、母からは寂しいからと猛反対をうけ(母娘関係の癒着の問題があった)断念していたし、家を出る前に父の底なしの借金問題をどうにかする道筋をつけ、経済的に自立してもらわなければならなかった(子どもが親に対して自立という言葉を使う状況とは一体、、)。人によっては喧嘩しようが縁を切ろうが出ていくぞって人もいるのだろうけど、私は一人っ子だし、目立った反抗期もなかったので、平和的に済ませたかった。

 内見から約2ヶ月後、パワーポイント30枚で家族にプレゼンし、無事承認を得た。当初はゆっくり準備して6月くらいの引っ越しを目標にしていたが、これだけかわいい物件ならすぐに取られてしまうかもしれないと不安になり、不動産会社に連絡した。
 するとやはり、内見段階では半年以上空いていたはずの物件はすでに埋まっていた。恋愛と一緒で、しばらく空いていたならまあすぐには取られないだろうといった慢心があると横からかっさらわれてしまうし、失ったあとでより一層、その人や物件の価値を高く感じるものだ。
 まあ2-3月になれば空きも出てくるだろうし、、と思っていたが、物件が頭を離れない。毎日物件をググって空きが出ていないかくまなく探す、さながらメンヘラ女。たまに物件ページを見つけて不動産会社に電話すると、ページの更新漏れだったりして、また落胆。よく恋愛で素敵な異性を「優良物件」と呼ぶ意味をひしひしと感じた。本当にこの物件に恋をしていた。

諦めません住むまでは

 調べているうちに、この物件が他の場所にも複数展開していることを知った。当初見ていた物件の近隣エリアに空きを見つけたが、家賃が1万円も上がってしまう、、。悩みに悩んだが、まずは再び内見に行った。
 不動産会社が前回と異なり、コロナをうけ内見がセルフとなっていた。鍵を受けとって一人で見に行くのだが、時間を気にせずのんびり見られる上、仲介手数料の割引まで受けられたのでとてもよかった。
 内見時にほぼほぼ心は決まっていたのだが、ふんぎりがつかず、一呼吸おこうと思って周辺を散策した。不動産会社に再度電話したのは1時間後くらいだったが、タッチの差で他の人の申し込みが入り、二番手に。
 二番手、二番手、うーーーん、、。不動産会社の人は「一番手の方の審査が通らないことも考えられますので~」なんて淡々と言っていたけど、恋愛なら二番手って結構厳しくないか?不動産会社から一番手のキャンセルが入ったという連絡が来ないか、ひたすらメールの受信ボックスを更新しつづける。数年ぶりに片思いの苦しさを味わった(あはは、、)。

 結局一番手の入居が決まってしまったので、今は時期ではないのだと捉え、のんびりと待つことにした。
 すると突然、内見した部屋の隣が空くとの連絡が来た。私の熱意が伝わったのか、不動産会社の方が空き連絡を受けてすぐに、Webに掲載することなく私に連絡してくれた。やはり、諦めなければ運は味方してくれるのだな、、。
 普通は引っ越し時期や今の物件の退去の時期が決まっていて、好きな物件が空くのを待てる状況ではないと思うが、実家から独立するような場合は制限がない。もし皆さんが私と同じように、気に入った物件の空きを待つ状況になった場合は、その物件を扱う全ての不動産会社に連絡し、空きが出次第連絡をもらえるよう依頼しておくことをおすすめする。

 前の住人が退去した直後に、念の為に内見をした。前回の内見で、なんとなくお風呂が逆だといいなと思っていたのだが、今回の物件は間取りが左右対称で、それが叶っていた。強い要望でなく無意識に近かったのだが、引き寄せの法則ってこういうことなのかな~と思った。

住んでからわかった物件のよさ

 その後申し込み・契約を進め、引っ越しをし、今に至る(蛇足かもしれないが、クリーニングが入る前に内見して扉の立て付けが悪いなどの不具合をきちんと不動産会社に伝えておくのも重要。入居前に対応してもらえ、対応できなくても自分の責任でないことがきちんと記録として残せるのでおすすめしたい。おそらくメールボックスの鍵の不良は私が言わなければ直してもらえなかった)。
 1ヶ月経ち、入居前には気づかなかった良さもわかった。
 まず、大家さんがとてもいい方だった。内見時は2月だったので知らなかったが、入居後家の玄関(共用部)にお花が咲き始めた。誰が管理しているのだろう、お礼を伝えたい、と思っていたところ、ある日お花を触っている人がいたので話しかけたところ、大家さんということだった。通常は不動産管理会社に物件の管理を一任し、入居者と大家さんが関わることはないのだが、大家さん自身が他県に住みながら定期的にお花のメンテナンスに来てくれるとは、驚いた。
 それから、トイレが部屋として独立せず洗面台の横に置かれている点に違和感があったのだが、洗面台掃除の流れでトイレ掃除ができる上、ノータンクなので掃除がしやすい。洗面台もメイクするには狭いかと思っていたが、日々暮らす中では毎朝の支度と掃除・洗濯が同じ部屋で完結するのが個人的にはとても快適である。お風呂もまた、余計な溝がなくとても掃除しやすい造りになっていることに気づいた。見た目だけでなくきちんと生活しやすいよう計算された設計がさすがだなと感心している。

今しか住めない街、今しかできない一人暮らし。妥協しない物件選びを

 紆余曲折あったが、一人暮らしの目的やその街に住む理由を明確に設定し、諦めずに物件探しをした結果、思い描いた理想の生活を手に入れることができた。
 今後私のライフステージが変わり、今の家を出ていく日がいつか来るだろう。賃貸でなく持ち家を買おうと思い立つかもしれないし、結婚して違う街に住むことになるかもしれない。そう思うと、この街・この家に住めるのも、一人暮らしができるのも、独身である今だけかもしれない(老後もそうかもしれないけれど、その時には健康の問題も伴うだろうし、住みたい街や家の条件は異なっているはずだ)。
 これだけ自由でなんでもできる独身時代を妥協して過ごすなんてもったいないから、もし同じように悩む人がいたら、ぜひ物件選びにこだわることをおすすめしたい。

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